おじさんにチャリ盗まれかけて、YouTuberに助けてもらった
人生に「不運」はつきものなんて言いますが、昨日起きた出来事はそれはそれは、とんでもない「不運」でした。
しかし、一日経って、よくよく考えたら「幸運」だったのかもと、今は思ってます。
第1章「事件発生と解決」
昨日は、西新宿でライブがありました。21時終演のところ、ライブが押して21時半過ぎに終わりました。そこから、帰り支度して、近くの駐輪場に停めておいた、自転車の元へ向かいました。時刻は21時45分頃。
自転車の前に到着すると、見覚えのある自転車を引きずってどこかへ行こうとするおじさんがいるのです。車輪にはチェーンがついてるので、車体を引きずってどこかへ消えようとしてます。僕は思わず「おっちゃん、それ、俺の自転車じゃない?!」と声をかけました。
すると、おじさんは「いや、何言ってんだ。これは俺の自転車だ!」と言い返してきます。意味がわかりません。そこにある自転車は、僕がウーバーで働くために、兄貴から5万円借りて買った電動自転車なのです。(まだ3万円返してない)歴戦の傷跡がボディに残る、オンリーワンの一台なのです。
それなのに、自分の自転車だと主張するおじさんに、僕は「待ってよ。じゃあ、なんで自分の自転車なのに、チェーン取らずに押してんのさ!」と詰め寄りました。
おじさんは「別にいいだろ。これは俺の自転車なんだから!」と言うと、戸惑う僕を尻目に、おっし、そこの警察署行こう!と自転車を近くの警察署の方へグイグイ押していきます。
意味がわかりません。なぜ、このジジイは自分から自首しにいくのでしょうか。警察に行ったら、この自転車が僕のってわかるだけで、おじさんが怒られるだけです。
おいジジイ冷静になれよ。そう何度言っても、彼は「これは俺の自転車だ」の一点張りをします
痺れを切らした僕は「おっちゃん、俺、疲れてんのよ。早く帰りたいの!ここから警察いって、時間取られたくないの!」と縋るように言いました。
この時、僕は、とにかく早く家に帰りたかった。3月30日にやる単独ライブのネタがまだできてないのです。幕間映像だって作ってない。練習もできてない。自分の才能のなさに落ち込んでいた日でした。そして、相方のスズキは単独ライブに向けてやる気はあるけど、何をしていいかわからないと僕に言ってきた、丁度、その日でした。
なんでこんな日に僕は、こんな見ず知らずのおじさんと22時過ぎに路上で言い争っているのだろうか。
すると、僕の縋るような魂の叫びがおじさんに通じたのでしょうか。
おじさんは、何故か同情するような声色になり「それは申し訳ないけど、俺の自転車だからなあ、、、」と言います。マジでなんなのこいつ。
なんで自分のものと思うのか聞くと、「俺が金払ったからだ」と主張してきます。それ、あんた、駐輪料金110円払っただけでしょ!と僕が怒鳴ると、おじさんは、よしわかった!と、警察に来てもらおうと電話を始めました。
意味がわかりません。困惑する僕。頼むから俺の時間を奪わないでくれ。
揉めてる場所の詳細な情報と、さも、俺が悪者のように伝えるおじさん。
意味がわからない。
僕が、警察が来るまで待つのは、めんどくさいから、すぐそこの交番に移動しようよ!と提案すると、おじさんは、警察がここにくるんだから、ここにいなきゃダメなんだよ!と言います。そして、電話越しに経緯を警察に語っています。その間もハンドルをがっちり掴んで離しません。
おじさんとロン毛が道の真ん中で「いや交番行こうよ!」「ここで待つの!」と、その押し問答をワーワーしていると、「なんか、揉めてますう?」と金髪ロン毛の長身ホスト風の男がヌッと現れました。
明らかに、ただものではないです。
それでも、電話をやめないおじさん。
金髪くんは、「ちょっと一回、二人の言い分聞かせてなあ」と、風貌とは裏腹な、物腰の柔らかい関西弁で、僕とおじさんの二人の間に入ってくれました。おじさんの支離滅裂な説明に、丁度警察との電話は切られたようでした。
すると、金髪くんは、おじさんに対して「え、おじさん、酒飲んでる?」と聞きました。その瞬間、「え?」とたじろぐおじさん。
金髪くんは「この自転車がどっちのものであろうと、おじちゃん、酒のんで自転車乗ったら犯罪やから」とおじさんを別の角度から攻めます。ここから、おじさんの語気が少し弱まります。
正直、僕はこの一言を聞くまで、このおじさんが酒を飲んでる可能性なんて考えてませんでした。酒の匂いはしなかったし、支離滅裂の、頭おかしい人だと思っていました。
