『保護者からの質問に自信を持って答える!吃音Q&A』note連載 第5回:小学校・中学校・高校で困る場面
エントリー編
5:小学校・中学校・高校で困る場面
母親
わが子は小学生ですが,本人がどんな場面で困るのか知りたいです。
49名の成人の吃音者に小学生・中学生・高校生の時に「どんな場面で困り,教師に配慮・支援を望んだか?」の調査をしたことがあります。
その結果,音読,発表,劇・学習発表会,自己紹介などがあがりました。
母親
先生や友達との会話に配慮・支援はそこまでいらないのですね。
私の子は小学校1年生ですが,そこまで音読で困っていないようにも思えます。しかし,音読を挙げている割合が一番高いのですね。
同じ小学生でも低学年と高学年では困り感が異なってきます。
小学校高学年では,音読が苦手と感じる子が低学年の子よりいます。
母親
では,音読に対して,どのような配慮・支援をすればよいのでしょうか?
吃音者本人と担任の先生を交え,どうした方がいいのか話し合うべきだとは思いますが,簡単なのは「2人読み」です。
吃音のない子も含め,クラスでの音読を全部「2人読み」にすることで,困り感の解消は容易となります。
母親
毎年,すべての先生が「2人読み」をするように配慮してくれればいいのですが・・・現実には難しいこともありますよね。
現在,子どもは「ことばの教室」に通っていますが,吃音はなかなか治りません。何か目標とすべきことはあるのでしょうかか?
上図の縦軸の割合に注目してください。
音読が苦手な人が一番多いのですが,その割合は約50%です。
つまり,吃音があっても,音読が苦手ではない人が半数いるとも読み取れます。音読が苦手であれば,ことばの教室の通級または言語療法で苦手感が減ることを目標にするといいかと思います。
また,中学生では自己紹介の苦手度が上がりますので,その練習もぜひされてください。
母親
小学生の時は、どのような点に注意が必要でしょうか?
問題が生じやすい場面を知っておくと,子どもとの会話に役立ちます。
1年生では入学式,2年生ではかけ算の九九,3年生ではクラス替え,4年生では2分の1成人式,5年生ではクラス替えと思春期の始まり,6年生では卒業式ですね。
母親
なるほど,その学年独自のイベントでも困ることがあるのですね。
また,すべての学年で共通する問題としては,健康観察,音読,日直の号令,劇や学習発表会,自己紹介,からかい(真似・指摘・笑い),引っ越しなどがあります。
母親
日直の号令や健康観察でも困るのですね。
たまに回ってくる日直の仕事,毎朝の健康観察が困っている子もいます。
一度尋ねてみて,「困っていない」と言えばその言葉を信じていいですし,困っているならば,担任の先生と相談するのが良いと思います。
菊地良和(九州大学病院耳鼻咽喉科 助教)