ピープルとわたし
早速ですが、People In The Box というバンドをご存知でしょうか。
出会いは大学、軽音楽部。
コピバンで9mm Parabellum Bulletやcinema staffが人気だった『残響RECORD』に興味を持って、ピープルインザボックス?なんか聞いたことあるな?と思って数曲聞いてみたことが出会い。
わたしは『新市街』で、この人達の箱庭に捕らえられてしまった。
一生リピートしても飽きないくらい気持ちいいメロディだなぁと思いながら1曲リピートを続けていた。実際にそれは三日くらいで満足したけれど、何年経っても気持ちよく聞き続けている。
この曲の特に気持ちいいポイントは
「クライマックス感」「コーラス」「❝ばん❞」の3つだろうか。
クライマックス感
1:26~ 『ぜんまい モーター シリンダー 不揃いのボルト』
という歌詞から始まるクライマックス感。ギターの歪んだキューンという音、このドラマティックな感じに高揚する!
それに追随するように地を這うベースとフロアタム(低い音の太鼓)。
音階がひとつ上がって迫りくるようなベースとタムタム(高い音の太鼓)!
コーラス
1:40~ 『オルゴール鳴り出した どうぞ そこは舞台さ』
先ほどの緊迫感から解放された世界。オルゴールのようなギター。主旋律がないような高い音のコーラスと、低い声の甘言を囁くような歌声。
緊張と脱力、きもちがいい。
1:57~ 間奏 ここもいいんです。一緒に走るギターとベースが気持ちいい!!!
❝ばん❞
2:49~ 『~~~ オルゴール鳴り出した どうぞ 引き金をひけ』からの『❝ばん❞』。
この腑抜けたというか緊張感のない『❝ばん❞』である。解放された世界から現実に引き戻されるような「ばん」。このギャップにも引き込まれる。
もしよかったら、この3ポイントを念頭に
再度きいてみていただけると嬉しいです。
ピープルは北九州市出身の3ピースバンドなんだけれど、3人とは思えない重みと圧力。
多分、ベースの厚みが大きい役割を果たしているんだと思う。隙がない。
緻密で正確で精巧なドラムに、テクニカルかつ繊細なギター。優しく語るような、力強く主義主張を謳うような、透明感のあるボーカル。混じり合うと引き込まれる、閉じ込められる。
音楽に隙があってはならない。
スカスカと隙がある音は物足りなさを感じてしまう。四角の中に高音・中音域・低音で埋め尽くしていくような作業。ここに空間があっては違和感を感じてしまう。(隙をうまいこと扱う人はすごいなと思う)
また、技術面でも隙があると、劣って見えてしまう。聞き手は引き付けられない。
そして、歌っている内容に隙があっても、興ざめしてしまう。聞き手は見透かしてしまう。
彼らの音楽は自由に鳴り響いているようで、隙なく、針の穴に糸を通すようなか細さでられているのである。とわたしは感じる。
その紡がれる音楽を通してさまざまな感覚を与えられる。感動、不安、哀愁、寂しさ、切なさ、息苦しさ、楽しさ。神秘的なまである。鮮やかな音、暗い音、明る音、汚い音も不協和音も使う。さまざまな音で彩られる。
People In The Boxは絵画のような世界。聞く絵画。
ここでわたしのすきな曲をいくつか。
・新市街(アルバム『Famili Record』より)
上記の通り。気持ちよさを味わっていただきたい!
・火曜日/空室(『Ghost Apple』より)
こちらは1枚のアルバムを通して1作品になっている。そのため、前曲からがらりと曲調が変わって引き込まれる。
描写のみで雰囲気が伝わる。カラッとした絶望
・水曜日/密室(『Ghost Apple』より)
このクラブのリーダーは神ではないのさ!遊園地のような楽しさ。狂気
・木曜日/寝室(『Ghost Apple』より)
ギターとベースとドラムがユニゾンする部分がいい、崩れ落ちる"現実"。
・土曜日/待合室(『Ghost Apple』より)
ベースの和音が気持ちよく、「あと1錠だけ」という悲しさが際立つ。
・月(アルバム『Things Discovered』より)
やめよう、ドライフラワーに水をあげるのは という歌詞がグッときた。
・レントゲン(アルバム『Bird Hotel』より)
サビ前の迫力を楽しんでいただきたい。ベースが強めで好きな曲。
・ニムロッド(アルバム『Citizen Soul』より)
ライブで盛り上がる1曲。これも技術の高さが伺える。
・笛吹き男(アルバム『Lovely Taboos』より)
切ないメロディが中毒性高い。愛しき禁忌とあるように、意味深な歌詞。
・市民(アルバム『Lovely Taboos』より)
攻撃的なベースが猛烈にカッコイイ!血の味がするような暴動?どういうことだ?
・犬猫芝居(アルバム『Frog Queen』より)
感傷的な1曲。生きたまま死んだふたりになってみたいというキラーフレーズ。
・ペーパートリップ(アルバム『Frog Queen』より)
疾走感がきもちよい!終わりのはじまりを見たがる曲です。
・八月(アルバム『Ave Materia』より)
生死を歌った曲みたいです。静かながら激しく訴えかける内容に聞こえる。
・球体(アルバム『Ave Materia』より)
ピープルの技術の高さ味わえる1曲。快い高まりを感じる一方でシニカルな歌詞。
People In The Boxの曲は、抽象的。掴めないのに、強烈にこちらへ訴えかけてくる。それは政治的なことか、世間のことか、自分自身のことか。何を読み取ればいいのか明確でないのに、何かが伝わる。だが言語化することはできない。頭や心をすっとばして魂にメッセージを伝えてくるバンド。言葉選びに繊細なのに、言葉にとらわれていない情報、コミュニケーションの本質。魂に訴えるそれは、きっと作詞をする波多野さんが繊細で力強い方だからだろうな、と思う。
また、People In The Boxはアートワークも美しい。
ぜひアルバムのジャケットまで堪能していただきたい。Ghost Appleは血液・毛細血管を彷彿とさせ、グロテスクながら美しいジャケットです。
※ちなみに自慢なのですが、Ghost Appleを会場で購入し、ベースの健太さんとギターボーカルの波多野さんにサインをいただき、その後、近くの公園で泣き崩れた経験があります。人生で初めてサインというものをもらった!
さて、このバンド。
なんか聞いたことあるな?という方もいらっしゃるかもしれない。
有名どころでいえば、
アニメ『東京喰種トーキョーグール』のED曲だろうか。
世界観に忠実。うねるベースはこの世界の失望、淡々と進むドラムはこの世界の無慈悲さ。
でも・・・でも・・・もっと他の曲も聞いてほしい!と思った。
なので、アニメで知った方にはぜひ上記や他の曲もお探しになっていただきたいです。たぶんこのダークで透明な1曲がお気に召したのなら、他の作品もお好きだと思います。
東京喰種つながりで言えば、別のアーティストさんですが
オストライヒの『無能』、『楽園の君』もおすすめです。
複雑なメロディ、曲展開が面白い。不協和音を音楽にする技量。
cinema staff 辻さんの歌唱力の高さに驚いた。リズムのとり方、発声の力強さ、高音の伸び、表現力。
ギターはシネマスタッフらしさがちらほら伺える。
多分、ハイスイノナサもシネマも元残響レコードだから、なんか響くものがあっただろうな。
People In The Box 、ハマれば深みにとらえられてしまう魅力的なバンド。
では、他の曲でも
・クライマックス感
・コーラス
・現実に引き戻される感覚
をお楽しみいただければと思います!ご清聴、ありがとうございました。
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