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【読切/未完】デス・家族会議

夫と息子と一緒に入った部屋は一面真っ白で、中央に薄型テレビが1台、長テーブルがひとつとイスが3つセッティングされていた。

「一体何なの……ここ」
『まあ、とりあえず座ろう。話はそれからだ』

夫が寝起きで乱れた髪と喪服のようなスーツのシワを直しながら言う。息子のほうはうつむいたままで無言だ。全員が席に着くとテーブルの奥のテレビが突然つく。

《……お集まりいただき誠に申し訳ありません。突然ではありますが、今から皆さんには家族会議をしてもらいます》

画面に映し出されたのはカーキ色のフードを目深に被った男だった。顔には部屋と同じ白一色の目鼻のない仮面を着けている。

「ちょ、ちょっと待って。私、今仕事中だから職場に連絡だけ入れてもいいかしら」
《いえ、この家族会議が終わるまで一切の連絡手段はこちらから遮断しているので無理かと》
「え……っ?」

私は困惑し、テレビ画面の男と夫、息子を順に見る。

「ねえこれ、どういうこと……?2人とも何か知ってたら説明して」
『いや、私も何がなんだか。急に呼び出されたものでね』
「ぼ、僕もだよ母さん」

夫と息子はそう言って目を伏せてしまう。

《もう少し説明が必要のようですね。この家族会議の理由はお分かりですか……【小松亜紀】さん》

唐突にテレビ画面の男が私の名前を呼んだので驚いて振りむく。

「な、なんで私の名前知ってるの。そんなの……知るわけないでしょう」
《そうですか。では、改めて理由をお伝えしましょう。あなたがそちらの……小松透様を殺した件についてじっくり話し合っていただきます》

私は夫を見た。なぜ【あのこと】が公になっているのだろう?あれは私と彼だけの秘密だったはず、考えられるのは……。

「……あなた、まさか誰かに喋ったの……?」
『いいや。誰にも言ってない』
「じ、じゃあ……どうして他の人が知ってるのよ⁈」

私はますます困惑した。夫の顔を見て嘘をついていないのを確かめる。

《それはですね、我々のほうで旦那さんの記憶を覗かせてもらったからですよ》
「記憶を?ああ……そうよね。今、あなた体が機械で脳だけ生身だものね。そういうことができるんだっけ」

私は夫を再び見る。すっかり忘れていた。私が彼を【こんな体】にしてしまったのだということを。

《……はい、大変申し訳ありません。修理時にどうしても必要な作業でしたので》
「そう、別に謝らなくてもいいの。それで、彼の記憶……どこまで見たのかしら」
《かなり鮮明に記録されていましたが、あなたが透様を殺害している部分のみデータが不鮮明でしたのでぜひ、何があったのか直接お話を伺えればと》

私はテレビ画面から目を離し、向かいに座る夫と息子に向き直る。

「佑。あなたは知ってたの、このこと」
「うん……真木さんから聞いた。ねえ母さん、父さんを殺したなんて……嘘だよね?」

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