見出し画像

この海の塩 (2008)

原題:ملح هذا البحر 〔Milh hadha al-bahr
英題:Salt of This Sea
時間:105分
監督:アンマリー・ジャシル
製作国:パレスチナ自治区🇵🇸/ベルギー🇧🇪/フランス🇫🇷/スペイン🇪🇸/スイス🇨🇭
言語:アラビア語/英語/ヘブライ語

※公式サイト記載の製作年、上映時間は誤り

先日、投稿した第10回宇野港芸術映画座の第一部配信の内、『この海の塩』を先ずは書き留めて置こうと思いつつ、時間ばかりが過ぎた。

世界初のパレスチナ人女性監督、アンマリー・ジャシルの衝撃のデビュー作。カンヌ映画祭ある視点部門正式招待作品。パレスチナのアカデミー賞エントリー作品。

避難民で労働者の両親にニューヨークで育てられたパレスチナ系アメリカ人のソラヤは、家族の故郷パレスチナに戻り、1948年のナクバの際にその地を逃れた祖父の貯金を取り戻そうとするが…。

出典:公式サイト

こんなお話しです。


主人公“ソラヤ”の祖父はパレスチナのヤファでオレンジ農家を営んでいたが1948年のイスラエル独立宣言時にヤファを追われ、ソラヤの両親もレバノンからの難民として家族で米国へ移住した。そしてブルックリン(NY)でソラヤが生まれた。
ソラヤは幼い頃からヤファでの生活を祖父から聞かされて育ったことで、ヤファの通りがわかるほどに地理に明るかった。祖父が他界し、ソラヤは〝あこがれの祖国〟パレスチナの地を訪れた。

二週間の観光査証(ビザ)を取り、空港のあるイスラエルに入国すると入国管理局でアラブ系の名と見た目から質問攻めにあう。入国目的、祖父の名、両親の名、祖父が住んでいた地域、滞在先など、次から次へと職員にたらい回しにされ、同じ質問を尋問の如く繰り返される。

そして祖父から聞かされていた預金を解約に銀行へ赴く。またしてもここでたらい回しをされてしまう。古すぎて口座凍結されていると相手にされない。「支店はイスラエル独立宣言時に閉店した。お金が必要でしたらローンをご利用ください」とまで言われてしまう。

さらに借りたばかりのアパートを家主都合で立ち退き要求される。

レストランで働いているエマッドと知り合い、仕事を斡旋してもらう。
道中では軍に停められ、エマッドは裸にされるがソラヤに対して「心配ない、いつものことだから」と……。

全ての背景には“パレスチナ人”であることが理由だ。

エマッドはカナダへの留学が決まっていたが、またしてもビザが却下されてしまい自棄になる。エマッドの友人マルワンとも知り合い、ソラヤは愚痴をこぼしつつ「銀行が祖父のお金を盗んだのだから返してもらえばいい」と銀行強盗を提案。三人であっさりと銀行強盗は成功し、裏道を使いオマールの壁に向かいイスラエル地区へと走る。許可書がなければどこにも行けないのだ。

ソラヤは祖父がヤファを追われるまで住んでいた家に着くとユダヤ人が住んでおり、「好きなだけここにいてもいいわよ」と言われるが元々は祖父の家なのだ。ソラヤには浜辺で吐いてしまうほどの重みだった。
そして「ここは祖父の家だ。返せ」と暴れるが「国から与えられた家だ」と抗弁される。

やがてソラヤはエマッドと国定公園に指定された戦争跡地であるダワイマの廃屋で暮らそうとするが……。

最悪の出来事に遭遇してしまう。


あとがき


パレスチナの民間人は自ら望まずに住まいを追われた挙げ句に難民となり、海外へ移住せざるを得ないか、指定された自治区への居住を強要された現実がある。さらに追い出した側から差別的な扱いを受けている。
それらを踏まえ、自らの渡航経験を思い出しながら、序盤の入国管理局の対応や銀行でのやり取りまで〝イライラ〟が同化しつつ、銀行強盗に至ればコメディか?と思うくらいだった。
そしてソラヤとエマッドの肉体表現ではない愛の描写が良かった。見えない未来を語り、そして切なく。


いいなと思ったら応援しよう!

K P 6 1  (◀非クリエイター)
感謝します!配信等の購入代金に使わせていただきます!