その様子を見て、僕も、このおじさんの話が通じなかった理由は、酒なのかもと妙に納得しました。
金髪くんは、「飲酒運転」という言葉を持ち込むことで、おじさんとロン毛の互いに譲らない「俺の自転車」という水掛け論の土俵から、バトルフィールドを変えてくれました。
やはり、この人、只者でない。
そして、金髪くんが「飲酒運転はダメ」という前提の上で、第三者として二人の意見聞いてくれることになりました。僕は、このおじさんが僕の自転車を盗もうとしてたことを伝え、おじさんは、俺が金払ったのに、こいつが自分の自転車だって言うんだと、それぞれの主張をしました。
金髪くんは、二人の話を聞き終わると、おじさんに「え?これ、金払ったって、どういうこと?」と聞きます。すると、おじさんは、俺が借りたんだから俺の自転車なんだ、と言いました。金髪くんが「え、レンタルしたってこと?」とおじさんに聞くと、偉そうにおじさんは「足が悪いから、借りようとして金払ったんだよ!」と言いました。
それを聞くと、金髪くんは「これどう見ても、レンタル自転車違うから!!」と僕の、黒いパナソニックの自転車を指差してツッコんでくれました。一喝され、「え、そうなの?」と戸惑うおじさん。マジでなんなのこいつ。
金髪くんは「おじさん、このお兄さんがチェーンのロック外したら、おじさん、お兄さんに謝れるな」と問いかけます。ここら辺で、おじさんはもう、しどろもどろで何言ってるかわかりません。そして、チェーンが外れたら、僕に謝ることを約束させ、この証拠として動画撮影をすることを承諾させました。僕は、金髪くんに自分のスマホを渡して、撮影してもらうことに。
僕は、腕をコネコネしながら、「おっちゃん見とけよ!今からマジックタイムだからな!!」と言いました。その時の写真が、サムネイルになってます。
そして、その場でチェーンをサッと華麗に外してやりました。
その瞬間、光の速さで、ペコペコ謝罪しまくるおじさん。
その後も、ここに警察呼んじゃったから、ここにいて対応してくれと、懇願するおじさん。しおらしく、私の間違いで彼に迷惑をかけたことを説明させてくれと言います。
その後も、しつこい。なんなのこいつ。帰らせてくれ。
僕が「もういいよ。おっちゃんも、人生で嫌なことあったんだろ。それで飲みすぎたんだろ。」というと、おじさんはハッとしたように「そうなんだよ、嫌なことあって、、、」と悲しそうな顔で詰め寄ってきます。
僕と金髪くんは、その負け顔をスルーして、その場を後にしました。
そして彼は僕に、しんいちって名前なんですけど「コスモハイツ205」って名前でYouTubeやってます、と声をかけてくれました。驚きです。そして、妙に納得しました。
こちらも、芸人やってて、と声をかけ、お互いにマジスカ!?となり、ちゃんとお礼も伝えて、連絡先を交換しました。
そして、しんいちくんは、日本のエンタメ界盛り上げて行きましょう!と言って、こちらを振り返らず、夜の街へ消えて行きました。
かっこよかった、、、。
そして、本当にありがとう。しんいちくん。
彼はYouTuberだった。そうだよな。普通の人はみんな忙しいよ。こんな不毛なやり取り、見て見ぬふりだよ。無視するよ。こんな路上の揉め事に首を突っ込んでくれる好奇心を持つ人間は、今の時代、天下のYouTuberなんだ。彼らはいつも面白いものを探してるんだ。
ほとんどの人がスマホを持ちどこでも、動画を撮れる時代。時に、それは暴力にもなるが、自分を守る証拠という盾になることもあるのだ。すごい。YouTuberはすごい。
そんなことを思いながら、僕はおじさんから取り返した、自転車にまたがりました。
酔っ払いのジジイに絡まれて「不運」だったけど、面白いエピソードになるかな。そうだ。これを明日noteに書こう。そんなことを思いながら、家路を急ぎました。
そして、今日。
1日経ってみて、よく考えてみると、あのおじさんの行動の不可解さが気になってきました。
そのことについて書いていきます。
第2章「真実はなんだ?」
昨夜のことを冷静に思い返してみると、いくつか不可解な点が気になりました。
もし、自分の仮説が正しいとなると、僕は「不幸」より、むしろとてつもない「幸運」だったのかもしれないのです。
違和感①
あのおじさんは、足が悪いからレンタルサイクルを借りたいと言っていました。
僕の自転車を「レンタルサイクルと間違えて、勘違いしてしまった」というのが、謝罪の内容だったはずです。
しかし、では、なぜ、僕が発見した時、彼は自転車を引きずっていたのでしょうか?
