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FGO算数講座(5):スター最低保証に意味はあるのか?

スマートフォンゲーム「Fate/Grand Order」(以下、FGO)のクリティカルスターについて以前某所に寄稿した内容を数回に渡って供養する。

連載目次

FGO算数講座(1):スター発生率アップから学ぶパーセントポイント
FGO算数講座(2):スター獲得の恩恵を数値化しよう
FGO算数講座(3):スター発生の恩恵を数値化しよう
FGO算数講座(4):コード:グリッター考察
FGO算数講座(5):スター最低保証に意味はあるのか?(本記事)

スター最低保証論

スター発生率アップ、特に「コード:グリッター」の考察にあたって必ず引き合いに出されるのが、スターの最低獲得数を基準として効果の程を計る考え方だ。本稿ではこれを「スター最低保証論」と呼ぶことにする。

Twitterユーザー「やな@FGO」(@yana_fgo)氏によって提唱されたグリッターのスター最低保証論は1000RTオーバーの広がりを見せた。

これ以降、同様の主張が各所で見られるようになる。

3手目Qの補正値が1.8、グリッターで2を超える。1につき星1個、つまり誰でもヒット数の倍の星を生むことが出来るようになる。騎乗持ちや殺は素で2超えなのでそれ以外の高性能Qがおすすめ。例えばナイチンは6個確定85%6回判定 → 12個確定5%を6回判定になる -- 2018-10-31 (水) 23:58:28
コマンドコードで星20つけた人いる?結構星出てくれる? 聖杯も捧げたし、コマンドコード悩んでる - 名無しさん (2019-01-18 03:25:17)
計算上、コマンド無しで3枚目Qが7.5個寄りの4~8個、有りで8.3個寄り8~12個。騎乗持ちや殺でなければ地味に恩恵あると思われる - 名無しさん (2019-01-26 01:03:43)
おお…!!最低保証が段違いですなぁ! np貯めもスキルないときの火力も、星ないと話が始まらない感じするから、アリですな!!アリですな! - 名無しさん (2019-01-26 02:06:34)
700 : 僕はね、名無しさんなんだ :2019/01/21(月) 15:56:19 7S9G2ghU0
たとえばQ3枚目に選択する場合、

(各鯖ごとのスター発生率+1.8(Q3枚目補正))×(騎乗やQバフ))+(気配遮断や発生率バフやコマンドコード)

が発生率になってこれにヒット数が乗算される

騎乗・Qバフ・気配遮断とか無い鯖だと、
発生率1.9程度のことが多いから、グリッターで獲得最小値・最大値が変わる
(小数点以下数値は確率による獲得なので)

たとえばトリスタンだと、
(0.081+1.8)=1.881
1.881×4hit=期待値7.524(最小4個~最大8個)
にグリッター付けると、
(0.081+1.8+0.2(グリッター))=2.081
2.081×4hit=期待値8.324(最小8個~最大12個)
となる

すげえ雑に言うと、騎乗とか気配遮断あるなら要らんことが多いけど、
持ってなくてヒット数多い鯖なら割りと恩恵ある

このスター最低保証論は本当に正しいのだろうか。結論から言うと、間違っていないが、現状のFGOでは意味がないと私は考えている。その根拠は以下の通りだ。

スター発生率分布

スター最低保証論によれば、スター発生率を20%アップさせるだけで、獲得できるスターの最小値・最大値が最大6個増える。最低保証値が2倍になるため、とんでもなく効果があるように思われるが、それは誤解である。この誤解を解くために、スター発生率の分布を可視化してみよう。

スター発生率分布は二項分布関数を利用して表すことが出来る。例として沖田総司(剣)の3枚目Quickスター発生率をGoogle スプレッドシートで表計算し、グラフ化すると次のようになる。

Screenshot_2020-01-13 FGOスター発生率計算

沖田総司(剣) 騎乗E 3枚目Quick スター発生率

グリッターなしのスター獲得数は文字の上では5~10個となるが、5~7個を獲得する確率は1%未満であり、ほぼゼロに等しい。グリッターなしでも95%以上の確率でスターを9~10個獲得できるのだ。

