癒しの海
海面が頭上できらきら光っているのを不思議な気持ちで見上げる。本当に死んだのかとさやかは他人ごとのように思う。
ふと視界に水色の小さな魚たちがたのしそうにゆらゆら泳いでいるのが入ってきた。きらきら光ってすごくきれい。見とれていると、
「ここがいい」
ちょうどさやかの目の前にいた女の子を含めた数人がそう言って、すぐに光に包まれて消えてしまった。
ここは逃げ場も守ってくれる人もいなかった小さい子供がよく選ぶんですよ。きらきらしていて、とても楽しそうでしょう?
案内人だと名乗る人物がいつの間に来たのかとなりから話してかけてくる。
魂が成長するためにひとは一つの人生でいくつかの試練を抱えて生きるんです。成長するためのものですから、普通は乗り越えられる試練しか神は与えないのですが、たまに力が弱りすぎて試練につぶされてしまったり、負の力が暴走してしまって試練が大きくなりすぎることがあるんです。そうなると魂自体の力があまりに弱ってしまって、生まれ変わったとしても生きる力がなくなってしまうのです。そんな弱った魂は海でゆっくりしてもらう事で成長への力を回復してもらうんですよ。
それからあっちの暗がりには近寄らないでくださいね。近くに行くと引きずりこまれてしまいます。ふふ、光あるところには闇がつきものですからね。
さてあなたは何がいいかしら?
ああ、ここは合いそうですね。協力者もいるし自分の身も守れる安心感があるでしょう。大丈夫、もう名前もわからないでしょう?
いってらっしゃい。ゆっくりしておいでなさい。
穏やかな波にイソギンチャクは笑うように水に揺れる。クマノミがその合間を行ったり来たりしている。