シレーヌの日記7
私はシレーヌ。
今日は人生最良の日。
そして、最も悲しい日。
30年前の事故の真実を聞いた私は
ショックのあまり、しゃがみこんでしまったわ。
ロミオが死んでしまう。
私のせいで - 。
いつの間にかおばあさんはいなくなっていたわ。
私は埃を被ったロミオの庭の机を掃除し
椅子に座って空を眺めていた。
しばらく考えた後、私は自分の家を見に行こうと決めたわ。
30年 - 。
とても長い時間が過ぎていた。
自分の家への行き方はすぐに思い出せたわ。
以前見た風景とは変わってしまった道並みを横目に
自分の家を目指したの。
あった - 。
でも、なんて言って帰ったらいいのかしら。
私は30年前に死んだ身。
きっと、受け入れられることはない。
しばらく塀の外から様子を伺っていたわ。
そうしたら中から知らない女の人が出てきたの。
年齢は30歳から35歳くらいかしら。
庭で花に水をあげていた。
そして、家の中からもう一人出てきたわ。
お母さん - 。
昔とそれほど変わらない。
あの時のやさしいままの。
お母さん。
私はおもわず声を出そうとしてしまっていたわ。
でも、お母さんが女の人にやさしく語りかけている。
その雰囲気を見て、そっと声を落としたの。
すぐに理解できた。
私が死んだ後、心が悲しみに満ちてしまったおかあさん。
きっと、養子をとったのだわ。
2人の雰囲気はまさに親子のそれだった。
私は家に帰らず、その場を離れていった。
お母さんが元気でいてくれて本当に嬉しかった。
本当に。
でも、涙が止まらないのはなぜなのかしら。
もう、私には帰る場所は一切なかった - 。
あまり出歩くのも怪しまれてしまう - 。
そう思った私の行ける場所は1つしかなかった。
そう、ロミオの家。
いつも家の鍵は庭の机の裏につけていたわ。
もしかしたらと思い、机の裏を調べてみたわ。
鍵があった - 。
ごめんね、ロミオ。
少し家に入らせてもらうわ。
私は身を隠すためにロミオの家に入った。
電気も水も何も無いその場所で
ただ身を潜めていたわ。
木でいた頃はこんなに寂しいことはなかったかもしれない。
人間って寂しいのね。
とても - 。
それから何日か経ってからだった。
私は何も口にせず、体が衰弱していたわ。
こんなにもすぐに弱ってしまうのね。
このまま死んでしまってもいい - 。
そう思った時、その声は聞こえてきたの。
「シレーヌ!」
忘れもしないその声は
ロミオの風音。
つづく。