「Tカードみんなのエシカルフードラボ」の提言 ーエシカル消費研究会第6回レポート
こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」事務局です。
「Tカードみんなのエシカルフードラボ」では、食の領域を中心とした生活者のエシカル消費に関してさまざまな視点で研究開発し、その成果を発表していく「エシカル消費研究会」を立ち上げました。
2023年3月31日、流通・メーカー・専門家が一堂に会し、第6回の研究会をオンラインで開催しましたので、その様子をお伝えします。
今回で「エシカル消費研究会」の活動は一区切りとなります。その成果物である、食領域におけるエシカル消費のマーケティングフレームを改めてご紹介し、それとともに「Tカードみんなのエシカルフードラボ」の提言を掲載いたします。
前回の様子はこちら
第6回「エシカル消費研究会」の参加企業 ※五十音順
・味の素株式会社
・ハウス食品グループ本社株式会社、ハウス食品株式会社
・株式会社ファミリーマート
・明治ホールディングス株式会社
・中村優吾さん(九州大学大学院システム情報科学研究院 助教)
ほか1社
1.食領域におけるエシカル消費のマーケティングフレーム
前提として、「Tカードみんなのエシカルフードラボ」では、「すごくエシカルな人が100人より、たまにエシカルな人が1000人の方がソーシャルインパクトが大きい」と考えています。イギリスのEthical Consumer Research Associationによると、エシカル先進国のイギリスでも、エシカルなものばかり買っているAlways ethicalな人は数%。また、エシカルなものを買わない・興味がないCan not be ethicalな人は20~30%と言われています。半数以上を占める「時折エシカルなものを買う人(Sometimes ethical)」の行動が巨大なマーケットとなると考えられます。
こうした視点を元に、生活者が「エシカル」について認知してから実践に至るまでの、ステイタスと態度変容モデルをマーケティングフレームとしてまとめました。破線の矢印が態度変容の起こり得るポイントで、態度変容のスイッチになり得ると考えられるものを赤の吹き出しで記載しています。図中のパーセントは2023年1月時点での各ステイタスの構成比を表します。
まず「エシカル」について認知する段階があり、認知している人でも内容まで理解している人、内容はよくわからない不明瞭な人に分かれます。認知状況が理解、不明瞭どちらであってもエシカルを意識して食品を選ぶ、実践している人がいます。さらに、実践者の中でもその頻度により、いつもエシカルな食品を選ぶ人、ときどきエシカルな食品を選ぶ人に分かれます。
それぞれのステイタスを移動する時に態度変容が起こりますが、認知なしから認知ありに至る段階では、メディアや店頭、メーカーの発信がキーポイントになります。また、認知ありの中でも、理解が不明瞭な状態から内容まで知っている状態に至る際には、知的好奇心の刺激がキーポイントになります。実践なしから実践ありに至る段階では、フェアトレード、児童労働などの具体的なイシューの訴求や、自分が普段購入している商品の中にエシカルな商品があることを発見することがキーポイントになります。また、実践している人に対しては、「エシカル」という概念自体の共感がキーポイントとなります。
2.「Tカードみんなのエシカルフードラボ」の提言
上記のマーケティングフレームをふまえ、「Tカードみんなのエシカルフードラボ」として、エシカルフードの普及に向けての提言をまとめました。
「エシカル」の認知率は年々上がっており、飲食物購入時の商品選択でエシカルを意識する消費者は確実に増えています。現在の認知率34.7%に対し、エシカルを意識して商品購入する実践者は15.2%です。仮に認知率が40%まで上がった時に現在と同じ割合で実践者が現れるとすると、その数値は17.5%に達します。この数はイノベーター理論で言うイノベーター、アーリーアダプターを合計した16%を超え、アーリーマジョリティ―への普及が始まった段階と解釈できます。16%を超えると新商品や流行が急激に拡がっていくと言われており、エシカルフード市場においてもその時期が目前に迫っていると考えられます。
そのため、まず認知率を上げて実践者が16%を超える状態を作ることで、エシカルフード市場を形成することが重要と考えられます。
認知率を上げるためには、フードチェーン全体での取り組みやメディアなどの動きも重要となってきます。認知者の理解度を上げていくには、能動的な情報収集の助けとなる情報発信が必要です。その際、自身の生活にどのように関わるのか、自分の生活をより豊かにしたい、よく理解したい、といった欲求とともに、知的好奇心を満たすことが望まれます。
また、情報発信の際、商品単位でエシカルであることを知らせることも有効です。既に購入している商品がエシカルであると知ることで、自身の行動が肯定されていると感じ、その後のリピートやエシカル消費そのものの定着が期待できます。日本の場合、認知しているが実践していない人は、理解が進めば実践する可能性のある浮動層だと考えられるため、どの商品がエシカルかわかれば行動変容に繋がる可能性は期待できます。
さらに、個々のイシューに関して伝えていくことも必要です。現段階では、エシカルに関連するイシューが広く知られている状態ではないため、イシューから伝える必要があると考えられます。また、イシューに関しては「食品ロス」に偏重して意識される傾向があるため、エシカルに関連するイシューを幅広く伝え、それらを「エシカル」という言葉で束ねることで個々の取組の相乗効果に繋げられるのではないでしょうか。取組内容など“事実”を伝えることはウォッシュを防ぐ観点から非常に重要です。その上で、「エシカル」への共感がエシカル消費の理由となり得るため、コミュニケーションの際に「エシカル」という言葉を使うことは有効であると考えられます。
3.エシカル消費研究会 参加者からのコメント
研究会の活動を振り返り、参加者のみなさまからいただいたコメントを紹介いたします。
エシカル消費研究会としての活動は、こちらで一区切りとなります。フードチェーンに関わる方々と共に作成したマーケティングフレームを、今後エシカルフードの普及に向けて活用いただけると幸いです。
これまでのエシカル消費研究会の活動については、こちらのマガジンにまとめています。
※CCCMKホールディングスでは、セキュリティ上厳重に管理された環境のもと、個人を特定できない状態でマーケティング分析を行っております。