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【識者の眼】「ワクチン・検査パッケージの議論について考えること」和田耕治

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
Web医事新報登録日: 2021-10-26

今年の9月3日に政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会から、「必要な感染対策を講じながら、可能な限り制約のない日常生活に徐々に戻していくためには、科学技術の一環としてワクチンと検査を組み合わせた“ワクチン・検査パッケージ”を活用することも重要になる」と示された。国民的議論が呼びかけられ、事業者や市民にそれぞれの場において接種証明や検査結果をもとに何ができるかを考えることが求められてから、2カ月が経とうとしている。筆者としていくつか考えることを記す。

1. 「接種証明+検査」で、できなかったことをできるようにする

この選択肢は、大変だが感染リスクを下げることが可能なので、なかなか再開できないところに使ってはどうだろうか。代表的な例としては、高齢者施設や医療機関に面会に来た人は、その場で迅速抗原キットを使った上で面会する。地域差はあるが、まだ多くの施設では面会自体ができない。社会的意義の高いところをまず再開したい。離島への旅や、特別な活動に参加するなど、非日常への入り口に使うことも想定される。

2. 検査のみ(接種なし)という選択肢は自分を守れないことを伝える

接種証明と陰性証明は同等の意義ではない。一時期は海外で検討されたが、現在の知見では、接種なしの人に感染した場合の重症化リスクを背負わせるのは重たい。今までは大丈夫だったとしても、感染リスクはより高くなる可能性があることは考慮したい。

3. 制度ではなく、一つの手段とする

パッケージは「制度」なのか、それとも「個人のリスクを下げる手段」か。筆者は後者だと考えている。また、この手段に地域の流行を抑えるまでの効果はない。

運用においても、参加者に事前のワクチン接種を呼びかけるだけか、入り口で接種証明を確認するのかなどの違いがある。海外の事例をみていると、ワクチンの効果の減弱などに伴って、接種した人において感染者が増加することは国内でも十分に想定しておく必要がある。そのため、最低限の感染対策は引き続き必要である。

来春ごろに、「ワクチン・検査パッケージは、大失敗」なんて評価がされることがないようにしたい。これは、前向きにできることを増やしていく手段である。今後、接種の確認も不要になるほどワクチン接種率が高くなり、この手段を使う場面が少ないことのほうが全体では成功と言えるかもしれない。

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