【識者の眼】「第5波における年代別の重症度」和田耕治
和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
Web医事新報登録日: 2021-10-06
10月6日の厚生労働省のアドバイザリーボードにて札幌市と広島県から、第5波における年代別の陽性者数を分母にした、酸素を必要とする中等症Ⅱと重症者の割合が示された(表は札幌市のデータ)。これにはワクチン接種済の場合の結果も示されている。
ざっくり言うと、ワクチンを接種していないと、50代では陽性者の5人に1人、40代では10人に1人、30代では20人に1人、20代では100人に1人が酸素を必要とする中等症Ⅱか重症になったという結果である。もちろん、分母は陽性者数のため、実際には、症状があっても受診しなかったり、非常に軽い症状の人もいるため、感染者数とするとこれより低い割合になるであろうが、ワクチン接種の重症化予防効果などを改めて実感するデータである。
年代別の接種率も自治体から示されるようになり、東京都では、9月30日時点で1回目接種した人の割合は50代で78%、40代で70%、30代で64%、20代で59%だった。これらの人は、既にどこでワクチン接種ができるかもわかっており、2回目も接種してくれると期待している。
現在は感染が落ち着いているが、ハイリスクの場面である飲み会や会食にワクチン未接種のまま参加して感染した際の重症化リスクを市民に周知する必要がある。飲み会に誘うのであれば、ワクチン接種したかどうかを確認したほうが良いとは思うが、差別につながるという指摘もある。知らずに誘った場合のリスクとのバランスは早急に議論が必要である。
ワクチン検査パッケージの議論では、かつては、ワクチン接種の記録か、検査の陰性証明の2択であったが、「ワクチンを接種せずに検査の陰性証明を見せる」という選択肢は、こうした重症化リスクをみていると社会として容認してよいのか。むしろ、ワクチン接種に直前の検査を組み合わせた形でできることを模索することが必要であろう。
ワクチン接種が進み、社会活動が活発になる中で、次の波は、ワクチン接種をしていないミドル世代の重症化が心配される。10月の間にワクチン接種を十分に呼びかけることが市町村や医療者には求められる。
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