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きっちゃんのつぶやき「子どもは正しく間違える!」

 少し古い話なりますが、平成5年(1993年)ぐらいだったと思います。当時、筑波大学の中山和彦先生や東原義訓先生を中心に、コンピュータを活用した教育“CAI(computer-assisted instruction)”の研究が盛んに行われていました。当時は氷上郡でしたが、先生方の指導を受けながら、氷上郡でもCAIに取り組み、個に応じた学習を展開するために、中学校の先生方と教材づくりに明け暮れていました。

 教材づくりにあたっては、何度も筑波大学に通い、指導を仰ぎました。今でも忘れませんが、その時の研修の凄まじさと言ったらどう表現したらいいのでしょうか。寝る時間などありません。子どもたちの誤答を分析しながら、そのつまずきに対して、どのような指導を行えば「わかった!」実感できるのか、何度も意見交換し、試行錯誤しながら教材づくりを行ったのを鮮明に覚えています。本当に地獄の毎日でした(笑)でも、そのときの学びが、後々の私に大きな影響を与えてくれました。

 印象に残っているのは、中山先生の「7+4」の話です。中山先生は、「7+4という計算ですが、11という正解を求められない子どもに多く見られる誤答は何だと思いますか?」と質問されました。何だと思われますか?

 実は、9なんです。文字ではうまく説明できませんが、子どもの気持ちになって、片手の指を折りながら問題を解いてみるとその理由がわります。

 中山先生が言いたかったのは、「その子なりの理屈があって考えているわけで、でたらめをやっているわけではない。」ということです。つまり、子どもは正しく間違えているのです。だから、そこを手がかりに教えなければ、子どもたちの「わかった!」は生まれないのです。一人ひとりの学習状況、つまずきを的確に把握しなければ、その子に合った指導はできないことを実感しました。

 ところで、9と答えた子どもに、間違っているとも合っているとも言わずに、8+4をやらせてみると、どういう答えを出すと思いますか。子どもになって考えてみてください。今、足し算をしました。子どもは、足せば大きくなると思っているのです。ところが、先ほどと同じように指を折っていくと、8+4は8になるのです。「あれ、おかしいぞ。8に4を足したのに、8のままなのがおかしい」と考えるのです。だいたい7+4で9と答えた子の3分の2が、8+4で12と答えます。そういう子にすぐ7+4をやらせると、全員11と答えるのです。

 中山先生は、次のように言われています。「子どもの答えには、正答と誤答の二種類の答えしかないと思っている先生が多いようです。だから、子どもがどういう誤答をしているかということを、あまりチェックされないと思いますが、正答は先生にとっては意味がありません。先生にとって大切なのは、誤答です。子どもの解答は、鏡に映る先生自身の姿だと私は常々言ってきました。自分の教え方の問題点をあからさまに映してくれるのが、子どもの誤答だと思います。ですから、子どもがどういう誤りをしているかを見て、自分の教え方にどういう問題があったかを振り返ることが大切なのです。」

 本当に大切にしたいことだと思いました。子どもたち誰一人も見捨てないようにするためには、子どもの持っている可能性を心から信じること。そして、一人ひとりの子どもが、意欲を持って学習に参加し、成就感や達成感が持てる学習の成立を図ることだと常に思っています。

 学習は、自分がわかるかどうか、ということが勝負なのです。自分の中で「わかってきたな」「少し賢くなったな」と思えるようになることが学ぶことなのだと思います。


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