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アクションを自分ごとにする、「エシカル」という行動指針|「エシカルフード基準」づくりの裏側 vol.3
こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」公式note担当の東樹です。
エシカルフードの有識者12名と対話を重ね、2022年3月30日にラボが発表した「エシカルフード基準」。約1年かけて、「エシカルフード」を定義し、「どの食品がエシカルなのか」を示すための基準を策定しました。
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国内において先進的な取り組みと言える基準の策定にあたって、運営面ではどのような課題や工夫があったのでしょうか。ラボの運営事務局の皆さんに「基準づくりの裏側」をお聞きしていきます。
今回は、ラボリーダーであるCCCMK ホールディングス株式会社の瀧田さんと、株式会社フューチャーセッションズの有福さんへのインタビューをお届けします。「サステナビリティ」「SDGs」「エシカル」といった言葉があちこちで聞かれるようになった昨今ですが、基準を作るにあたって、それぞれの言葉の意味や違いをどのように捉えたのか、お二人の考えを伺いました。
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「エシカル」の意味をどう伝えるか
ー 「サステナビリティ」「SDGs」「エシカル」はそれぞれよく使われるようになってきた言葉ですが、その違いをどのように捉えていらっしゃいますか?
(有福)
まず「SDGs」ですが、「持続可能な開発目標」と訳されるこの言葉は、今の小学生でも学校で習って知っていて、17個の目標について一つずつ説明できるぐらいまで浸透したように思います。
「サステナビリティ」は、「持続可能な社会」や「持続可能な開発」といった言葉に訳されていますが、それがどのような意味を持つのかは、人によってまだまだ捉え方が違うと感じます。
「エシカル」は、「倫理的」といった言葉に訳されたりしますが、そもそもまだ一般的な言葉にはなっていないと思います。そんな中で、たとえば「エシカルファッション」なんかは次第に耳にするようになってきています。
このように、新しい概念が次々に生まれて、なんとなく「地球環境にいいことをしないといけない」という空気感が広がってはいるのですが、それぞれの概念の位置関係がどうなっているかということや、どの概念が一番重要なのかということは、今の時点では一言で説明しづらい状況です。
それでも、あえて私の考えを説明してみると、まず「サステナビリティ」という概念があり、具体的にそれをどう実現していくかを示すものとして「SDGs」という開発目標が出てきます。そして、それらの開発目標を達成するために、人々が価値観や行動を変える際の具体的な指針として「エシカル」がある、と思うんです。
ラボがこれらの概念をどのように捉えていて、その中でも何を大切にしているのかについては、きちんと語れた方がいいだろうと思っています。さらに、これらの新しい概念を、生活者の方々に「自分たちの日常に関わるものだ」と思ってもらえるように発信していきたいですね。そのためには、言葉を少し置き換えるなど、生活者の方々が理解しやすいものにしていくということも大事なのかなと考えています。
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(瀧田)
ラボでは、すでに「エシカルフード基準」を作成しているので、「エシカル」という概念の意味は、基準に則って捉えています。環境、動物、人、社会など、すべてに配慮されている、ということだと定義づけているんです。
これまでは企業のみなさんと対話をする機会が多かったので、基準に則った説明でもよかったのですが、生活者の方々に対しては、その通りにお伝えしても響きにくい場合があります。
今は、「やさしさ」や「お買い物をする時の、新しいものさし」といったキーワードを使って、生活者のみなさんとのコミュニケーションを進めています。ですが、まだ「これだ!」というキーワードは見つけられていないので、これからラボで検討していくことになります。
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「エシカル」と「サステナビリティ」の違いとは
(瀧田)
有福さんが「エシカル」と「サステナビリティ」の違いについて話されていましたが、私も、この2つの言葉はしっかり使いわけたいと考えています。
これまで、たくさんの企業のみなさんと対話をしてきましたが、その中で、「サステナブルは受けいれられても、エシカルは受けいれられない」というご意見をいただくことが度々ありました。「エシカルフードではなくて、サステナブルフードという言い方にしたらいいのでは?」と勧められたこともあります。
ただ、私はその時、「エシカル」を「サステナブル」と言い換えることは絶対にしたくない、と思ったんです。当時はその理由をうまく説明できなかったのですが、最近整理ができてきました。
ー なぜ、言い換えを避けたかったのでしょうか?
(瀧田)
「サステナビリティ」は、ある意味客観的な事象を表す言葉だと思うんです。「誰々が何かを実践した結果、サステナビリティが担保される」といった文脈で使われる言葉じゃないですか。なので、生活者にとっては、自分ごと感が薄い言葉だと言えます。
一方で「エシカル」は、「エシカル消費」のように、主体性のあるアクションと結びついて語られる言葉なんです。約7,000万人のT会員のみなさんを巻き込んでいくにあたっては、ラボの発信を自分ごととして捉えていただく必要があります。その時に使う言葉は「サステナブル」だとやっぱり弱いので、「エシカル」をどうしても使いたかったんです。
改めて振り返ると、「エシカルフード」という言葉のまま進めてきてよかったと、しみじみ思います。
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「エシカル」は新しい行動指針である
ー 有福さんから、「サステナビリティ」「SDGs」「エシカル」の位置関係についてのお話がありましたが、瀧田さんはどのように考えていらっしゃいますか?
(瀧田)
概念の位置関係については、みなさんそれぞれ違った考えをお持ちかもしれません。私の考えをお話すると、まず、「エシカル」と「SDGs」はニアリーイコールであるとは思います。
ただ、「SDGs」はあくまでも2030年までに達成しなければいけない具体的な宣言であり、ゴールです。具体的だからこそ、わかりやすくもあります。達成年限を迎えたら、また次のゴールを設定するという形で延々と続いていきます。そして、その前提にある考え方が「エシカル」なんじゃないかと思うんです。
(有福)
そうですね。ラボのこれまでの発信では、概念の位置関係について明確に述べているものはないですが、私の考えも、瀧田さんの今のお話に近いです。
先程も述べたように、私は、おそらく「サステナビリティ」が一番大きな概念だと思うんです。持続可能な地球環境を維持していかないと、そもそも立ちゆかなくなりますよね、という大きな方向性が「サステナビリティ」という概念で示されていると理解しています。
そして、「サステナビリティ」を具体的にどのように達成するのかを示したのが、「SDGs」という17の開発目標と言えます。
ただ、「サステナビリティ」や「SDGs」という概念は、瀧田さんが言ってくださったように「これを達成すべき」というどこか客観的な概念なんですよね。では「エシカル」は何かというと、達成に向けて具体的に行動するにあたっての、人々の新しい行動指針みたいなものだと思うんです。
「サステナビリティを達成する」「カーボンニュートラルを達成する」「SDGsを達成する」といったように、何かの達成に向かって行動している時に、「エシカル」という行動指針を採用する。そうすることで、やらされ感を持つことなく、「自分は、環境、動物、人、社会などに対してポジティブな活動をしているのだ」ということを、前向きに意識できるのではないでしょうか。
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