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【識者の眼】「新型コロナワクチンブースター接種の前倒しを」小倉和也

小倉和也 (NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)
Web医事新報登録日: 2021-12-06

新型コロナウイルスの再度の感染拡大を受け、世界各国でワクチンのブースター接種が前倒しで進められている。2回接種が必要なワクチンについては、イスラエルなどで終了後7〜8カ月を目安に接種することから始まり、その後多くの国では6カ月後からの接種となっていたが、オミクロン株の出現を受けてイギリスは3カ月、フランスは5カ月など、さらに短縮する動きが見られている。

今回の変異株出現も、国によりワクチン供給と接種率に格差があることが一因と考えられ、ブースター接種を進めるよりは、接種が行き渡らない国への供給を優先するべきだと国連などは主張している。国内においても、未接種者への接種を進めることの優先度がより高いことは間違いない。しかし、海外への支援や未接種者への啓発を進めながらも、国として感染拡大や医療崩壊を防ぐため、ブースター接種も既に決定されているのであれば、現在の状況に合わせ時期を早める検討はすべきではないだろうか。

国は9月の段階で科学的知見や諸外国の対応状況を踏まえてブースターは8カ月後からの接種とし、原稿執筆時(2日)もそれを踏襲する形となっているが、これまでの研究でいずれのワクチンの感染予防効果も一貫して時間とともに低減することが示されており、米国が当初8カ月とした決定も科学的根拠以外の理由によるものであった可能性が高いと理解している。また、その後の知見や海外の状況を踏まえると、現時点では少なくとも6カ月に短縮することが必要ではないだろうか。

特に日本では幸い現在感染状況は落ち着いており、人の流れが多くなる年末年始を挟み年明けからの感染拡大が起こるとしても、6カ月後からの接種を可能にすることで、その前に医療関係者、次に高齢者や施設職員と、これまで優先してきた順に接種を急ぎ、医療機関や施設でのクラスター発生の可能性を減らすことができる。ロジスティックスや行政手続きの問題はあれ、優先順位を明確にしつつ、可能な限り早く進めることが、すべての国民を守る上で有効な措置となるのではなかろうか。

また、現実的に今からできることは限られるかもしれないが、その他の対策も含め協力し合う上で重要なことは、できないことはできない理由も含め率直に説明し、ともに当事者として理解し合いながら協力できる体制をつくることであろう。これまで2年近くの間、どの立場にいる人も懸命に対策をしてきたことで多かれ少なかれ疲れや不満も溜まっている。そんな中で新たな戦いに再度気持ちを奮い立たせることは容易ではないが、これまでの教訓を活かし、お互いができることとできないことを率直に話し合いながら、同じ目的に向かって補い合うことを再度確認した上で、新たな脅威に立ち向かって行きたい。

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