観客を信じ切れなかった: しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 感想
これからおじさんが子ども向け映画に対してネタバレ込みでグダグダ言うので、物語を新鮮な気分で楽しみたい人は漫画版を kindle で買って読むと良いっす。
「しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦」を見た。
3Dモデルでバコスコ戦ったり動いて気持ち良いんで結構見応えあったと思うが、インターネッツにはいろいろとネガティブな意見がある。
これらの意見は「社会的弱者にこれ以上 "頑張れ" と要求するのは間違っている」みたいな話で、大体のところラストのひろしの説教に反発している。
この説教シーン、内容自体は個人的にはそんなに悪くなかった。
しかし物語の本題から関連トピックに飛んだ説教っぽいため、物語内で説得力を欠いている感じはある。
そういう Future work みたいな微妙なメッセージ提示をひろしの名言パワーで乗り切ろうとしたのは作り手側の甘えっぽさもあり良くはなかったなと思った。
ひろしが説教をカマすラストシーンまでの流れは漫画版の以下の部分:
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助走も含めた説教の流れとしては大体以下のようになる:
一旦の結論
「たった一人でも友達や仲間がいれば人は変われる」がひとまずの結論として提示される今後の課題
しかし未だに「この国の子供達の未来はお先真っ暗」であるという課題は残っている2 の解決策
2 に対し(お先真っ暗な未来の改善でなく、その中で生きる方法として)「頑張れ」「誰かを幸せにしようと思え!」が提案される。
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この映画はザックリ言うとミツルくんはしんのすけと出会って変わったという話なんで、1 の部分が物語展開上の一旦の結論になるはず。
したがって、(togetter のネガティブ意見の)「弱者男性に救いはない」だの「もうしんちゃんは俺たちの味方じゃなくなったのか…」だの言う人はここを受け入れていない。
しんのすけが味方になって救われた弱者男性の話のはずなんで。
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受け入れられない原因は、急すぎる 2 への話題転換にあると思う。
また、2 -> 3 においても「お先真っ暗」であることについては取り組まず、その中で生きていくというやや消極的な方針での解決策を提示していてシャキッとしない。
大胆な話題転換からのシャキッとしない解決策提示が何故かひろしの名言感演出を伴ってお出しされる不調和が反感を買ったんではないか。
要するに単に出来が悪い。
てか、この説教シーン何回読んでもビュティになってしまう。
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説教の中身について擁護すると、劇中の野原一家の頑張りなんかが「すっごく頑張れる!」の例ですよという話をしているんだと思う。
ミツルくんは「すっごく頑張れる!」人たちをもう見たよね?ミツルくんもやってみよう!みたいな話をしている。
ミツルくんは 2 のお先真っ暗な未来への諦観から悪の方向へ暴走してしまったが、同じような未来が待っていても野原一家は家族のためにすっごく頑張れたんだというわけだ。
好意的に解釈すると映画内で散りばめられていた要素を 1 -> 2 -> 3 ときれいな論理で整理しなおしてくれたと言えなくもない。
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ただ弱者男性とか社会の話をし過ぎると盛り上がりすぎる人たちがインターネッツに多いので、具体的にセリフにする場合はもう少し 2 と 3 について丁寧に仕込んだ方が良かった。
ぶっちゃけ弱者男性について触れる時はインターネッツの機嫌をなだめる必要があって面倒なんで、わざわざ触れない方が良かったのかも。
個人的には観客(ガキも含む)を信じて察させて欲しかった。
最後にひろしが説教しなくてもミツルくんの置かれた状況的に「すっごく頑張る」しかないわけで、ハッピーエンドっぽい雰囲気からするとミツルくんはがんばれるよね、それはしんのすけという友人を得たからかな?と察せる気はする。
察せない人には具体的に説教しても無駄だとも思う。
やはり「救われたミツルくんはこれからどうしていくのか」部分の判断を観客に任せきれない弱さが野原ひろし名言botへの甘えを生み、メッセージを受け入れさせるパワーを欠いてしまったなという感じだ。
そういう意味ではラーメンハゲですか。
今後クレしん映画を観る時には野原ひろしの名言をひとつまみ入れる誘惑に打ち勝てているかに着目するのも面白いなと思った。