「母のカレーと消防カレー」
昭和が終わる頃、魚屋で生計を立てていた我が家。昼夜を問わず、繁盛していた記憶がある。
その頃、私はカギっ子の小学生。自分で玄関のカギを開け、飼っていた猫に「ただいまー」と言うのが日課だった。
いつも忙しく店で働いていた元気な母は、「半ドン」授業の土曜の朝、「お昼はこれを食べとってね」と優しく私に伝えた。でも、それは残念ながら、出来合いの惣菜やカップ麺だった。
私は、母の美味しいご飯が食べたい、いつもそう願う食べ盛りの少年でありながら、それをねだることができない気の小さ