pm2.5と高校球児の汗 ハノイ,ベトナム
2024年3月。
大学最後の春休みに友人と卒業旅行に行くことになった。
10日間かけて東南アジアの諸国を周遊する計画で、最初に降り立ったのはベトナムのハノイ。
着陸の30分ぐらい前から飛行機は高度を下げ始めたが、外は相変わらず雲の中にいるような白さ。
着陸態勢に入ってもその白さは変わらず、着陸寸前になってようやく街並みが見えた。
ただ、空からハノイを眺められたのは一瞬で、風景が見えたと思ったときにはもう着陸していた。
何が言いたいかというと、それくらい空気が悪い。
PM0:30
ハノイに到着してホテルで休憩した後、近くのバインミー屋さんでバインミーを食べる。
かつてはフランスの植民地だったベトナム。その名残もあって、フランスパンを使ったバインミーという名物がある。
物価の安さもあり、200円程度で美味しいバインミーを食べることができる。
PM4:00
ハノイの中心地にあるホーチミン廟に向かう。ここにはホーチミンが祀られているらしい。
広場には観光客も地元民もたくさんの人がいる。写真を撮ったり、ランニングをしたり、それぞれの楽しみ方がある。
PM5:00
ホーチミン廟の近くには、西湖というとても大きい湖がある。
ここから眺める夕日が綺麗だと事前情報を得ていたので実際に向かったのだが、その夕日に圧巻された。
pm2.5で霞んだ西の空に、オレンジの太陽が見える。
その色は、健康に育てられた鶏が産んだ卵黄のよう。
湖には焼き魚のような姿に変貌した魚の死体が浮いていて、その湖面にはサーモン色をした太陽の反射が映る。
ハノイの空に用意されたpm2.5色の真っ白なキャンパスに描かれた日の入りは、モネが描いた印象・日の出のようだった。
こんなにも汚い空に感動したのは初めてで、感動して良いのかも分からない複雑な気持ちになった。
大気が汚染されることは地球環境に良くない。人間は生きづらくなる。
ただ、そのpm2.5が発生する理由を考えたとき、背景には一生懸命に労働している人がいる。
産業の流れの中で、誰かが誰かを養うために労働する過程で、生まれたpm2.5だったりもする。
汚いものは時として美しく見える。
人の汗は汚いが、高校球児の汗を美しいと形容するアナウンサーはいる。
汚いものは物質としては汚いのかもしれないが、現象で見たら綺麗なこともある。
ハノイの空気は確かにひどかったし、喉も痛くなった。
でも、西湖の夕日は綺麗だった。
空気が汚いことには変わりはないが、その汚い空気は美しい行動で作られているのかも。
そして、その美しい行動がベトナムの経済成長に貢献している。
日々の生活の中でも第一に見たときは、「汚っ」て思うものはたくさんある。
でも、その汚物が爆誕した背景まではあまり考えることがない。
汚いものが誕生した理由は意外と良い話だったりするかもしれないし、悲しい話があったりするかもしれない。
少なくともドラマはある。
そんな風に物事の裏まで捉えられるようになったら、考え方も変わるかもしれない。
ハノイのpm2.5と高校球児の汗は、違うかもしれないけど。
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