虚数の樹・量子の海周りについて
前文
虚数の樹と量子の海、そして虚数空間。
プレイヤーの多くを悩ませてきたであろうこの単語たちに、一体どんな意味が付加されているのだろうかと考えることは、深淵に身を投げるようなものでしょう。
我々の想像するより遥かに、世界観とその設定に対する解釈多様性は遍くして存在しています。
そのような中、ここでは私なりの解釈を書き記しておりますが、あくまでも解釈(と言うよりかはこじつけに近いもの)であること、情報源と情報それ自体に対する絶対的な保証が出来ないことを了承の上で読んで頂ければと思います。
加えて、ここでは虚数の樹と量子の海に関しての詳説は致しませんのでご了承下さい。
予備知識
宇宙の誕生と「無」
我々の住む宇宙について、その始まりには様々な説がありますが、最も有名なのは「ビッグバンモデル*¹」でしょう。
(以下、我々の居る宇宙について"現宇宙"と表記させて頂きます)
現宇宙は膨張を続けており、我々が観測出来る宇宙の範囲には実は限りがあります。
さて、宇宙の外はどうなっていて、現宇宙の誕生前には何が在ったのでしょうか?
その答えは「無」です。
読んで字の如く、何も"無"いことを示しています。
物質や空間はおろか、時間という概念すら無い。いわば"無"という概念だけがそこに在ったとしか形容出来ないのです。
しかし、「無」においては───そもそも、時空間の概念が無いのですから、このような表現すら正しくは無いのですが。───絶えず宇宙の生成消滅が起こっているのです。
これは量子力学における「ゆらぎ*²」が原因であり、「無」における宇宙の生成消滅を「無のゆらぎ」と呼びます。
そして、ほとんどの宇宙は生まれて間もなく消滅してしまいます。
では、なぜ現宇宙は消滅を免れることが出来たのでしょうか?
それには「トンネル効果*³」のようなものが関係していると言われています。
これにより、現宇宙は消滅の運命を超えて、今の姿になったのです。
宇宙の最期
現宇宙の"最期"については、様々な説があります。
ここではそのうちの一つである「ビッグクランチ」を解釈に取り入れるため、間単に説明致します。
現宇宙が加速膨張していることは観測事実ですが、「ビッグクランチ」と呼ばれる説では、この膨張がいずれ停止して収縮に転じ、最終的には宇宙の全ては特異点と呼ばれる一点に集まります。
かいつまんで言えば、「ある一点から始まった宇宙が、またある一点に収縮して終わる」ということです。
注:ビッグクランチにおける宇宙の最期は「特異点*⁴」とされていますが、現在の量子力学では特異点に集まった後に起きることを記述することは不可能です。
ここでは、特異点に集まった後、「無」に於いて生成消滅する宇宙のように現宇宙が消滅すると仮定していることをご了承下さい。
情報保存
全て物質の情報は保存されなければならないというのは、現代の量子力学と一般相対性理論から導かれる結論です。
逆に言えば、現宇宙に於いて、全て物質の情報は保存されている、ということになります。
これに関連して、「ブラックホール情報パラドックス*⁵」という未解決問題がありますが、こちらはまた別の解釈に使えると考えています(ここではそれについては述べません)。
多元宇宙論(マルチバース)
現宇宙のような宇宙が他にも多く存在するとする説です。
この中には、「宇宙の誕生と同時に別の"泡宇宙"も誕生している」、「現宇宙に存在するブラックホールの中に別の宇宙が存在する」、「波動関数*⁶の収縮を仮定しなければ、これの全ての解に対応する世界が存在している」と言った説があり、この"別の宇宙"こそが"平行世界"であると言われることもあります。
仮説
次に、虚数の樹、量子の海、虚数空間に関する個人的な解釈を以下に記します。
樹と海
虚数の樹と量子の海は本編を参照すれば、概念的には一見別のものに見えます。
しかし先に、虚数の樹理論に際して、一定数のプレイヤーが勘違いしているであろうことがあります。
それは、「虚数の樹と量子の海はただの比喩に過ぎない」ということです。
つまり、"虚数の樹"と"量子の海"という言葉とそれに付随する表現たちは、mihoyoの世界観における「世界」の生成消滅の原理を、人間が理解し易いように当て嵌められたイメージに過ぎないのです。
この点から、私は"樹と海"が同一のものではないのかと思い付きました。
実際、樹が海から栄養を吸い取って新たな葉を成しているという意味でも、この二つを同じと見なしても問題は無いと考えています。
そして"樹"とは、この後に述べる「世界の生成消滅」を表すための比喩だとも考えました。
また、海と聞いて波が揺らいでいるのを想像する人は多いでしょう。
量子の"海"が「無のゆらぎ」を表していると考えれば、これは比較的理に適った解釈だと言えそうです。
虚数空間
ストーリーに於いて頻出である"虚数空間"という単語、これは「実数空間の裏にある異空間」だと説明されています。
![](https://assets.st-note.com/img/1729864263-DpaHtFMfIe7qblKGkPjJESVZ.png?width=1200)
(ほんとうにありがとう)
虚数の樹理論によれば、虚数の樹と量子の海は虚数空間に存在している、もしくは虚数空間そのものです。
これについて、某wikiには『虚数空間はその構造から樹に例えられ「虚数の樹」とも呼ばれています』と記載されていますから、おそらくその通りなのでしょう。
実空間の外にあるのは、虚数空間そのものだと言えます。
次に軽く詳述しますが、この虚数空間こそ「無」であると考えました。
本題
解釈
さて、ここまでを踏まえて、私は「虚数の樹と量子の海、ひいては虚数空間が全て同一である」と考えました。
樹と海が、人間が作り出した比喩に過ぎないのであれば、そう仮定したとしても問題は無いと思ったのです。
以下、箇条書きで私なりの各概念に対する解釈を纏めています。
