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⭐the novel #1 | アイツ
どもども!しろくま商社です!
それは…。一度きりの夏。
この一瞬の為に。僕たち球児は汗を流す。
グラウンドには僕たちの掛け声が響く。近くでは弓道部の声が聞こえる。
あぁ…。やっと…。夏が来た。この時を。僕は待ち望んでいた。
これまでの日々。多くの試練を乗り越え。今。僕はこうして。グラウンドに立っている。仲間との日々。友情・努力・勝利。そんな漫画のような世界を夢見て。僕は今日も歩む。まだ見ぬ景色を求めて。きっと。その未来にこそ。真なる自分が潜んでいるのだと。そう強く信じて。
野球日誌1
学生としての日々。それは一瞬。新海さん曰く。桜の花びらは秒速5センチメートルで落ちていくらしい。時間にして数十秒。花は揺れる。華麗に。煌びやかに。まるで自分こそが主役だと主張せんばかりに。彼らは踊るのである。そういう意味では。人生とは。ダンスに例えることが出来るのかもしれない。舞台は瞬きと共に終わる。その僅かな時間に。ダンサーたちは熱を込める。その熱は金属のように。オーディエンスに伝播する。その熱は会場中をクリームパイのように包み込み。一体感を演出する。人生とは。孤独との闘いである。皆。亡くなる時は1人である。それでも。生きている間。僕たちは互いに切磋琢磨し。己を高め。その結果。僕たちは幸せを享受することが出来る。弱肉強食。時に自然界は残酷である。ダーウィンが進化論で主張したように。僕たちもまた。環境に応じて変化していく。
僕の人生。もし僕の人生に色があるとするなら。その色は一体どんな色をしているのだろうか。決して。恵まれた家庭環境で育てられた訳ではない。これまでの学生としての日々。正直。暗いことばかりだ。転機となったのは僕がまだ中学生の時。父親が蒸発した。結果。僕と妹。そして。母が残された。母の荒れ具合は異常だった。当時の僕は軟式野球部に所属していて。父親が蒸発するまでの日々は。まあまあ幸せだったように思う。それでも。過渡期は訪れる。母は荒れ狂う。奇声なんてなんのその。憩いの場であった自宅は。瞬時に戦場へと変貌する。
ペルソナという言葉がある。僕たちは必要に応じて。仮面を被る。TPOという言葉が示す通り。僕たちはいつだって役者である。状況に応じて。最善の選択を行う。たとえその選択が残酷なものであったとしても。僕たちは瞬時に判断し。前に進んでいかなければならない。後退すること。それは富裕層の特権である。弱者はひたすら前進あるのみ。辛い日々。それでも。希望はあるのだと。そう自分に言い聞かせる。そう自分に嘘を付く。
巷では『推しの子』が流行している。アイ曰く。嘘は飛び切りの愛らしい。確かに。その説は一理あるのかもしれない。母に対する愛情など。僕は持ち合わせていない。しかしながら。子供はいつだって弱者である。強者には勝てない。それがこの世の理。少なくとも。左記のルールは成人に至るまで適用される。
ストレス・パラドックス。適度なストレスは自己成長に繋がるという理論。確かに。そうかもしれない。"適度なストレス"。ここが肝心である。過度なストレスは滅亡へと繋がる。人は複雑に出来ているようで。案外脆い。一度壊れれば。お先真っ暗。エンドレス。あぁ。こんな味を知るために。僕は生きている訳では無いのに。