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欠けていく身体


手術が終わって主治医に起こされた。
意識は朦朧としていたが「脇のリンパ節の深いところまで摘出した」と言われたので転移が想定より進んでいることと理解した。

右腕の痛みが酷い。点滴の痛み止めを追加してもらって眠ることができた。

それでも、昨年の子宮全摘手術よりは痛くなかった。痛み止めはその一回だけで済んだ。
というのも、その時は気が付かなかったが右の脇あたりが痺れて感覚がないのだ。自分の体の範囲がわからない。

保冷剤を凍らせずに冷やしたものを脇にに当てるよう看護師さんに言われた。顕になったとき、直視できなかったが思った以上に右胸のあった部分がえぐれていた。

なんとなく、全摘したら平らになるのかと思っていたが、平らではなかった。骨と、皮膚。肋骨って意外と凹んでるんだ。そして私の場合は(怖くて画像検索はできないので他のケースはわからない)脇にかけて斜めに傷、脇のギリギリまで切れている。

お腹に縦傷、右胸に斜め傷。子宮がない。右胸もない。女性らしさが失われていく。自分にバツをつけられているように感じた。

こんな状態でも泣かない私はどこかおかしいのかもしれない。

次の日の朝、起き上がって歩けることを確認したらすぐ尿の管と点滴が外れて普通食が出た。こんなに辛い状況なのにごはんを普通に食べてお利口に保冷剤を定期交換しているうえ、朝夜パックまでできている。

手術から2日ほどしてリンパ節郭清した人のための浮腫予防の説明を受けた。もう私は右腕では採血できないし重いものも持てない。ただでさえ血管が取れないのにこれからどうしたら良いのだろう。

主治医が様子を見に来た。恐ろしかったが、私の状況はどうなんでしょうか、ときいてみる。
摘出した腫瘍などの検査結果は出ていないが癌細胞はリンパ節に転移していて血液にも廻っている可能性が高い、抗癌剤、放射線治療、分子標的薬2年、ホルモン剤10年することを勧めることになると思う、とのことだった。

先生が去り、1人になったがそれでも泣きはしなかった。抗癌剤はやりたくないな、髪抜けるの嫌だ、と思いながらその旨を夫に電話で伝え、無のまま過ごした。

暫くして先生が精神状態を気にして手術の合間に見に来てくれたが、日常をするしかないので普通にYouTubeを見ながらスキンケアしていたのを見てすぐ帰って行った。

ドレーンが外れたら、翌日退院できるとのことだったがなかなか外すレベルにならず結局手術から退院まで8日かかったが、個室でのんびりできたのでもう少し入院していたいくらいだった。

入院中は手術直後以外痛みを感じなかったが、退院してからは痺れが少し引いたためか痛みを感じ出した。

はじめは言われた通りに冷蔵庫で冷やした保冷剤を当てていたが、次第に凍らせたものを当てるようになった。

傷から脇、上腕内側がビリビリする。砂利道で自転車で転んだときの擦り傷みたいな、皮膚が細かく傷ついてるような痛み。それが引いたと思ったらぞわぞわして気持ち悪い。やったことはないけど傷口に金属を押し付けられているようなぞわぞわ。

冷やすとそれらが落ち着くので(痛みはロキソニン飲んでも効かない)保冷剤をずっと入れていたが、数日して気づいた。冷たいという感覚がない。

そもそも触られてる感覚があんまりない。限りなく鈍い。身体の側面が膨れ上がっているかんじがして腕がまっすぐ下ろせない。

手術から1ヶ月でようやく痛みとぞわぞわが少なくなって体の側面の感覚もだいぶ戻ってきたが、まだ冷たいのはぼんやりとしか感じない。

手術して次の日から軽いリハビリが始まり、退院してからも自分で少しずつ腕を上げる練習はしている。手術前のようには動かせないし、動かすのは怖い。でも思ったよりは動かせる。お箸を持ってごはんも食べられるし、編み物もできる。指先は問題ない。

私の場合は肘下くらいから上を捻るとか、右腕に体重を乗せたり重いものを持ったりはできない。タイトな服を着る時のような腕の動きは怖くてできない。

リンパ節郭清をするかどうかは手術前にはわからないので、術後1ヶ月でどのくらい回復したか参考になれば。(個人差があるので参考にはならないかもしれませんが)

そして、摘出した癌細胞の病理結果を聞く日がやってきた。(実はまだ病名すらはっきりしていない…)




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