🎁the monogatary #95 | 紅葉 #2
「お~い山田!遅いぞ!」
主将が僕に声をかける。相変わらず鬱陶しい。
それでも。本音と建て前は分けなくては。
「はい!すみません!」
一応。気前よく返事する。
輪を乱してはいけない。
「良い返事だ!山田!その調子!全員で登頂するぞ!
目指すは頂点!高尾山!そこまで難しい山ではない。
ラフな服装でも大丈夫!しかしながら!
我が登山部は念には念を込めて!慎重に!
かつ大胆に!計画を実行する!
いざ行かん!レッツ・ファイティング!」
高倉が高らかに宣言する。相変わらず。
平常運転。でも。彼が彼であるからこそ。
救われる人もいる。
僕もその一人。正直。
学校以外の時間は苦しみばかりで。辛い。
それでも。登山部として活動している時間。
体を動かしている時間。
そんな些細な時間が。
僕にとっての唯一の幸福だ。