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ノート屋の真面目な話: ノートと「文化的処方」の関係について

こんにちは!NOTEBOOK LABO.のMKです。
今日は少し真面目な話題で、私が考えるノート(あるいは文房具全般)と「文化的処方」の関係性について書きたいと思います。
平たく言うと、ノートと心身の健康・幸福度(ウェルビーング)の関係性についてなのですが、せっかくなので自分のバックグラウンドも少し知っていただきたく、少し詳しめに書いてみたいと思います。

文化的処方とは?

早速ですが、↑の「文化的処方」という聞きなれない用語…一体何なのでしょうか?
少し長くなって恐縮なのですが、以下の引用に説明を頼らせていただきます。

…「文化的処方」。これは、イギリスで実践されている「社会的処方」をもとにした造語。社会的処方とは、人とコミュニティとを結びつけることで健康と幸福の向上を促進する仕組み。たとえば、夜眠れないとかかりつけ医に訴える人の話を聞くと、ここ何日も家族以外と話していない、外出していないといった状況があるとする。その際に睡眠薬を処方するのではなく、人と会うことや外出することを勧めたり、社会的な活動への参加を促すことで健やかな心身を取り戻す手助けをしたりするのが、社会的処方。文化的処方は、加えてアートに触れる創造的活動を促したり、その活動を仲介するテクノロジーを生活に導入したりすることで、自分の心とも向き合う試みである。…

大谷道子(2023)「文化的処方って何?」、『東京藝術大学 芸術未来研究場 事例集2023』、p. 14

私は、アートが人間の精神や身体の健康、ひいては幸福度に与える影響について学ぶために、現在大学に所属しています。
今私が通っている大学でも「芸術未来研究場」展という、芸術が社会や人間に与える影響に関係する展示が開催されている最中ですが、自分としても、アート作品を見たり作ったりすることは、人間の精神や身体の健康・幸福度にポジティブに働く、とこれまでの人生で何度も実感してきていて、そういったことを科学的に確かめる研究に携われたら、と考えています。
一方でそういった「研究」という理論的なことと並行して、実際に人を元気にするようなアートに関係する「活動」に、自分自身でも取り組んでいきたいと考え、ノート屋(NOTEBOOK LABO.)を経営し始めました。

お店では世界で一冊だけのノートをデザイン・販売しています

そもそもアートって健康・幸福に関係している?

いや、そもそもアートって人間の健康とか幸福に関係しているの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
詳細まではご説明できず恐縮ですが、アートが健康や主観的幸福度にポジティブな影響を及ぼすということについては、多くの研究成果が報告されています(以下の本にはそういった研究成果がガッツリとまとめられています:クロシック&カジンスカ(2022)『芸術文化の価値とは何か』、中村美亜訳、水曜社)。
アートから受けるポジティブな影響にも様々な種類があると思われますが、たとえば身近なところでは、アートに触れて、それを「美しい」と感じることは、心にとても良い影響を与えるのではないかと私は考えてます。
「美しい」と感じる気持ちは、それ自体「快」の感覚を与えてくれますし、美しいと感じた対象について「もっと知りたい」といった気持ちや、「自分でも美しいものを作りたい」という気持ちを持つこと、つまりモチベーションを得ることにもつながります。

「作りたい」という気持ちは、「明日も生きたい」という気持ちと同じ。
私自身、人生の中で落ち込んだ時に、この「美しいものに触れる」→「何かを作りたくなる」という循環に、何度も助けられました。
また、普段の自分ならば美しいと感じるであろうものに接した時に、そう感じられないときは、それほどまでに自分の心が落ち込んでいることに気づくことができます。
この意味でアートは、自分の心の状態を測るリトマス試験紙のようにも働いてくれます。

ノートが健康や幸福度向上の役にたつ?

では、ノート(あるいは文房具全般)が、どのように「人を元気にするようなアートに関係する活動」と関係するのでしょうか。
以前の記事「ノート屋を始めた想い」でもお話しした通り、私はノートを、他者に検閲されることなく、自分の思いや表現等をアウトプットできる場であると捉えています。
同時に、「何かを作り出したい」といった気持ち(インスピレーション)が湧いた際には、作りたいものについてのアイデアを書き留めるなど、創造のプロセスを手助けするツールにもなり得ます。

実際に昨今では、ノートや手帳に、文字を書き込む、絵を描く、マスキングテープやシールでデコレーションする、といった手段で自己表現を行うことや、それを写真に撮ってSNSに投稿して他者とシェアしたり、反対の他者の表現に触れて良い刺激を得るといったことが、盛んに行われています。

一から絵を描くことは、技術的に、そして道具を揃える、絵を描く時間や場所を確保するといった環境的にも、ハードルが高い…と感じている人も少なくないでしょう。

画材を買って、机が汚れないようにして、後片付けも…大変ですよね。


一方で文房具としては、従来の画材に勝るとも劣らない程のバリエーションや質を備えた筆記用具や、コラージュのために手軽に使えるシールや付箋など、様々な素材が入手可能です。
それらを使って、ノートや手帳といった支持体にさまざまな表現をアウトプットすることができます。
その時ノートや手帳は、その人の「作品」になります。
そしてそれは、とても気軽に、誰でもどこでも行うことができる創造的活動です。

義務教育の時は日常的だった図工や美術のような時間は、大人になってからは自分で確保しなければならず、今や私たちの日常生活の中で、そういった創作的活動に取り組むことができる機会は非常に限られています。
そのような中でノート・手帳、その他文房具たちは、創造的な活動と私たちの架け橋となってくれる心強いツールであり、同時にそれ自体が作品になり得るものなのです。
このように、ノートは私たちの健康や幸福度の向上に寄与してくれていると、私は考えてます。

終わりに

少し長くなってしまいましたが、以上のような観点から、ノートや手帳は、文化的処方を実践するための効果的な手段であり、同時にアート作品自体にもなり得ると私は考えています。
そしてノートや手帳を使って、一人でも多くの人に上で述べたような創作・自己表現を楽しんだり、他者の表現から良い刺激を受けていただけたらいいなと思っています。(そしてその時に使っていただけるのがNOTEBOOK LABO.のノートだったらな…^^)
また、NOTEBOOK LABO.のノートデザイン自体からもインスピレーションを感じていただけたらこれ以上に嬉しいことはないと考えながら、日々いろいろなデザインを模索しています。

当ラボのノートが、少しでも皆さんの楽しい時間にお役にたてますように。

NOTEBOOK LABO.は、「何か書きたい・描きたい・作りたい」!と感じていただけるようなノート作りに励んでいきます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします!

長い&わかりづらい文章になってしまっていそうで恐縮ですが、
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

NOTEBOOK LABO.
MK

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