限られた時間のなかで最善の処置をほどこす当直医の先生に救いの手となれば。『当直で役に立つ!シーネ・ギプス固定の基本 虎の巻』著者,野間未知多 先生インタビュー
昨年11月「シーネやギプスを使った整形外傷への初期対応」をまとめた書籍『当直で役に立つ!シーネ・ギプス固定の基本 虎の巻』を刊行しました。おかげさまで短期間での重版出来となっております。
本書をご執筆いただいた,野間未知多 先生(武蔵野赤十字病院 整形外科)に本書に込めた思いや研修医に向けたメッセージなど話をうかがいました。
野間 未知多(のま みちた)先生
武蔵野赤十字病院 整形外科
日本整形外科学会整形外科専門医
日本救急医学会救急科専門医
日本整形外科学会運動器リハビリテーション医
日本整形外科学会脊椎脊髄病医
初期研修後は野戦病院の救命救急医として忙しくも充実した日々を過ごす。それは週5で病院に泊まり,パンツを洗うため週末に帰り,愛車はエンジンをかけないのでバッテリーが腐食するような生活であった。その後,日常診療で特に骨折を診ることが多かったため,サブスペシャリティで骨折治療を身につけるべく整形外科の門戸を叩く。その奥深さにのめり込み,整形外科に籍を移して本腰を入れて研鑽中。
(ちなみに今はちゃんと毎日家に帰ってベッドで寝ているらしい)
本書では,1章「整復総論」,2章「シーネ・ギプスの使い方」,9章-1「足関節・足部の骨折および捻挫」をご担当いただきました。
本書はどんな本なのか「簡単に」教えてください。
Charles Darwinが残した格言の1つに「生き残ることのできる種族は,強いものでも賢いものでもなく,変化に順応したものだ」という言葉があるのですが,いまこの目まぐるしい変化の時代に,骨折保存治療の教科書に求められていることは何だと思いますか?
(ダ,ダーウィン・・・?・・・?)
救急搬送や時間外診療の患者さんが増えて,整形外科ではない当直医の先生が骨折や脱臼を診なくてはいけない状況は当たり前になりましたよね。それから,働き方改革によって定時退勤や有給休暇がとりやすくなって,医局で過ごす時間は減り,他科の先生と一緒に雑談や相談をする機会も減ってきました。
忙しい当直業務のさなかに,専門でもない整形外科学の専門書を読み込む時間や気力はないでしょう。また「先輩の技術を見て盗め」という医術の伝承もなかなかその機会に恵まれなくなったのではないでしょうか。
そうですね。(よかった・・・真面目そうな流れでよかった・・・)
この時世には,文字少なめ写真多めのノウハウ本,できれば手技をネット上の動画で見られるコンテンツが教科書に求められているのではないでしょうか。本書は決して文字数は少なくはないですが,骨折治療の「なんで?」がわかりやすく解説されています。
時間がないときは項目ごとに【患者さんへの説明】と【まとめ】を見ていただければ一目瞭然です。
限られた時間のなかで最善の処置をほどこす当直医の先生に救いの手となれば!と編者の福島成欣 先生(虎の門病院整形外科 医長・脊椎センター センター長)のおもんぱかりにより出版されました。
この本をいまダーウィンが読むことができたなら「コレ,生き残りっ!」と軍配を上げてくれまいか・・・そんな一冊です。
格言好きな野間先生
ありがとうございます・・・!
先生はどのような思いを込めて本書を執筆されましたか?
私はもともと救命救急医として,たくさんの骨折や脱臼の症例を受け持っていました。当時は「麻痺」や「コンパートメント(血行障害)」もたびたび遭遇しましたが,いざそれらの症例を目の前にしたときに,その重症度や緊急度をどう評価すればよいのか,どう対処すればよいのか,どのような経過をたどるのか,知識が少なく漠然とした不安の中で暗中模索してきた経緯があります。
そのため,「麻痺や血行障害を見逃さないための理学所見の取り方」や「緊急度の高い病態の対応と予後」を示して,当直医の先生方の不安を少しでも軽減できたら!という思いを募らせていました。
そんな折に本書を執筆する機会をいただきましたので,「1章-3 整復前後にするべき事:血行・神経評価」と「2章-5 知っておきたい危険な病態」を編者の福島先生にお願いして追加させていただきました。
「本書が当直医の先生方の分かりやすい指針となり,患者さんに対してより適切な処置が施されることを願っています!」
と言っている野間先生。
ズバリ!この本の魅力を教えてください。
何より,実践的な手技を手軽に動画で学べるという点において,本書は他の教科書とは一線を画すと言えるのではないでしょうか。豊富な病態に対する動画が含まれており,どの動画もQRコードで読み取って,直ちに動画サイトへアクセスできます。また,動画はほとんどが2〜3分で構成されており,忙しい当直業務中にみることを想定した形式になっています。
動画は日本医事新報社のサーバーに上げており,QRコードを読み込んでいただくと,該当動画へジャンプいたします。(YouTubeでも閲覧可能です)
本書の使用実例を挙げますね!
まず,診察室で患者さんと一緒にX線を見ながら
「この骨折は整復した方がいいですね!準備しますからお待ちくださいねっ!」と,さも自信ありげに声をかけましょう。
①すかさず機材庫へ駆け込み,シーネを準備しつつ
②機材庫の暗闇に紛れて
③人知れず本書の動画をみながら整復法をイメージしましょう
そして,気持ちの準備が整ったら,再び自信を持って診察室に戻り整復操作に取り掛かりましょう。
最後になりますが,研修医の先生方にメッセージをお願いします。
本書に興味を持ってくださった研修医の先生方をはじめ,読者の皆さん!
患者さんの骨折の痛みに向き合おうとした,その優しさと勤勉さに感服です。学んだことをすぐに,人のために活かすことができる医療人という職業は,そんな皆さんにとっても天職ではないでしょうか。
整形外科学は奥が深く,本書だけではまだまだ骨折をはじめとした整形外科学の魅力を伝えきれていません。
一度,私と一緒に働いてみませんか!?
学ぶ楽しみ,働く面白み,人の役に立てる喜びを一緒に共有しませんか?
私のところにぜひ遊びに来てください!
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おまけ
編者の福島先生ってどんな先生なんですか?
福島先生1)ですか?
Steve Jobsが残した格言の1つに「海軍になるくらいなら,海賊になったほうがいい」という言葉がありますよね? Jobsは,海軍のように規則が多く既定路線の組織に入るよりも,想像と創造によって海賊のような自由な組織を立ち上げることを追い求めたのではないでしょうか。
福島先生はそんな想像力と創造力によって,虎の門病院で脊椎センターを立ち上げました。そして,なんといっても見た目が怖くて海賊みたいですよね?しかもどことなくJobsに似てませんか?
参考
1) https://www.m3.com/clinical/news/875937
m3.comの虎の門病院「初期研修医向け院内合同セミナー」の記事を拝見し,福島先生に本書の編者をお声掛けした背景もあり,編者インタビューをしていただきました。m3さんありがとうございました。
ジョブズ・・・ちなみに野間先生の格言はあるんですか?
そうですね,Martin Luther King, Jrが残した格言の1つに,「もし飛べないなら走ればいい。走れないなら歩けばいい。歩けないなら這っていけばいい。なんとしてでも進むのです」という言葉がありますよね?
根気強く,なんとしてでも問題を解決しようと日々奮闘していますよ!
格言好きな野間先生2
お忙しいなか,ありがとうございました!
(おわり)