食と記憶の感性を大切にしたいと決心したガザの友人との再会
リトアニア留学中に機会に恵まれて
ベルギーの大学に1週間の短期留学に参加している。
週末の自由時間を利用して
ガザ地区出身の友人と再会後に
パレスチナの伝統的スイーツである
クナーファを食べた。
その後、完全に涙腺が崩壊し、
危うくスイーツに涙が垂れて
しまうところだった。
この奇妙な出来事から
食と記憶を紐づける感性を
大事にしたいと思った
今回は、この件の言語化に挑戦しようと思う。
彼とは、2017年9月のベルギーにある難民センターで出会った。
私は、ボランティアとして2週間滞在する中で
非常に仲良くなった。
英語、アラビア語に加えて
難民センター滞在中にフランス語を勉強しており
当時、アラビア語やフランス語のみで会話出来ない
難民申請者達の通訳もしてくれた
とても頼りになる社交的な方だ。
ガザから危険な岐路を経てベルギーに
辿り着いた過酷な内容を
卒論に含めさせて頂いたこともあった。
・難民鎖国ニッポンの若者と難民が出会うと
何が起きるのか(2018)31-32頁 2018-ki.pdf (meijigakuin.ac.jp)
6年半ぶりに再会した彼は、
IT会社の技術サポートスタッフとして仕事を始め
パレスチナ出身の女性と結婚
二人の子供を持つ等
様々なライフイベントを経験していた。
お互い再会を喜んだ後
ガザの人道危機に関する悲痛な叫びを聞いた。
詳しくは敢えて聞かなかったが
故郷が変わり果てた惨状になり
彼は、身近な人達を多く失っている。
そんな彼の
「政治的な話は好きではない。自分たちでは
変えられないから。できり限り
自分で変えられることを大事にしたい」
と話していたのが非常に印象的だった。
ガザの事を考えれば考えるほど
気持ちは沈むし、自分ではどうにもならない。
だから、目の前の友人との食事をいかに楽しむか、
自分で変えられる事に重点を置く生き方は
誰しもが学ぶことがあるのではないか。
実際に、2時間弱の再会では
ガザに関することは1割程度の会話量で
残りは今現在のことの近況を冗談を混じえながら
一緒にパレスチナ料理を頬張った。
彼の考え方や6年の時を経て
ベルギーでも様々な困難を1つ1つ
乗り越えていく生き様
ガザの惨状との様々な葛藤
そして気丈に振る舞う姿に
胸を打たれた。
正直に暴露しよう。
もうこの時点で涙腺は
崩壊寸前だった。
この感情は悲しみではなく
彼の逆境を乗り越えるやり抜く力に
心を掴まれたのだ。
パレスチナ料理で涙腺もお腹も
はち切れそうになりながら
「またベルギーで再会しよう」と
伝えて別れた。
その後、アラブ街でスイーツ屋を
見つけて足が止まった。
パレスチナ伝統スイーツである
クナーファを見つけて歓喜を上げた。
6年前パレスチナのナブルスで食べたクナーファは
いまでも鮮明に味を思い出せるほど
衝撃的な美味しさだった。
いまのところ、私が世界で一番好きなスイーツだ。
そして、クナーファを一口一口丁寧に頂いた。
この懐かしの味がトリガーになり
パレスチナで食べた味
ガザやナブルスの過酷な現状
友人の気丈な振る舞い
スイーツ屋のパレスチナ人の想い
パレスチナの平和を願う気持ち
数十秒で
過去の旅の記憶と様々な人の想いが
大波のごとく押し寄せ
気づいたら涙が零れ落ちていた。
この出来事から
食は、人の過去の記憶を掘り起こせる
最強の手段だと感じた。
世の中には自分の中で変えられない事ばかり。
時には暗い気持ちに打ちひしがれる時だってくる。
そんなときは
過去の美味しかった食事を使って
豊かな記憶を思い出そう。
大事な人達と過去の楽しい記憶で
登場した食事をもう一度味わおう。
現状や未来の変えられるない事ではなく
食を通じて過去の懐かしい豊かな記憶を
掘り起こす事は自分でコントロール出来る。
これからは、自分の経験・記憶を食に
紐づる感性を高めたい。
食を通じた「暖かみのある記憶を回想する力」は
未来に対して前向きになれる一歩になるはずだ。
:参考
ナブルスで超有名なクナーファ職人のおじさんが
作ったクナーファは本当に絶品だった。