2/28「ゴリオ爺さんの満足。」

ようやく読み終えた「ゴリオ爺さん」。
満足するのはむずかしい、という小説だった。

1800年代前半のフランス文学。
若者、中年、老人(ゴリオ)、3人の男がそれぞれの理想を求めて破滅していく。

家族を大切にしながらも社交界の花形でいたいとか、波瀾万丈な人生を歩む俺でいたいとか、子どもたちと相思相愛でいたいとか。
みんな叶わなかった。

叶えるために努力したり、ひとをうまく騙そうとしたり、じぶんを騙したりしたけど、叶わなかった。かわいそう。


でも諦めずに叶うひともいる。

以前知り合いからイラストレーターを紹介されて話を聞いた。

そのひとは20代のころどうしてもイラストレーターになりたくて、ツテはないけど海外まで持ち込み営業に行ったらしい。だんだんツテが増えて、日本でも大手出版社からの仕事を請けるようになった。

理想が叶ったんだ。めでたい。
話が一段落したので質問してみた。

これからやりたいことってありますか?

「イラストの仕事は、まあそろそろいいかなって。今後は会社というか、イラストレーターたちを束ねた組織をつくりたいんだよね。」


聞いておいてびっくりした。
まだ夢あんのかよって。

そしてなにか人間の業みたいなものを感じて怖かった。努力してなにかを叶えたところで、その喜びはずっとつづくわけじゃない。つぎのなにかに向けてまた努力して生きていく。満足することがない。

目標を設定してそれに向かって邁進する生き方は向上心があって素敵だけど、そんなに単純なことなのかな。

小説にでてきた3人の男とイラストレーターのひとは、境遇も成功体験もまったく違うのにじぶんのなかで重なる部分が大きかった。現状に満足してないひと、できないひと、という意味で。

そういうじぶんも絵を1枚描いたらおわりということはなく、次はああしようこうしようと試行錯誤して満足することはない。


ひと。
みんな何かを願っている。
願わずにはいられない。
叶っても叶わなくても、
満足できず死んでいく。
小説、イラスト、絵。物だけが残る。
ゴリオ爺さんだって、ある物を残す。

なんてこった。




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