たいしたことない発見
たいしたことない発見。誰にも自慢できない発見。発見というか、もしかしたら、「そうなんじゃないか」という発見。
僕は、その大したことない発見が真実であろうとなかろうと、勝手に納得して、少し笑う時がある。
「ネタを書いてる方」とは
芸人さんにはよく、ネタ書いてる・書いてないの話がよくある。
僕としては、ネタを書いてても、書いてなくても、面白い人は面白いと思うので、どっちでもいいと思う。
お客さんも、面白ければどっちがネタを書いててもいいという人は多いのではないだろうか。
ただ、芸人さんの中には、こだわりやプライドがある人も多いと思う。
僕も、曲がりなりにもネタを書いてる方なので、労力や時間を考えるとその気持ちも理解できる。
僕自身は、文章を書きたくて芸人になったし、面白い文章書いて暮らすと決めてるので、プライドというより、ありがたいなと思っている。
スティーブン・キングや、小池一夫も、作家になりたいなら「毎日、書きなさい」と言っている。
なので、僕も、どうにか毎日書こうとしてる。
しかし、最近、全く書けなくて、どうしたものかと悩んでいた。
理由は、M-1にエントリーしたからである。
コントではなく、漫才を書こうとしてたからであった。
コントは3年書いてるので、ある程度、書けるのだが、漫才は本当によくわからない。全く書けない。
僕は大学生の時、漫才の大会で、空調の音しかきこえない漫才をやって、そのあと3日寝込んでいる。漫才がとにかく怖い。
なので、養成所の頃から、M-1に出ていない。逃げているのだ。
ただ、KOCも落ちたので、なんとなくエントリーしてしまった。
本当に、M-1の1回戦にスベりにいくのが嫌すぎて、泣きそうだ。
もはや、どっちみちスベるなら、すずきに漫才書いて欲しい。
少し前だが、この芸人の世界の「ネタを書いてる」について僕だけが、にやついた発見があった。
とある会話があったらしい
7月頭、事務所の先輩である岡野陽一さんの単独ライブ「岡野博覧会」の手伝いに行った。草月ホールという素晴らしい会場で、豪華なセットでコントをする岡野さんは格好良かった。
今回の岡野さんの単独には、吉住さんがアドバイスなどで、かかわっているらしく、二日間ある公演で、お二人が修正しつつ、話している姿が印象的だった。
まかされていた手伝いは、受付や物販であったので、開演してからの仕事がメインだった。手の空いてる時間が多かったので、後輩と雑談しながら過ごしていた。
もちろん、岡野さんや、吉住さんみたいな面白い方と話す機会があれば、話したかったが、お二人とも、もちろん忙しそうで、なかなかそんな機会はなかった。
そして、2日間の手伝いが終わり、数日後、ネタ合わせをしていると、相方のばくすずきがこんな話をしてきた。
「そういえば、この間の手伝いの時、吉住さんと話してさ。」
びっくりした。
え?吉住さんと話したの??
いつのまに、である。
僕は、次の日が早く、ライブ後の打ち上げには参加できなかった。なので、岡野さんともあまり話せなかった。すごく残念だった。だが、たしか、吉住さんも打ち上げにはいなかったはずだった。
いつ、そんな機会があったのだろうか。疑問が湧く。
すずき曰く、吉住さんから話しかけられたという。
え?話しかけられる??まさか!?である。
あんな活躍されてる先輩が、下々民である我々に、話しかけてくれる訳ないのである。
すずきに話をきくと、なんでも、吉住さんは、僕らが4月に行った単独ライブについて、話しかけてくれたらしい。
ゲストで来て頂いた、かが屋の加賀さんが「明日、ノーテクノロジーというコンビの単独を見るんですけど、知ってますか?」と、たまたまお仕事で一緒だった際に、吉住さんに聞いていたらしい。
そこで、なんとなく存在だけ知っているという会話をしていたらしい。
その会話があったらしく「加賀くんはなんで泣いたの?」みたいな感じでフランクに話しかけてくれたらしい。
この質問は、困ったと思う。加賀さんが、いい人すぎた以外の答えはない。
ばくすずきは、ことのあらましを伝えて「単独ライブの記録映像はマネージャーさんにも渡してるので、もしよかったら見てください」と言ったらしい。
僕としては、せっかくの機会なんだから、マネージャーさん経由じゃなくて「直接見てくださいで、映像送るだろ!普通!」と思ったが、まぁ、そこは置いておき、その話をきいて、素直にうれしかった。
ただ、僕としては、腑に落ちない点があった。
「なぜ、僕には話しかけてくれなかったのか」という点である。
だって、純粋にめちゃくちゃ話したいじゃないですか。吉住さんと。あんなに面白いんですから。
実は、僕は2日間の手伝いで、吉住さんとは、1ラリーしか会話できなかった。
