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Dev Day から紐解く OpenAI が目指す人類の未来

先日行われた OpenAI Dev Day のリリースが各地で話題になっています。
GPT-4-vision のAPI提供の発表など、開発者やクリエイターに今後与える影響は凄まじいものになっていくでしょう。中には、ある種の恐怖を感じた方もいらっしゃったのではないでしょうか。

突然のアップデートを境界に、世界の勢力図をガラリと変えるほどの影響力を持っているOpenAIですが、果たして彼らはどこに向かっているのでしょうか。彼らの掲げるミッションから考えてみました。


OpenAIが掲げるミッション

公式説明

OpenAIのHPには、彼らのミッションが次のように記載されています。

Our mission is to ensure that artificial general intelligence—AI systems that are generally smarter than humans—benefits all of humanity.

OpenAI 公式HP

つまり彼らは、人間を上回る知能を持つAIシステムが、全人類に利益をもたらすことを目標としています。OpenAIのありとあらゆる活動は全て、このミッションの実現に向けてのものであるということです。これこそまさに、OpenAIが目指す汎用人工知能(AGI)の定義であると考えられるのではないでしょうか。

ここで注目したいのは、あくまでも人類に利益をもたらすためのテクノロジーであるということです。AIが自分自身で考える知能が人間を上回ったとしても、行使する人間の意図に沿って振る舞うべきであるという点が強調されています。

サム・アルトマン氏による説明

OpenAI CEOであるサム氏も自身のブログ上で同様の声明を発表しています。
原文と詳細はこちらをご覧ください。

彼のブログによると、やはり同様に「人類を主体とする社会」の幸福度を向上させることが明記されています。加えて、AGIの利益やアクセス、およびガバナンスまでもが世界で広く公正に共有されることが望ましい、とされています。

しかしそれだけではなく、こういった大きな利益をもたらすポテンシャルを認める一方で、AGI運用や開発リスクについても慎重に取り扱う必要があると強調されています。理論上、人間の意図に沿うような構成を実装できたとしても、現実ではモデリング通りに動かない可能性があることを考慮しているという主張です。ChatGPTには RLHF 「人間がAIにフィードバックを与えることでAIを矯正し学習させる手法」が用いられていますが、生成されるテキストや表現について人間の目を通している理由の一つなのかもしれません。

以上から、サム・アルトマン氏および彼が率いるOpenAIは一貫して「全人類の幸福に役立つテクノロジーを、慎重かつ段階的に開発しながら全世界に平等に届けていくこと」をミッションにしていることが読み取れます。

Dev Day を振り返る

これまでを前提としながら、先日の Dev Day で発表された機能の中で特に大きなインパクトがあると思われるものを振り返ってみましょう。
※主観的評価を含みます。

①GPT-4-Turbo の登場

トークン数を128Kに増大させながら、利用料金を引き下げた発表は事業者やAPI利用者にとって大変喜ばしいニュースでした。特にコスト面について従来のGPT-4はAPI料金が高額でした。サービス運用にGPT-4を利用しようとする時に大きなボトルネックとなりうるコストで、GPT-3.5に比べて高価格であるとの声も多かったからです。
Fine-tuningコストも引き下げされた事も相まって、本一冊を読み込ませた自分ならではのGPTを用いたアプリケーションも比較的安価に製作可能になりました。

[サンプル事例解説]
例えば、洋書一冊を丸々とGPTに入力して中身を解説してくれるようなアプリを個人で制作することが可能になりました。異なる専門の参考書についても言語問わず同様です。

②Assistants API, GPTs の登場

まず、Assistants API について簡単な解説をします。

Assistants APIとは、乱暴に一言で表現するなら「自分好みのAIアシスタントを作成できる技術」です。まだβ版ですが、既にplaygroundで利用することができます。
ここでは、Code interpreter, Knowledge Retrieval などOpenAIが提供する複数のツールを併用可能になっていることが重要です。

Code Interpreter によってプログラミング言語が分からなくてもコードを生成できることができ、Knowledge Retrieval で大量の情報をいつでも引き出せるようになりました。

[サンプル事例解説]
例えば、中期経営報告書や政府公式のドキュメントなどを読み込ませ、簡単な四則演算などを実行するAIアシスタントを実装するだけで、今後伸びそうな新事業領域の評価や経営分析などは極めて効率的に実施できるでしょう。

➂DALL・E3のConsistency Decoder がオープンソースに

※こちらは、やや技術者向けの内容になっております。

現在、Stable-Diffusion を利用した画像生成サービスが非常に流行しています。OpenAIは"DALL・E3"と呼ばれる同様の画像生成モデルを展開しているのですが、今回その中核部分の技術である Decoder のアーキテクチャとプログラムが公開されました。
このニュースは、Hugging Face などでも取り上げられており画像生成サービスの事業者や開発者には必見の技術です。

黎明期と言われる生成AIのオープンソースでの技術進歩を確実に促進するでしょう。

要約

これまでOpenAIのミッションと主要なDev Dayの発表を振り返ってみました。

本発表から見れるOpenAIのメッセージはシンプルに、「よりより技術を、より安価にたくさんの人に」と感じられたのではないでしょうか。

なぜなら、GPT-4 turboを開発できる組織は地球上で数えられる程度しかないからです。このような"誰でも"試せるような価格で、世界最先端の知に触れられるようにAPIを提供していることは、間違いなく人類の進歩そのものに寄与していると断言できます。

また、OpenAIはノルウェーの人型ロボット開発スタートアップ 1X に約32億円を出資しています。これはつまり、デスクワークのような知的生産だけではなく肉体労働のようなブルーカラーの職種についてもイノベーションを起こそうとしていることに間違いありません。
※サム・アルトマン氏個人ではなく、OpenAIから出資していることが重要かもしれません。

結論

サム・アルトマン氏はかねてより「人類を労働から解放する」ことを目標に掲げていらっしゃいますが、改めてOpenAIのリリースやミッションに注目すると「人間から仕事を奪う」というようなネガティブな社会実現に向けての目的設計は一切なされていません。

むしろ、段階的なリリースや制御実験を通して革新的なテクノロジーを公平かつ安価にOpenにすることで、個人が義務的な労働に割くコストを最小化し、より自己実現に費やせる時間を最大化しようとしているのだと思われます。

サム・アルトマン氏にとってChatGPTとは次世代の労働力であり、ワールドコインは金融的なインフラ、そして核融合発電はエネルギーインフラとして、氏自身の望む理想の社会実現に向けて各レイヤーでの最先端技術を開発しているのかもしれません。

OpenAIが、こういった社会の根幹を成しうるエネルギーや金融などのインフラ接続を前提に考えられているとすると、待ち受けている未来はどのようになるのでしょうか。"AI nature"な新しい世代が社会に出る頃には、果たしてどのような社会基盤が構築されているのでしょうか。

ベーシックインカムが導入され、人間の生活資本がAIエージェントによって成立するエコノミクスによって支えられながら、恒久的なエネルギープラントが構築された社会が21世紀に実現するかもしれません。

OpenAIが目指す人類の未来とは、「人々が、自身の幸福観に基づき自由に生活できる社会」なのではないでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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