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Zone Count(その4): ”ギャンブラーの誤謬”から逃れる

(2024/10/16) タイトルを変更しました。
波が読めるという期待は誤謬に陥る危険性をはらんでいます。そこから逃れる方法を示します。

注記:「Zone」は単に「区間」という意味です。AT機などで言う、当たりやすい区間という意味のゾーンとは違います。


はじめに

これまでに、以下の3つの記事を通して、Zone Countという筆者独自の方法を紹介してきました。

記事1    パチスロの波を理論で読む: Zone Count(その1)
記事2    波読みの精度を計算する
記事3    波読みの精度をシミュレーションする

今回は3つの記事全体に関わる内容です。

目的

記事2の冒頭に次のように書きました。

「この程度のカウント数のバラツキは発生し得る」ということを理解し受け入れることによって、いわゆる「ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)」から逃れることができます。

この記事の目的は上の記述を深掘りすることです。結論は変わりません。


この記事では、以下の順序で考察を進めていきます。

  1.    Zone Countの発想の基礎は何か?

  2.    その発想がギャンブラーの誤謬に陥る危険性をはらんでいること

  3.    ギャンブラーの誤謬とは何か?

  4.    ギャンブラーの誤謬について筆者はどう考えるか

  5.    誤謬から逃れるためには?  

  6.    逆正弦法則 または ランダムウォークについて

最後までお付き合い頂ければ幸いです。

Zone Countの発想

Zoneの定義(復習)

Zone Countでは最初にZoneの定義を行います。

具体的には、当選確率がそれぞれ25%になる4つの区間(Zone1~4)にゲーム数を分割します。

また、当選確率が10%になる、遅いゲーム数の5つ目の区間(Zone5)も定義します。(図1)

図1.  5つのZoneの定義

各Zoneが何ゲームから何ゲームまでの区間になるかは、ボーナス確率によって変わり、ボーナス確率が分かっていれば理論的に計算することができます。

実際の機種のZoneは下のリンクで公開しています。
Zone Countに興味の無い方にも有益かなと思いますので、ぜひご参照下さい。

Zone表一覧



Zone Coutの発想の基礎

さて、Zone1での当選、Zone2での当選、Zone3での当選、Zone4での当選は、発生確率が等しく互いに排反な4つの事象になります。確率はそれぞれ25%です。

Zone1~4のどのZoneで当選するかは、図2のような簡単な例えに置き換えることができます。

図2. 袋の中から無作為に1個の球を取り出す


取り出した球の色がZone1~4に対応するわけです。

また、別の例えもできます(図3)。

図3.  均等に4分割された的に向けてデタラメに銃を撃つ

この例えでは、弾が当たった的の色がZone1~4に対応するわけです。


これらの例えから予想されるのは、4つの事象はおおむね均等に発生するだろう、ということです。それがZone Countの発想の基礎となっています。


実は、Zone Countのこの発想は、「ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)」に片足を突っ込んでいます。注意しないと誤謬に陥る危険性をはらんでいます。



ギャンブラーの誤謬

「ギャンブラーの誤謬」の説明をWikipediaから引用します。

ギャンブラーの誤謬(ギャンブラーのごびゅう、英語: gambler's fallacy)とは、ある事象の発生頻度が特定の期間中に高かった場合に、その後の試行におけるその事象の発生確率が低くなる(あるいは逆に、ある事象の発生頻度が低かった場合に、その事象の発生確率が高くなる)と信じてしまうという誤謬である。

ギャンブラーの誤謬 - Wikipedia


ギャンブラーの誤謬の一義的な意味は、上に書かれているように、確率自体が変わると信じてしまうことのようです。

さすがに筆者(ワイボン)も確率自体が変わるとは考えていません。Zone Countはボーナス確率が一定であることを前提としています。

しかし、次の一文はどうでしょう。この文は、誤謬を起こす心理的な起源について書かれたものです。

人々は、ランダムな試行の短期間の繰り返しは、特に平均からの逸脱が相殺されるという点で、より長い繰り返しと同じ特性を持っているはずだと期待する。

ギャンブラーの誤謬 - Wikipedia


この文に書かれている”平均からの逸脱が相殺される”という期待は、まさにZone Countが期待することに一致します。



筆者の考察

ここでは、Zone Countとからめながらギャンブラーの誤謬について考察したいと思います。誤謬についての理解を深めることによって誤謬から逃れることができると思うからです。

