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第二十七回 花将軍

狼牙華連隊とは学校長推薦で徽宗女子高等学校に入学し素養は開花したものの、素行不良により華道部から追放された生徒を生徒会が管理、監督する事で公正に導くという名目で設立された公正プロジェクトであるが、実際は生徒会の意に反する団体を武力を持って制圧する武闘派集団である。
アカリこと秦山明(しんざん あかり)は、その風貌と憑依霊の脅威から入隊後三日で総長にの仕上がった荒くれ者である。
「秦山明は何処だ?」高山廉が何時もの態度で狼牙華連隊の輪に入りアカリを探している。
「あぁ?何だテメェ!総長を呼び捨てとは、いい度胸してんなぁ!」
典型的な喧嘩口調で隊員達は立ち上がり、廉を取り囲む。
「フン!私に何かあったら、生徒会が黙っていないぞ。」「んだとゴルァ!」「止めな!アタイはココだヨ!」態度を改めない廉に拳を振り上げた隊員を静止する秦山明の姿は廉の二倍はあるかと言う大女で、眉間に皺を寄せ、ギザ歯を剥いた狼の様な風貌だ。
「生徒会長から話は聞いてるヨ。褐色の留学生を梁山華道部から、引き離せば良いんだネ!?」口調は意外にも優しそうだが、低音で唸る様で脅威を感じる。
「その通りだ。ただし手は出すなよ!あくまで怖がらせて梁山華道部に近付けないようにするだけだ。」「分かってるヨ。」明はそう言うとゆっくりと廉に背を向け去って行った。明の後ろ姿を見送る廉の背中に一筋、冷たい汗が流れた。
今日は水曜日。用呉羽は校内の奉仕活動に駆り出されていた。
「ふぅ。むしっても、むしってもキリがない。先週取った所なのに、なんで復活してんのよ?この雑草達は!」
「呉羽さん。前に取った時に根を残したです!」
「宋蘭殿の言う通りでゴザル!根こそぎ取らないと何回でも復活するでゴザルよ!」
「もー嫌ー!」悲鳴を上げる呉羽とは逆に江戸S宋蘭と天王洲燕は生き生きと草むしりをしている。
そこに「ねぇ?アンタら、ここで何してるの?」と声をかけて来たのは秦山明だった。
「え?えっと、除草活動です。」宋蘭が恐る恐る答えると「活動計画書、生徒会に出してるの?」やんわりとした口調だが声色にドスがきいているので逆に脅威を感じる質問が頭の上で響く。「カツドウケイカクショ?何ですか?ソレは?」言葉の意味を飲み込めない宋蘭。「校内の草を勝手に無視ったら器物破損だヨ!草むしりしますって活動計画書を出さなきゃダメだヨ!」「そんな…社会福祉同好会の活動は、生徒会にも認められてるですよ!」
「じゃあ方針が変わったんだヨ!とにかく今はダメだヨ!」
「そんな…。」
「ちょっと!黙って聞いてれば活動計画書なんてドコの同好会もその都度なんて出してないでしょ!」聞くに絶えず呉羽が食ってかかる。
「アンタ誰ヨ?」明が目を細める。
「アタシは梁山華道部マネージャーの用呉羽よ!」呉羽がそう名乗った瞬間、明の口元が緩んだ。
「華道部のアンタが何で草むしりしてるの?それもルール違反だヨ!そこの小さいのも、そうなの?だったら大問題だヨ!」
一瞬「しまった!」と呉羽は思った。活動計画書は言い掛かりとしても、自分や燕は社会福祉同好会の入会手続きなどしていない。呉羽は宋蘭を梁山華道部に引き入れる為。燕は呉羽に対する好意だけで奉仕活動に参加していた。明は生徒会から前もって情報提供されて、その時期を伺っていたのだ。
「活動範囲を超えた行為だヨ!社会福祉同好会も!梁山華道部も!さぁ、どうしようネェ!」口調は相変わらずだが、その声はまるで暗雲の中を響き渡る雷鳴の様だ。
ただの草むしりに活動範囲も何もないが、明の声に完全に気圧された三人は言葉を失い立ち尽くす…っと「あれぇ?アカリちゃんじゃないの!どうしたの?校内で会うなんて珍しいわねー!」と緊張感のない声が聞こえた。
明が振り返ると、そこには弓道の道着を着たボーイッシュな少女の姿があった。
「…ハナかヨ。」
「んー?まさか、弱いものイジメなんかしてないわよねー!?」
弓道少女は眉をひそめ、ニヒルな笑顔で明を睨み付けた!



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