ガブリエル・ブレア「射精責任」Ejaculate Responsibilityを読んで

「妊娠中絶」の99%が「望まない妊娠」によるもので、そのすべての原因は男性にある。セックスをするから望まない妊娠をするのではない。望まない妊娠は男性が無責任に射精をする場合にのみ起きる。

なお、本を読むにあたり著者も「おことわり」をしているが、著者はシスジェンダー(性自認と生まれつきの性が一致)であり、異性愛者の視点から書かれています、とのこと。内容は当然そういう内容にはなるが、当てはまらない人であっても、社会構造を理解するうえで、又、アメリカの中絶をめぐる議論について理解を深めるうえでも、参考になる情報・視点がたくさん含まれていると思う。

シンプルな生物学的事実

まず、次の生物学的事実に衝撃を受けた。

男性の生殖能力は女性の50倍(※)

女性の体・・・思春期から閉経までの35-40年間、毎月、約24時間(だけ)受精可能な卵子を作り出す。

男性の体・・・思春期から死ぬまでの間、毎日24時間、その精子は生殖能力を持っている。

※思春期12歳、80歳になった男女の生殖能力を比較している。詳細は15P

プラス、次の事実も押さえておく必要がある。

女性の卵子・・・約4週間ごとに一つ、約24時間受精可能
男性の精子・・・一日中放出可能、最長5日間受精可能(長生き)
         卵子を待つことができる

そして、リスクマネジメントの視点から次の事実も極めて大事だ。

女性の排卵・・・正確な予測はできない、コントロールできない、受動的
男性の射精・・・積極的に、その意思により、放出されるもの        
        

そして、次の事実。避妊は女性がするのなのか??男性が楽できるなら、女性が負担し、苦しむのはやむを得ないと思っていないか??

女性による避妊薬・避妊具・・・入手が難しく、つかいにくい、副作用、肉体的・精神的負担が大きい。ピルは、セックスの直前に利用するものではない。毎日服用し続ける必要があるもの。
※なお、女性の避妊薬や避妊具の入手を困難にするために積極的に活動している人々の存在に言及される。プロチョイス派(女性の選択権を重視する立場)とプロライフ派(胎児の生命尊重を重視する立場)の対立だ。

男性による避妊具・・・入手しやすい。精管結紮術(パイプカット)という選択肢も現実的な可能性も紹介される。卵管結紮術より安く、痛みを少なく、安全、お手軽。
※ただ、精管結紮術は復元可能であるとしているが、日本での術式や実例は実際のところどうなっているのだろう??

また、女性がセックスを楽しんでも、望まない妊娠の原因にはならない。あくまでも、男性がセックスを楽しんで、無責任に射精をしたときに望まない妊娠が起きる。セックスが同意の上でであるとしても、射精をするのは、あくまでも男性の意思である。

精子は危険だ
男性は、自らの肉体、性欲を管理できる

アメリカは家父長制社会である
男女の力の差は簡単に暴力につながる。
男性が他の男性に恐怖を感じることがあるでしょう。

性教育の重要性、正しい知識と望ましい考え方で、避妊具・避妊術等に対するスティグマを乗り越えていくことが大切だ。


ほんとうに他にもたくさん考えさせられることが書かれている。

おすすめできる本である。






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