【書評リレーマラソン】『解剖から理解する頚椎診療』―教科書でありながら、時の経つのを忘れて読破してしまう、1冊の文学書である
本書を読んで
本書は,遠藤健司先生,三原久範先生が日本脊椎脊髄病学会のアジアトラベリングフェローで意気投合し,2012年に共著で『頚椎診療のてびき』を出版したことに端を発しています。その11年後に,最近の疾患概念,診断方法,治療法の変化を盛り込んで,満を持して発刊されたのが本書です。
両先生とは昔から懇意にさせて頂いておりますが,研究や手術に対する熱い思い,さらに,考え方の一貫性は,世界でも随一と思っております。詳細な画像,エコーなどの最近の話題,切れ味鋭いひと口メモなど,ご自身の経験,エビデンスに基づいた内容が多い書籍となっております。
読んでいて一番感じたのは,教科書でありながら,あれよあれよという間に,時の経つのを忘れて読破してしまう,1冊の文学書であるということです。両著者の執筆の魔術がかかった1冊であります。頚椎のスペシャリスト,初心者,多くの読者に裨益すると信じております。
私の頚椎診療
私が頚椎診療で重要視している点は,神経学的所見と,画像所見の一致です。しばしば相違にぶつかりますが,基本的にはその合致が診療の基本となります。
まずは保存療法が優先されますが,難治症例には手術が適応となります。
前方・後方手術の議論は絶えませんが,わが国の手術技術は世界一と思っておりますので,様々な合併症を考慮しながら,加療を進めております。
交通事故後の頚椎捻挫は全世界的な社会問題でしょう。医師・患者ともに,多くの時間を要します。自賠責の報告では,わが国における,画像検査の多発が問題となっており,多くの医療費が費やされております。
また,その結果,遷延する頚部痛を助長しております。いかに,この点を解決するかも今後の課題でしょう。
最近の話題として,エコーを使用したブロックがあります。今後,この領域は必須となると思います。是非とも若手の多くの先生がマスターすべき手技と考えております。
書籍概要
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