Firefox Focusのヌルっとしたスクロール感は4年以上放置されていた不具合だった
『Firefox for Android』に先んじてGeckoViewエンジンを搭載するなどして「爆速」「ヌルサク」などともてはやされたAndroid向けブラウザ『Firefox Focus』だが、いざ使ってみるとページのスクロールに形容しがたい違和感があり、ほとんど使用していなかった。
今年の夏に違和感の原因を探ったところ、指のタッチスクロールとページのスクロール速度が一致していないことに気付いた。スクロール開始時のわずかな間だけ、指よりページの方が早く流れてしまうのだ。そのせいで初見はヌルっと動くように感じるのだが、狙ったところでスクロールを止めることが難しく、ブラウジングに支障を来たすことになる。
これは不具合なのではと思い、MozillaのGitHubリポジトリ(mozilla-mobile / focus-android)を確認したところ、すでに2017年の時点でIssueとして上げられていたことが分かった。
Issueの中で貼られていた問題の動作のアニメーションGIFがこちら。
タッチポインターが表示されていないためズレが分かりにくいが、URLの表示されているツールバーの隠れる速度とページ内のコンテンツのスクロール速度が一致していない。
小さくなりがちなモバイルデバイスでの表示領域を広げるため、スクロールに連動してツールバーが隠れる処理に問題があり、スクロール開始からツールバーが隠れ切るまでの間のスクロール量が2倍(?)になっている、といったところだろうか。
2019年になり、同様の事象がBugzillaでも報告され、GeckoViewエンジンでの修正はバージョン67で完了しているようなのだが、なぜかそれがFirefox Focusに反映されていないようだ。
最初のIssueの提出からすでに4年以上経っている上、Firefox Focusの公式Twitterアカウント(@FirefoxFocus)も2018年を最後に2年半以上ツイートが止まっている。
もはや修正を望むべきもないと考えていたある日、Firefox Focusがバージョン93で大きくアップデートされるというニュースを目にした。
そこで試しにインストールしてみたところ、なんと上述の問題が解消されているではないか!
過去のバージョンを遡って検証してみると、2021年7月20日付のFirefox Focusバージョン8.17.1(GeckoViewバージョン90.0)では現象が再現するが、2021年8月16日付のFirefox Focusバージョン91.1.2(GeckoViewバージョン91.0)では現象が再現できなかった。
具体的にどのコードの変更が影響したのかまでは特定できなかったが、不具合が修正されたことは嬉しい限りだ。ただ、GeckoViewエンジンは昨年すでにFirefox for Androidにも採用されており、GeckoViewのテストヘッドとしての役割を終えたFirefox Focusの今後は不透明だ。使用感に大きく影響する不具合が4年以上も続いた点や相変わらずTwitterアカウントが放置されている点からも開発体制には不安が残る。