第15回忘バワンドロライ「熱」
盛り上がってますね、熱闘甲子園!!
夏だー!夏がやってきたぞー!!
今年から「アルプス席で応援するユニフォーム姿の名もなき球児に思いを馳せて涙する忘バファン」が甲子園の風物詩になりました。ムンムンおじさんたちは熱中症対策されてますか? いつ頃から“日射病”って言葉は消えちゃったんでしょうね。
暑い。暑い夏です。THE⭐夏休みです。
今は野球漬けの夏休みを過ごしている小手指メンバーも子どものころはアウトドアな夏を満喫してました。学校の友だちが途中までしか登れない公園の大木のてっぺんまで行ったり、鳩や泳いでるフナを素手で捕まえたり、大人の背丈よりも高い塀の上で猫と競争をしたり。調子こいてジャングルジムの上で片足立ちしたときは思いっきり落ちてしまいましたが、かすり傷だけですんでました。バッテリーの2人はもちろん、葵ちゃんは中学2年生で、千早くんだって同じころに辞めたのに帝徳からA推薦を受けたほどですから、その身体能力は「地元じゃ負け知らず」だったに違いありません。ヤマちゃんだって弱小シニアとはいえ、お山の大将してたんですから一目置かれていたはずです。
千早くんは、もし野球熱がそこまでじゃなかったら中学受験とかしてましたよね、きっと。たぶん。
「こんなに野球漬けじゃ塾に行かせる時間もないなぁ」
「まさかこんなに夢中になるなんてね」
「まぁ自分の得意なことを伸ばすのはいいことだ、瞬平なら中学高校に入ってからでも間に合うだろう」
「そうね、瞬発力はアナタ以上だものね」
なんて上流なご両親の会話が聞こえてきそうです。
そんな ”猛暑日でも外遊び” とは真逆の、ある意味ごくごくフツーの彼らはどんな熱い夏休みも過ごしてたんでしょう。
そう、小手指の真の一般人。クソみたいな先輩ズです。
連載当初はヤマちゃんのことを「フツー代表」だと思っていたんですが、天才たちから信頼される堅実さに優しさ、惜しまない努力。そして実力。全然フツーじゃありませんでした。
一般人っていうのは、「いい感じで過ごしていきたい、努力はしたくない。しんどいのはイヤだ。根性なんかない。でも人生にちょっとしたストーリーがあったらなぁ。努力はイヤだ」っていう怠惰なもんです。え?違います?こんなに怠惰なの私だけ?でもちょっと誉められるとウレシくてその気になっちゃう。まさにクソみたらいな先輩ズです。
長い夏休み。小学生くっすんは、ゲームは1日1時間までと決められてます。学校の宿題も「めんどくせー」なんて反抗期っぽい言葉は口にするものの、先生に怒られたくないのでしっかりこなしています。読書感想文だって、女子に「えー、そんな本ダメじゃん」とか言われるマンガか小説かわからいようなビミョーなものは選びません。文部省推薦シールの貼ってある文句なしの児童文学です。字だって案外キレイです。そんなときに押し入れの奥から見つけだしてきました。お父さんが昔読んでいた「ハイティーンブギ」。元々ロマンチストですからね、すぐに感情移入しちゃいます。「くっ…オトナなんて…」と圧倒的な庇護の下で熱い涙を流し、友だちの前で「俺、バイク欲しいんだよな」なんて言っちゃって、ジュースのストローを人差し指と中指ではさんでエアを吸い込んだりします。そして細ーくそのエアを吐き出して「やべ、ついクセで」とか言っちゃってました。もう書いてるだけで恥ずかしい!でも友だちだって似たり寄ったりですからね。「わかるーw」なんて返して同じことしてます。ロマンチストってこんなんでしたっけ?
ハイティーンブギを捨てられないお父さんの配偶者ですから、お母さんのバイブルは「ホットロード」です。
「いいねコレ」と息子が言ったから7月6日は映画記念日。親子で実写ホットロードを観ました。能年玲奈サイコー!激マブ!! そして中学校ではルーキーズに感動して野球を始めます。なんてロマンチスト!
つまりベースボールショップのクソメガネは葵ちゃんを、こういう感じに認識したんでしょうね。確かに向いてる方向だけは似ているような気がしなくもなくはない感じもなくなくなくなくない?
そしてその頃、みったんとも会いました。
みったんもマジメな子です。だからこそ、くっすんのロマンチストな部分と気が合いました。二人でハンバーガーを食べながらストローでエア呼吸です。エア呼吸しまくりましたね。何ならエア呼吸するためにハンバーガーを食べに行ってたぐらいです。くっすんはロマンチストが過ぎるところがあるので時々めんどくさいんですが、みったんはあんまり気にしません。どちらかというと無神経な方ですから。
智将が国都くんを“無神経なタイプ”と評したのとはまったく別の無神経です。あの称賛の“無神経”ではなく、女子に嫌われる方の“無神経”です。「ちょっとみたらいー、机のプリント片付けなよ。きたないよ」と言われても「そうか?」と放っておく無神経さです。
ただ、辛抱強い! 根気がある!!
小学校に入学して初めての夏休み、初めての夏休みの宿題。初めての“自由研究”。“研究”という言葉に熱くなったみったん、責任を持って幼虫を育て始めました。カブトムシやアゲハ蝶を幼虫から育てる、まぁポピュラーな自由研究です。みったんは辛抱強い男の子です。夏休みが終わるまで毎日同じ、土の下にいる幼虫の絵をかきました。
「来年の夏休みにはカブトムシになってるかな、楽しみだね✨」
同じ絵が続く観察日記に、先生がコメントを書いてくれました。
「え?来年?」
1年生みったん、あわてて先生の元に行きました。
「先生、あれ来年じゃないよ。だってセミだもん」
辛抱強くて根気のあるみったん、地面の下に7年いるセミの幼虫を夏休みの宿題に選択しちゃってました。当然2年生になっても同じ自由研究、3年生でも4年生でも。5年生にもなるとウワサに上がります。「みたらいの自由研究って毎年おんなじらしいぜ」「マジか」「七年ウイスキー」「卒業してもまだ幼虫かよ」
ま、気にしませんけどね。そんなうわさ話が耳に入ってるのか入ってないのか、頭をボリボリかいてます。
幼虫を抱えたまま中学生になりました。
そして出会いました。━━出会ってしまった!
クソみたいフレンドシップ!!
みたらいの幼虫はセミになれたのか。
何も言わないみったんなのでそれはわかりませんが、同じ小学校だった同級生たちは、みたらいと仲良くしているクソの姿を見て「カマキリ?!あの幼虫は、カマキリだったんだ…」と、昔ばなしのような“ちょっと不思議なお話”と納得して、幼虫のことは忘れていきました。
ちなみに桐島センパイは土曜日は必ず、吉本新喜劇に爆笑しながら口からお昼のチャーハンをボロボロこぼしてました。そしてお母さんに「なぁなぁ、大きなったら野球選手と吉本のどっちがいいと思う?」と熱い質問をし、「どっちやろなぁ、お母さんわからんわ」とテキトーに流されてました。
桐島さんがサラサラヘアになる前の、坊主頭のころのお話…
補足
ちょっと確認したらセミって7年も地下生活してないんですって。
種類にもよるけど1-2年とか書いますよ?
おいおいおいおいおい! 初耳やがな知らんがな!!