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【識者の眼】「新型コロナ対策で残されている課題〜保健所の立場から〜」北村明彦

北村明彦 (八尾市保健所健康まちづくり科学センター総長)
Web医事新報登録日: 2021-10-05

9月の終わりになって第5波がおさまってきた。第5波は子どもから壮年期にかけての若い世代の新型コロナウイルス感染が多数を占め、自宅療養者数が膨れあがる結果となった。若年者でも重症化するケースが世間で認知されるにつれ、自宅療養者から発熱や呼吸苦症状が出現した際の緊急連絡や救急要請が相次いだ。通常の病気では、例えば夜中に緊急事態が発生した場合は、ご本人や家族が夜間診療の病院や消防署に電話をかけるが、新型コロナの場合は、まず患者・家族が保健所に連絡する、あるいは消防署に直接救急車の要請があってもその後に救急隊から保健所に連絡が入る仕組みとなっている。そして、保健所がご本人と連絡をとりながら、コロナ診療病院、往診機関、入院フォローアップセンター、救急隊等と調整しながら、入院か救急外来か往診か経過観察かを判断するという、時間を要する綱渡り的な対応を行っている。幸いなことに私どもの保健所では、優秀な保健師管理職のキーパーソンが中心となって真夜中でもこうした難局にあたっており、これまでに多くの命が救われている。

感染者が急増した際の積極的疫学調査や療養者の健康観察の業務がひっ迫する状況は報道されている通りであり、そのための対策として、国や自治体が懸命になって他部署からの応援や臨時的雇用等によって保健所の人員体制拡充が図られている。しかしながら、自宅療養者からの救急要請に対応できる専門性と機動性を持った新たなキーパーソンの増員は困難である。保健所医師のサポートについても同様であり、私どもの保健所では所長を含む少数の医師が休日もなく個々の事象の最終判断に対応している現状である。

現在、国や都道府県において第6波に向けた医療・療養体制の強化方針が抗体カクテル療法を含めて検討されているが、同療法への適応を含む救急時の搬送について保健所を介さない形で速やかに行うことができないか、是非検討していただきたい課題であると考える。保健所や自治体によって体制が異なっている可能性も考えられることから、国や都道府県レベルで情報を収集、整理して、自治体の規模や地域特性別のベストプラクティスを探っていくことが望まれる。

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