・虚数空間
→実数空間の外/裏にある。絶えず世界の生成消滅が起きている。
無に対応。
・虚数の樹と量子の海
→二つとも虚数空間と同一であり、虚数空間で起きる事象についての分かりやすい例えとしてつけられた名前である。
"海"は「ゆらぎ」を表す。
"樹"は次に述べるサイクルと海に対応する比喩表現である。
無のゆらぎに対応。
・葉
→「葉」は我々で言う所の「(安定した)宇宙」であり、剪定された葉は海に落ちて分解されるが、中にあった文明といった「情報」は保存される。樹はこれを吸い取った後、多少の改変を経て新たな葉を成す。
("樹と海"が「情報」をどのレベルまで分解し、どの程度の大枠を残して世界を再構築しているのかは不明)
情報保存に対応。
・泡
→量子の海で生まれる、ある葉の平行世界である(らしい)。
多元宇宙論に対応。
・落葉
→葉が剪定されて海へ落ちる、すなわち世界が終わっていくことを指す。
(おそらく)ビッグクランチに対応。
要約と対応
「無」「無のゆらぎ」「情報保存」「多元宇宙論」「ビッグクランチ」といった理論を基にして、虚数空間、樹と海、文明世界の再構築、葉/泡の生成消滅が設定されているという解釈をしました。
また、平行宇宙において物理法則が同一であるかについては議論がありますが、ここでは「mihoyoの平行世界では物理法則は全て同一」と想定しています。
そして別の話にはなりますが、崩壊スターレイルの"跳躍"のような「世界間移動」は、「ワームホール*⁷」という概念に対応しているのではないかと考えました。
概して言えば、あの世界における様々な現象といったものは、現宇宙にあるいくつかの理論と対応して形作られているという解釈をしています。
あとがき
補足と謝辞、その他
今回、私がこのような発想に至ったのには、多くの人の助けがあってのものです。
「虚数の樹」や「量子の海」に対する様々な考察が流れてくる中で、数々のヒントを断片的に拾い上げて思い付いたのが、この突拍子もない解釈であるというのは、どうも変な話かもしれませんが。
下にあるイラストはTwitterに居らっしゃる方が描かれたものを引用させて頂いていますが、こういった他の方の考察には常々感動のようなものを憶えさせられます。
(本当に皆さんよく考えていらっしゃって凄いなぁ….と言う感じです)
![](https://assets.st-note.com/img/1729954226-pABOsT7aYJfjdXNWEyG8QKk4.png?width=1200)
(これほんとうにすごい)
また、本文を読んで頂ければ分かる通り、私自身が詳細な公式設定を憶えている訳では無く、単に「こういう理論とか当て嵌められるんじゃね?」くらいの気持ちで書き記しております。
他の方の考察に比べれば粗雑極まりないものですが、「こんなこと考えてる奴もいるんだな~」くらいの気持ちで読了して頂ければ幸いです。
加えて、ここで述べられた具体的な理論や仮説については、私自身が記憶している範囲で用いている上、具体的な学習を経て得た知識ではないことを改めて強調させて頂きます。
何か疑問や不明な点、具体的な情報提供等ございましたら、こちらの記事内にコメント頂ければと思います。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
用語解説
*1「ビッグバンモデル」
現宇宙が、初めごく小さな状態から"Big Bang"と呼ばれる膨張により大きくなったとする説。
これが宇宙の始まりであると勘違いしがちであるが、実はそうではない。
まず「量子ゆらぎ」により宇宙が誕生し、その後に「インフレーション」と呼ばれる指数関数的膨張が起き、その次に起きたのが「ビッグバン」であると言われている。
*2「ゆらぎ」
ここでは"量子ゆらぎ"を指す。
量子力学的な現象であり、ミクロなスケールに於いては全て物質や空間がエネルギー的に「ゆらいでいる」こと。
これはハイゼンベルクの不確定性原理により説明され、絶対的な真空(=その空間におけるエネルギーが0であること)が存在しないことを示している。
*3「トンネル効果」
量子力学において、非常に小さな確率で物質の波動関数がエネルギーの障壁を超えること。
現宇宙はこのトンネル効果により、ポテンシャルエネルギーの障壁を通り抜けて、坂道を転がるように膨張していったと考えられている。
![](https://assets.st-note.com/img/1729986637-Pqtp9RF6AodvilyYIJxuzT8N.jpg)
https://gendai.media/articles/-/124956?page=4
*4「特異点」
そこで重力が無限となる点のこと。
物理学において、計算が無限大に発散することは理論の破綻を示しており、この点自体が未解決問題である。
*5「ブラックホール情報パラドックス」
ブラックホールに吸い込まれた物質の情報は失われてしまうが、現在の理論では物質の情報は保存されなければならないため、矛盾が生じているというもの。
これに関しては様々な仮説が成されているが、その中の一つに「別宇宙のホワイトホールから吐き出されている」という説がある。
*6「波動関数」
ある粒子の運動量や位置と言った状態を表す関数。
観測される前は波のように、粒子の情報(=状態)が空間に広がっているが、いざ観測されると「波動関数の収縮」が起こり、その粒子の状態が一意に定まるとされている。
*7「ワームホール」
時空間のある一点と別の一点を結ぶ穴のようなもの。
ブラックホールと、仮説上の存在であるホワイトホールを繋ぐものとする説もある。
追記
書きながら色々と調べていたのですが、どうやら私のこの解釈と私自身の認識には数多くの誤解と欠陥があるようです。
読み返す度に「なんだこのこじつけは」と自問自答する程ですので、穴を見つけてもあまり気にせずにして頂ければと思います。