単純化した考察

まず、問題を単純化して考えます。

図4は、ボーナス回数が12回の場合について、Zone1~4のどれか1つのカウント数を横軸に、そのカウント数になる確率(計算値)を縦軸にプロットしたものです。

図4.  Zone1~4のカウント数とその発生確率(計算値) ※ボーナス12回のとき


ボーナス12回のとき、カウント数の期待値はボーナス回数の1/4の3になります。図には赤い破線で期待値の位置を示しています。

図中のAやBなどの記号は後で説明します。

※ これ以降では、カウント数と期待値の差を「偏差」と呼ぶことにします。また、偏差が0になることを「偏差が解消される」と言うことにします。

さて、ボーナス12回目に生じた偏差が、次のちょうど12回目(つまり、ちょうど24回目)に解消されるための条件を考えてみましょう。

ここでは単純化して考察したいので、間の過程はあえて無視します。

なお、ボーナス12回目を起点(ゼロ)とした場合、次の12回目の確率は図4と全く同じです。

まず、期待値に近いケースから見てみましょう。

図中にAと書いたポイントは、カウント数が期待値から1だけ少ない状況です。この状況になる確率は23%です。

ポイントAが24回目に期待値と一致するための条件は、次の12回目が期待値から1だけ多い状況、つまり、ポイントA'の状況になることです。その確率は19%です。

次に、期待値から遠いケースを見てみましょう。

図中にBと書いたポイントは、カウント数が期待値から3だけ少ない状況です。このZoneでの当選回数が0回だったということです。この状況になる確率は3%です。

ポイントBが24回目に期待値と一致するための条件は、次の12回目が期待値から3だけ多い状況になること、つまり、ポイントB'の状況になることです。その確率は4%です。


ここで言いたいことは、

小さい偏差は発生確率が高く、偏差が解消される確率も高い。
大きい偏差は発生確率が低く、偏差が解消される確率も低い。

ということです。(こう書いてみると、当たり前のことですね。)


シミュレーション

ここで、シミュレーションを実施してみましょう。

上記の考察では、単純化して12回目と24回目のピンポイントで考えました。

ここでは、実践に近づけるためにボーナス12回目から48回目までを対象にし、途中過程も含めます。

自作のシミュレータを使って10000回のシミュレーションを実施しました。(実際には2500回実施してZone1~4のそれぞれを1回とみなし、トータルで10000回とみなしています。)

ボーナス確率は1/140としましたが、各Zoneの区間の定義に取り込まれていますので、以下の結果はボーナス確率には依存しません。

まず、ボーナス12回目に偏差がどの程度の割合で発生するかを調べました。(図5)

図5.  1万回シミュレーション結果。ボーナス12回時点での偏差の発生割合


シミュレーション結果は図4の計算値とほぼ一致しています。

小さい偏差は発生確率が高く、大きい偏差は発生確率が低いことがよく分かります。


次に、ボーナス48回目までの間にどの程度の割合で偏差が解消されるかを調べました。


ただし、注意書きがあります。

カウント数の期待値はボーナス回数の1/4ですから、ボーナスが1回増えるごとに、期待値は0.25ずつ増えていきます。

したがって、偏差の絶対値には0.25, 0.5, 0.75といった端数が生じます。

このため、偏差の絶対値が1度でも1未満(0, 0.25, 0.5, 0.75)になれば、その時点で偏差が解消された、と見なすことにします。

では、結果を見てみましょう。(図6)

図6.  ボーナス12回時点での偏差が48回までに絶対値で1未満になった割


図の見方ですが、例えばボーナス12回の時点で偏差が-1のケースは、前の図5に示されるように1万回のうち23%(2265ケース)ありました。

そのうち、ボーナス48回目までの過程で1度でも偏差の絶対値が1未満になったケースは、図6に示されるように86%(2265ケースのうち1944ケース)あったということです。

繰り返しになりますが、
小さい偏差は発生確率が高く、偏差が解消される確率も高い
大きい偏差は発生確率が低く、偏差が解消される確率も低い
ということがシミュレーションでも確認できました。


誤謬のグラデーション

さて、偏差が解消されると期待することが、ギャンブラーの誤謬の心理的な起源でした。

ここまでの考察から、筆者は、偏差の大きさに応じて誤謬には弱い誤謬~強い誤謬というグラデーションがある、と考えます。

そして、弱い誤謬(小さい偏差が解消されるという期待)は決して全否定されるべきではない、と筆者は考えます。

※  ただし、「必ず解消される」と断言してしまうと、それは否定されるべき誤謬になります。

極端に強い誤謬の事例

余談になりますが、極端に強い誤謬の事例を見てみましょう。Wikipediaにはモンテカルノカジノの一件が記載されています。

ギャンブラーの誤謬の最も有名な例は、1913年8月18日にモンテカルロカジノでのルーレットゲームで発生した、26回連続でボールが黒に入った出来事である。ルーレットの機構に偏りがないと仮定すると、ルーレットで26回連続してボールが同じ色(赤または黒)に入る確率は(18/37)^26-1すなわち6660万回に1回であり、これは非常にまれな事象である。「ルーレットがランダム性の不均衡を引き起こしており、その後には赤が連続して出るはずだ」と誤って推論したギャンブラーは、黒以外に賭けた数百万フランを失った。

