空を見上げて
小さい頃から空を見上げるのが好きでした
僅かに残っている小さい頃の記憶に
空を見上げていた自分を覚えています
夜の住宅街。
車を停めて買い物袋を持った母と、
家へと続く駐車場を歩く。
「お母さん!
今日の月、赤くてなんか怖いね · · ·」
「ほんとだね、ちょっと不気味だね」
本当に他愛もない会話だが、
なぜかあの日の光景が忘れられない。
今まで何度も月を見てきましたが、
あの日のように真っ赤に染まった月には
未だに出会えていません。
おばあちゃんの家には屋上にベンチがあって、
2人で星空を見上げることもありました。
新聞に流星群のお知らせがあると
お互いに知らせ合って、
離れていても必ず感想を言い合いました。
地元を離れて、都会に出てくると
どこを見ても星が見当たらなくて、
月すらも大きなビルの影に隠れていました。
嫌なこと、辛いことがあると
自然と空を見上げています。
それなのに、何も見えない。
心の支えが無くなった気がしました。
家族や友人に会えないのと同じくらい、
月や星が見えないのは
私にとってとても辛いことでした。
ビルの影からたまに月が見えた日は
心が軽くなりました。
私を支えてくれていた影武者はお月様でした