休憩時間で、僕が楽屋で一人で、お弁当を食べているところに吉住さんが現れて、僕が「お疲れ様です!」と言い、吉住さんが「お疲れ〜」と言って、通り過ぎただけである。
果たしてこれは、会話と呼べるのだろうか。
アレクサとの方がもっと会話してる。
だが、あの時は楽屋に僕1人だったので、話しかけてもらえやすい環境ではあったと思う。なのに、なぜか吉住さんは、僕ではなく、ばくに話しかけた。
これは、一体どういうことだろうか。
この時点では、まだ、気づいていなかった。
「最高の人間」新ネタライブの手伝い
このあいだ、岡野さんと吉住さんのユニット「最高の人間」の新ネタ10本ライブがユーロライブで開催された。
今回の手伝いに、相方はおらず、僕だけが音響の仕事をした。
このライブは、新ネタを10本やることを5日前に決めたらしく、お二人とも、開演前から、めちゃくちゃ焦ってて、やばいやばい言っていた。
オチきっかけなどを確認してる時「返金したいレベル」と言っていた。
ライブの幕間で岡野さんは本当に謝罪もしていた。
ただ、僕が、このライブを観た感想としては、とにかくすごいの一言であった。
確かに、10本ネタやるのに準備期間が足りないので、ネタのオチが飛んだりしていた。ネタの中に変な間や空白の時間があったのだ。
しかし、それが逆にライブでしか感じられない緊張感、どう転がるかわからないワクワク感を高めていた。会場全体を異様な熱気に包んでいたのだ。どこまでがネタなのかわからないので、目を離せば、おいてかれるような感覚であった。
普段のお笑いライブの、決まったものをやる、漸層的で予定調和的なものから逸脱した、破壊そのものが創造であるような、そんなライブだった。
もちろん、お二人の掛け合いが噛み合った時の爆笑はとんでもなかった。すごい人とすごい人がコントしてるんだなって思った。まさしく「最高の人間」であった。
そして、終演後、客出しの音楽を流し終えて、音響のブースを出てみると、なんと、ライブを終えた吉住さんが、僕に話しかけてくれたのだ。
「ストレンジ見たよ!」と。(単独ライブの名前が「生まれるストレンジ」だったからだと思われる)
一瞬、なんの話かわからなかったので、やや間があってから
「ええああ!ほ、ほんとですか!?」と跳ね上がった。
本来であれば、今ライブを終えた吉住さんに、こちらから「面白かったです!」を伝えるシーンであるし、そうしようとしていたので、ねこだましをくらったようだった。
そして、わざわざ、マネージャーさんと動画のやりとりをしてまで、ライブの映像を見てくれたことに気づき、また飛び上がるほど嬉しかった。
そこから、吉住さんと単独についての話をした。吉住さんがニコニコで話してくれて嬉しかった。
前回のお手伝いでは、1ラリーの会話で、吉住さんは真顔だった。
ちゃんと、こちらに興味を持ってくれて笑顔だった。
「ちゃんと単独だった!」と言ってもらえて、光栄だった。
そして、その流れで、吉住さんの単独「咲かないリンドウ」の映像をお願いして送ってもらった。(めちゃくちゃ面白かった)
その日は、2人のコントも見れたし、なぜか褒められたし、これから、吉住さんの単独も見られるし、という最高の1日になった。
そして、家に帰ってから、今日のことを思い出してにやにやしていたのだが、短い会話の中で吉住さんが言った「あるセリフ」を思い出した。
それは「ばくがネタ書いてるんだと思ってた!」という言葉である。
たしか、2回は言ってた。
別に「僕がネタ書いてるんです」なんて吉住さんに一言も伝えてない。にもかかわらず、吉住さんは二回言ったのだ。
ここで、全てがつながったように、僕は、ハッとした。
吉住さんは、ばくすずきがネタを書いてそうだから、話しかけたんだ!ということである。
つまり、あの時点では、ネタ書いてなそうな顔の兼子には、なにも話すことがなかったのだ。
く、、、くやしい!!!!
見た目が、頭を使ってなさそうって判断されたということである。
すごく、悔しい、、、!!!
そして、すずき、うらやましい、、、。
こいつがネタ書いてるんだろうなって、先輩に興味もってもらえる顔って!!!!
確かに、養成所の頃からお世話になってる作家さんにも、最近までずっと、ばくがネタ書いてると思われていた。
それは、僕が振り回される役のコントが多いからである。
しかし、吉住さんは、おれらのコント見たことないと思う。
見た目だけで、、、判断。
僕が発見した、大したことないけど重要なことは、
ネタを書いてなさそうな顔なだけで、先輩から話しかけられないことが、芸人の世界にはあるということである。
ああ、、、、。
漫才、書くか、、、、。
もしくは
すずきに漫才書かせてる間に、
ネタ書いてそうな顔に整形してこようかな。