足が悪いなら自転車に早く乗りたいはずです。もし、レンタルサイクルだと勘違いしていたなら、乗れない自転車を不思議に思い、チェーンを必死に取ろうとするはずです。もしくは、乗ることを諦めるか、そこで勘違いに気づくはずです。
なぜ、彼は、足が悪いのに、わざわざ、チェーンのついた自転車を押して引きずってまで、どこかに消えようとしたのでしょうか。
違和感②
昨日、しんいちくんが、撮影した動画を見返してみると、やはり、おじさんは酒に酔っているようにはみえません。
おじさんは顔が赤かったり、酒に酔っているようにはどうしても見えないのです。
本当に、酔っ払っていたのでしょうか?
言ってることは支離滅裂だけど、酔ってるようには見えないおじさん。ただの頭のおかしいおじさんという印象です。
しんいちくんに、酒の話題を持ち出して、酔った男を演じていた可能性があるのではないでしょうか。
違和感③
彼は、警察に電話をしていました。
あの時、しんいちくんが、たまたま僕を助けに来てくれなかったら、あのまま、僕とおじさんは警察の到着を待つことになったでしょう。
警察が来てくれたら、時間はかかるものの、僕の無実は証明されていたはずです。
ただ、しかし、本当におじさんは警察に電話していたのでしょうか?
昨日の記憶を、自分なりに呼び戻してみると、おじさんのスマホの画面には、明らかに、110番ではない、10桁近い電話番号が光っていたような気がします。
おじさんは、誰に電話をかけていたのでしょうか?
しかも、揉めている場所の詳細な情報、僕の身体的な特徴などを事細かに、通話相手に伝えていました。
違和感④
おじさんは、最初は警察に行こうと言っていました。そして、警察に電話をしてからは、その場から一切動かず、離れようとしませんでした。僕の自転車のハンドルを固く握って離しませんでした。
たまたま現れた、しんいちくんを前にして形勢が2対1になってから、一気に自分の主張を弱めた印象です。
そして、罪を認め、謝罪した後も、到着する警察に事情を説明するように、ここに留まってくれと、懇願していました。
おじさんは、どうにか、その場に僕を足止めしたかったのでは無いでしょうか?
時間稼ぎをしていたのかもしれません。
警察以外の何者かが到着するまで。もしくは、集団が到着するまで。
僕が「もういいよ。おっちゃんも、人生で嫌なことあったんだろ。それで飲みすぎたんだろ。」というと、おじさんはハッとしたように「そうなんだよ、嫌なことあって、、、」と悲しそうな顔で詰め寄ってきました。
あの、ハッとした表情は、「これで時間稼ぎできるかもしれない」という思惑の顔だったのかもしれません。
以上が、僕が今朝になってから気づいた違和感です。
この仮説が正しいとゾッとします。
当事者は、誰よりも、真実の近くにいながら、最も真実から離れているのかもしれません。
「不幸中の幸い」
あのおじさんは、仲間がいて集団で盗みを働いていたのかもしれません。
緊急時の連絡や対応も決めているのかもしれません。
それなのに、僕は、向こうのペースに乗って、110番すら任せてしまいました。自分がどこまでも、お人好しで、平和ボケしていることに気づきました。
もし、あのまま、警察を待って、おじちゃんの身の上話に付き合っていたら、どうなっていたでしょうか?
もし、しんいちくんがあの場にいなかったら、どうなっていたのでしょうか?
大変なことになっていたかもしれません。
向こうは、犯罪者です。常識は通じません。当たり前のことです。人の心が通じるなんていうのは、こちらの妄想かもしれません。
犯罪者には毅然とした態度で自分の命を守らなくてはならなないです。
皆さんも気をつけて!
不幸だったはずが、本当に幸運だったかもしれません。
そして、僕は、今日、まだネタが書けていません。
なぜ、こんなものを書いているのか。
ネタを書かなきゃいけないのに。
ああ、不幸です。頑張りますので、チケット買ってください!!
読んでくれてありがとうございました!また!
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