ソローを選んだとき
前の家の近所に、古本屋があってよく通ってました。仕事はぼちぼちしかやってなくて、本を読む時間がたくさんあって、買ったらすぐに読み終わってしまい、また買いに行くと、
もう少しゆっくり読んでください。
と、怒られてました。
店主の彼女からはいろいろ教わったし、嫌味の言い合いや、軽く口喧嘩さえあるくらいだったけど、私も体調が悪くて時間があるから、よく行きすぎなくらい行っては本を買っていたんです。はた迷惑な客です。
ある時、
ヘンリー•デイヴィッド•ソロー
「森の生活」
を見つけてしまいました。この本の存在は友だちが大切にして持ち歩いてるから知っていたんですが、実際読んでなくて。この時に出会った「森の生活」は、A4サイズの動物の挿し絵が入った新訳です。1981年に出版されたもので、ちょうど読みやすいかもしれないと、とても出会いを感じたものです。
手に取ってる私に彼女が言いました。
読んでしまうんですね。
えっ?と思ったんですが、私には旅人の友だちの姿が浮かびました。読むのに、覚悟が必要なのかもしれないと思いました。人生が変わってしまうのかもしれない、とも。
そうはいっても、今だにまだ全部読んでなくて、読みたくなくなったりもして、しまいこんでしまったり、そしてまた、ダンボールから出してきて、私はこんなことばかりやっています。思い出すと、あっ、あれ必要だって、取り出して。
たった今、「森の生活」を読みすすめたら、やっと読むときが来たのかもしれないと感じました。読む手ごたえがあったんです。前はなかったのに。この10年のあいだに、いろいろ大変なことあったけど、それが、「森の生活」との時間を育ててくれたのかもしれません。
たぶん、読むのに時間がかかるし、休憩しながらちびちび読むから、感想は言えませんが。
それでは、またお会いできますように。
ありがとうございました。