父の移動、終わる

母あてに箱が届いた。

差出人は、親せきの方。
仮にAさんとする。

今年の夏ごろだったか、急にAさんから電話で、
父のお骨を出して墓じまいをしたいと言われた。

こちらはお墓をつくらねばならず。
私はパソコンで検索したり、資料請求したりした。

しかしわが家にはお金がない。

「無いそではふれないよ。半そでを引っ張っても、どう頑張っても長そでにはならないでしょ? お金ないんです、って正直に言いなよ!」

恥ずかしいとか見栄とか言ってられない。まあ、恥ずかしい事だけど。

すると、母は正直に、わが家にお金がないのだとAさんに伝えた。

父のお骨を移動させることになり、それにかかったお金をあとからAさんに支払って負担する。


リピート祖母

Aさんから届いたその箱を見て、
祖母「これなに?」

母「位牌」

祖母「遺灰?」

母「違うよ」

私「なんでうちを経由して遺灰を持ってくのよ」

数分後。

箱を見て、
祖母「これなに?」

私「……」

あ、いつものやつ。(笑)

おばが話していると、

祖母「それはなんなの?」

急に流れる微妙な空気。
だからさっきまで話していたじゃない的な。

私「……みんな! 気楽に行こうぜ!(笑)」

と、わざと明るめに言ってみたところ、ちょっと笑いが起きました。


父に手紙を書いてみる。

お父さん。
こうやって文章に書くときは
これといってなにも感じないんだけど、
口に出して「お父さん」って言うと、どういうわけか違和感のような謎の感情が胸のあたりにうずまくんですよ。

これ、私が小さいときに、「お父さん」って呼ぶ前に父が亡くなったからだな、ってわかってはいるのだけど。

だからといって「パパ」って言うと、
もうそんな年齢でもないですし、
愛人感が出てしまうし、
世間にはパパ活って言葉もありまして、
それはそれでぜんぜん違うので、使いたくないです。

あと、私が検索して、遺骨は郵送できると母が伝えたら、
Aさんは最初、怒りだしたそうです。

母が、持って運ぶことはできないと伝えてくれたようです。

私はヘルニアを持っているし、
体が重いので足が痛くなるし、
もし、お父さんのお骨を持ったまま長距離を歩いたせいで
腰痛とひざの痛みが始まったら、どうなるのでしょう?

想像しただけで悲惨で、少し笑えます。

母が頑張ってくれたおかげです。
あなたの移動は無事、終わりました。
あなたの妻が全部やってくれました。ありがとう、です。

ただ、お金がなくなり……。

その、経済的な余裕は……。うう。

最近はことあるごとに上手くいかず、
よく眠れず、
そのうち病院に行き、
またしてもお金と時間、気力など、使いたくないことに使わなければならない未来が待っていそうです。

正直、こんな自分にものすごくうんざりしています。

自分で自分にやさしくすることがうまくできないのです。
ちっちゃい子が親にされるみたいにほめられたいです。

想像することもできません。
想像をできるだけのデータがないのです。

夢に出ててほめてください。無理でしょうか?

私の中のお父さんの記憶は、いよいよ薄れて無くなりそうです。
それがとても悲しいです。

いいなと思ったら応援しよう!