一方、グリッターありのスター獲得数は文字の上では10~15個となるが、14~15個を獲得する確率は1%未満であり、ほぼゼロに等しい。グリッターありでも95%以上の確率でスターを10~12個獲得できるに留まる。

いかにスター発生の最小値・最大値が無意味なのか分かるだろうか。何十、何百と試行を重ねる上で重要なのは最小値・最大値ではなく平均値(=期待値)だ。グリッターによるスター発生率アップの効果は20%*5Hit=100%=スター1個分であり、それ以上でも、それ以下でもない。

前提条件が限定的

スター最低保証論が着目している「3枚目のQuick」という状況自体が限定され過ぎている。そもそもQuick自体、不遇の性能ゆえに積極的に選ぶようなコマンドではない。

前回も述べたが、グリッターは(BAQ関係なく)高Hitカードに片っ端から刻印して毎ターン3個以上のスター獲得状態を維持するのが基本にして理想だ。わざわざ「3枚目のQuick」に限定する意味がない。

敵によって左右される

スター最低保証論では俗にDSRと呼ばれる敵補正を考慮していない。

DSR
DownStarRate(敵補正)。SRを減算または加算する
大抵の敵は0。アサシン・アヴェンジャー=-10.0%。ランサー・アルターエゴ=-5.0%。アーチャー=+5.0%。ライダー=+10.0%。フォーリナー=+20.0%が入る

基本的には敵クラスに応じて-10~+20%の補正が入るが、DSRが設定されていない敵もいるので、個別詳細はユーザーWikiを参照して欲しい。

クラス相克を考えると、多くのケースでは自身のクラス補正で敵のクラス補正が相殺されるので問題とならないが、バーサーカー(+5%)やアヴェンジャー(+6%)でアサシン(-10%)を殴るケースではマイナス補正が上回るため、グリッターによるスター最低保証が破綻する。

一定量のスターを必要としない

これが最大の理由なのだが、FGOはスターの最低獲得数が増えてもメリットになるようなことがほとんどない。

例えば、NPを「毎ターン100%獲得できる」か「毎ターン0~200%の間でランダムに獲得できる」かを選べるならば、前者の方が得なのは明らかだ。宝具を撃つには一定量(100%)のNPが必要であり、一定量に満たないNPや、必要以上のNPを獲得したところで意味がないからだ。

ところが、スターについては一定量を要件とするスキルが2つしかない。新宿のアーチャー(弓)の「蜘蛛糸の果て」<スターが10個以上ある場合のみ使用可能>と、セミラミス(殺)の「驕慢王の美酒」<スターが8個以上ある場合のみ使用可能>だ。

新宿のアーチャーは3枚目Quickにグリッターを刻印することで、3Hitで最低6個のスター獲得が保証される。しかし、「蜘蛛糸の果て」の発動条件を満たすには更に4個のスターを獲得する必要があり、まだ不確定要素が多い。

セミラミスはアサシンのクラス補正により3枚目Quickのスター発生率がグリッターなしで200%を超えるため、4Hitで最低8個のスター獲得が保証されている。従って、アサシンやアヴェンジャーを相手にしない限り、素で「驕慢王の美酒」の発動条件を満たす。スター最低保証論が意味を成す唯一のケースとなるが、同時に、グリッターは不要という結論になる。

まとめ

スター発生保証論は、決して間違いとも言い切れないが、誤解を招く要素によって過大評価されている節があり、グリッターの正当な評価を妨げているおそれがある。

誤解のないよう言っておくが、高HitのQuickカードへのグリッター刻印には意味がある。ただ、高HitのArtsカードやBusterカードへのグリッター刻印も同程度に意味があるし、1枚目・2枚目のQuickカードへのグリッター刻印も同程度に意味がある、ということだ。

※本記事は2019年1月時点の情報を元に執筆されているため、現在の状況とは異なる場合があります。

※アイキャッチ画像は「もっとマンガで分かる!Fate/Grand Order 第51話」より