ギャンブラーの誤謬 - Wikipedia
※ 太字への変換とべき乗記号(^)の挿入はワイボン(このnote記事の筆者)による


図4と同様の単純化した考察をすれば、期待値に戻るためには逆の6660万分の1の稀(まれ)な出来事が起こる必要があります。現実には期待できない確率ですね。

図4の説明を理解した方は、「大金を失ったギャンブラーは、なんてバカな期待をしたのだろう」、とすんなりと思われたことでしょう。

この事例からは次のような教訓を得ることができます。
確率現象は極めて稀に極端な偏りをすることがある。その場合、偏りが解消される確率は極めて小さくなる。

※ モンテカルノカジノの一件は極めて稀な事例であり、この一件を引き合いに出して、波が読めるという期待を全否定することは間違いであると筆者は考えます。例えれば、設定6で数千枚負けたという極めて稀な事実を引き合いにして、設定6を狙うことは間違いであると言っているようなものではないでしょうか。


誤謬から逃れるために

最初に書いたように、Zone Countはギャンブラーの誤謬に陥る危険性をはらんでいます。

ここまでの考察を理解して下さった方は、ギャンブラーの誤謬から逃れる術(すべ)について、各々の考えを持たれたことと思います。

筆者の答えは、一言でいえば、偏差の発生と解消の確率を正しく理解する、ということです。

Zone Countについての確率的な考察は記事2にまとめました。

ここで、記事2の内容を振り返ってみましょう。

記事2では、どの程度の偏差がどの程度の確率で発生するかを計算しました。(図7)

図7. ボーナス回数別のカウント数とその発生確率 (計算値) ※Zone1~4


次に、図7の結果を使って、80%の確率で偏差はこれ以下になる、という計算結果を示しました。(図8)

図8.   80%の確率で、カウントと期待値の差(偏差)は赤い数字以内に収まる ※Zone1~4



図7や図8に示されているように、「この程度の確率でこの程度の偏差は発生し得る」ということを理解し受け入れることによって、誤謬から逃れることができる、というのが筆者の結論です。


逆正弦法則 または ランダムウォーク

さて、最後に、書き加えるべきことが一つあります。

お気付きの方もおられるかと思いますが、図8の計算結果は、偏差が解消されることを必ずしも意味してはいません。

例えば、ボーナス12回のときに偏差が-1だったものが、ボーナス48回で偏差が-3になり、その間に1度も偏差の絶対値が1未満にならないことがあります。

図6のシミュレーション結果で偏差が-1のポイントを見ると、偏差の絶対値が1未満にならなかったケースが14%あったことが分かります。

これは、期待値から少し離れたところで期待値に近づいたり遠ざかったりするが、期待値には到達しない、という現象です。(以下では「ゲタをはく」と表現します)

記事3に掲載したシミュレーション結果にも、そのようなグラフが多く見られます。一例を図9に示します。赤い矢印で指したグラフがそれです。

図9,  シミュレーション結果の1例(記事3から抜粋)   


このようにゲタをはく現象は、「逆正弦法則」あるいは「ランダムウォーク」と呼ばれるようです。

解説は、例えば ランダムウォーク - Wikipedia をご参照下さい。

この現象が起こる理由は、図4の単純化した考えで直観的に理解できるように思います。

つまり、

小さな発生確率で偏差が大きくなった場合に、偏差が解消されるためは逆の小さな確率で元に戻る必要がある。しかし、元に戻る確率は小さいので、期待値から離れたところでランダムに動き続けることが多い。

ということではないでしょうか。


このように、ゲタをはくことがあることを知っておくことも、誤謬から逃れるためには大切なことです。


しかし、このようにゲタをはいた状態でも、カウント数は増加を続けながら期待値から遠ざかっては近づくを繰り返します。

また、偏差は80%の確率で図8の範囲に収まります。

筆者の実践経験では、ゲタをはくことは、波の予想や設定推測に対して大きな障害にはならないと感じています。

やはり、実践における重要な拠り所は、図8の計算結果であるというのが筆者の実感です。




まとめ

この記事ではZone Countとギャンブラーの誤謬の関係について考察しました。


最初に、Zone1~4のカウント数がおおむね均等になると期待することがZone Countの発想の基礎であることを延べました。

そして、この発想がギャンブラーの誤謬に陥る危険性をはらんでいることを延べました。

次に、ギャンブラーの誤謬には弱い~強いのグラデーションがあり、小さな偏差が解消されると期待することは決して全否定されるべきではない、という筆者の考えを述べました。

そして、「この程度の確率でこの程度の偏差は発生し得る」ということを理解し受け入れることによって誤謬から逃れることができる、という筆者の考えを述べました。


最後に、逆正弦法則(またはランダムウォーク)について触れました。

Zone Countにあてはめると、ゲタをはいた状態で期待値に近づいたり遠ざかったりする現象です。

この現象を知っておくことも、誤謬から逃れるためには必要なことである、という筆者の考えを述べました。


この記事がZone Countの理解に役に立ち、Zone Countをやってみようかという方が増えたら嬉しいです。


最後まで読んで頂き有り難うございました。
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