【書評リレーマラソン⑥】『解剖から理解する頚椎診療』―臨床現場ですぐに役立つ情報が満載
本書を読んで
本書の2人の編者の先生は,2008年に第4回日本脊椎脊髄病学会トラベリングフェローシップにご選出され,2週間の海外研修をともに経験された旧友です。日本の脊椎脊髄外科医がお互いを最も深く知り得るチャンスのひとつがこのトラベリングフェローシップです。私も第5回に和歌山県立医科大学の中川幸洋教授と参加させて頂き,中川先生とは今でも良き旧友です。頚椎疾患の診療と研究に尽力され,かつ息の合った2人がご執筆されたと伺い,この教科書は本物だと思いました。
実際に本書を手に取ってみると,これまでの頚椎疾患に関する教科書とは一味違うと感じます。既知の情報のみならず,臨床現場で2人が実際に感じていることが余すことなく言語化されており,さらには最新の診療情報まで,重要なものがわかりやすく記載されています。既存の教科書は文字が多くなりがちですが,本書は図や表が多く掲載されており,若手医師から脊椎脊髄外科専門医に至るまで大変理解しやすいです。臨床現場ですぐに役立つ情報が満載なので,整形外科だけでなく,脳神経外科の医師にも必携の教科書です。
私の頚椎診療
頚椎診療では,言うまでもなく,病歴を含む問診(自覚症状),神経学的他覚所見,画像診断,保存療法,手術療法などすべてが重要です。この中で私が最も大切にしていることは,治療を開始するまでの診断です。確定診断には画像所見が必要になりますが,私は画像所見を得る前までに病歴を含む問診,自覚症状,ならびに神経学的他覚所見から可能性のあるすべての鑑別診断を極力挙げるように心がけています。
自分の考えた疾患や高位診断を画像で確認し,他の疾患をルールアウトし,最後に確定診断を得ます。もちろん,確定診断を得るには,追加の画像検査や血液検査なども必要になることも少なからずありますし,頚椎疾患の中には,いまだ病態が不明な疾患群も少なくありませんので,日々奮闘しています。
若い先生方には,画像を見る前に患者さんから極力多くの情報を得て,考えられるあらゆる診断を挙げてみることをおすすめ致します。その努力は,きっと新たな疾患・病態や治療法の発見に繋がるでしょう。
書籍概要
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