第24回忘バワンドロライ「聖なる」

聖なる場所、聖地。
みなさんの心の聖地は何ですか?
ワタシの聖地は葵ちゃんです、そこでのワタシは乙女です。
他の人には触れられないアンタッチャブルな場所を人は聖地と呼ぶ…んだと思ってたら「聖地巡礼」って言葉あるじゃん!めっさタッチできるやん、みんなベタベタ触りまくりやん!
まぁ「聖地」の解釈違いってことで。

昭和の少年向けラブコメなんかには「聖地女子トイレ」みたいな描かれ方がありました、多分。あったんじゃないかな。あったような気がする。「男のいないその場所で女子たちはどんな会話をしてるのか!」「気になる。だが踏み入ることはできない」って感じですかね。
でも少女向けラブコメに「聖地男子トイレ」といった描写はなかった気がします。確かに“成績優秀でテニス部キャプテンもしていてジーンズ姿が最高にイカす生徒会長”がトイレに行ってる姿なんか想像したくないですもんね。

でも実際、男子トイレはどうなっているのか。聖地なのか。
先日、中学2年生の長男が「なぁなぁ」と学校での様子を話してくれました。

「高崎っているじゃん?」
「決して“おとなしい”とか“マジメ”とは言われない高崎くん?」
「そう、クラスで1番オモロい高崎。アイツさぁ学校でトイレに行くときは絶対に誰かを誘って連れションするんだよね」
「ふーん」
「で、アイツ最近ちん毛が生えてきたらしくってさぁ」

母を驚かせようとしてるんじゃありません。
中二男子にとって「ちん毛」は日常語です。
「今日、英語の単語テストじゃん!」とか
「持久走しんどいな~」
といった言葉と同じところにあるんです、ちん毛。とってもフラット。

「アイツ他人がオシッコしてるときは必ず覗いてくるのに、自分にちん毛が生えてきたら恥ずかしいからってトイレットペーパーの芯で隠してオシッコしてんの。芯につっこんで。しかもその芯は何度か再利用されてて、環境にやさしい」

情報量が多すぎました。
ニュースでたまに聞く「恐ろしい犯罪をする中学生」もリアルですがこっちの中学生もリアルです。環境にやさしい中学生です。

「1度、見られないように個室に入ったんだけどさ、鍵をかけた瞬間にみんなが一斉にウワーッと扉によじ登ったんだよ。一斉に!爆笑っしょ?1人でトイレに行けば誰にも見られないんだけど学校のトイレは怖いからムリだって。まぁアイツが他人のを除かなきゃ済む話なんだけどね、フツーみんな見ないから」

時おりポテチを噴き出し思い出し笑いをしながらそんな話をしてくれました。そして落ち着いたらソファに寝転んできめつを読みだしました。リアル中学生。男子トイレは「聖地」でした。アンタッチャブルでした。中学生だったアナタが恋い焦がれていた彼も学校のトイレではペーパーの芯で隠しながらオシッコをしていたんです。青春の思い出が鮮やかによみがえりますよね。

さて夏の公式戦の真っ只中の小手指野球部の聖地といえば更衣室。
居残り練習を終えた天才たちも数ヶ月前まではそんな中学生でした。
「あっついな、着替えるだけで汗が吹き出んぞ」
「仕方ないよね、私立なら更衣室にもエアコンあるんだろうけど…」
「これが名門を蹴って都立で戦うってこと…いたっ、ちょ、葵ちゃん俺まで蹴るのやめて!」
「くっそー、パンツん中が蒸れてチンコかゆくなってきたぜ!」
普段は金髪をハーフアップなんかにしてカッコつけてますがただの野球小僧です。
下ネタを言ってるつもりはありません、思ったことを口にしているだけです。
素直さが売りのスーパープレイヤーです。
「おい! 俺のチンコかゆ過ぎだろっ!!」

しかし男子だからといって全員がそんな会話をするワケではありません。
うちの次男は幼稚園のころ「ゆうくんがいつもちんちん出して追いかけてくるの。気持ち悪いの、ママ何とかして」と泣きついてきたことがあります。そして今でもそんな単語はほとんど口にしません。興味がないわけではなさそうなので、いわゆるムッツリですね。
千早くんもそんなタイプじゃないですか?
脳筋チームメイトの
「ヤマおまえチンコかゆくなんねぇの?」
なんてどうしようもないセリフに眉をひそめてたりします。
その様子を見た葵ちゃん「千早どうした?腹でも痛いのか?」と聞いちゃいます。まさか自分のチンコ発言が嫌がられてるなんて思ってませんから。
「いえ別に」
以前の千早くんならメガネを押し上げながらそう呟くだけでした。が最近の千早くんは違います。オラオラです。傷つく前に逃げ出していた千早くんはもういません。
「かゆみが止まんねェ! キンカンつけたら死ぬよな?やめた方がいいよな? 何とかなんねーかよ?!」と騒ぎ、ヤマちゃんに「キンカンはやめた方がいいよ」となだめられ圭ちゃんには「チンコかゆ男~」と笑われている葵ちゃんのパンツに狙いを定め、かゆみ止めスプレーを噴射する野球小僧。それが千早瞬平です。倒れこみ身悶えする藤堂葵。その背中に
「何とかしてあげたんですよ」
と八重歯を見せて笑う性格の悪さが千早くんです。

「クッソ、千早のヤツ…」
熱い痛みを覚えながら帰路についた藤堂、お風呂に入って気がつきました。
「虫に刺されとるやんけ!」
そりゃ痒いはずです。
風呂あがりにソ~ッと、他の部分には触れないようにキンカンをつけようとしたその瞬間、
「にぃーに!」
妹ちゃんが体当たりをかましました。
再び声も出せずに身悶える葵ちゃん。
床に転がっているキンカンと、のたうってる弟を見たおねーさんは全てを理解します。

「オマエ毎年それやってんな。毎年毎年忘れ過ぎじゃね?」

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