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第三十一話 千年記憶

「コレって、もしかしてキミちゃん⁉︎」

呉羽が目を丸くして花のswiPhoneを覗き込む。
「あぁ、そう言えば貴方は孫さんの事を、そう呼ぶのだったわね。そう。これは孫勝公さんからのメッセージよ。このメッセージが送られた日にアタシは小李広の記憶を突然取り戻したわ。そして、その日依頼、貴方たちを陰から見守っていた…もっとも、ずっとストーカーしてた訳じゃなくて、貴方たちが何か行動を起こした時に様子を見に行ってたレベルだけどね。」
花はそう言うと悪戯っぽく笑った。
「以前から感じていた視線は貴女だったのか!」学究がそう呟くと「ガッきゅん知ってたの?なんで言ってくれなかったの!?」と呉羽いつものように食ってかかる。
「誰かに見られていると感じるようになったのは、三猿娘が入部した後だから、さほど気にもしていなかっただけだ。」学究は訝しげに答えた。
「正確には燕ちゃん(三猿娘)が部室を訪れる、ちょっと前辺りかな。その頃、アタシも弓道部の部長とバチバチしててイラついてたのよね。そんな時に記憶を取り戻したせいで弓道部の事なんて、正直どうでも良くなってて…。」
「それで、こんな無茶苦茶な作戦を思いついたと…。」
「あはは。大正解。って事で、アタシ達と貴方達は見知った仲って事!」

再び時間が進み退部騒動が決着した後の生徒会室前の廊下で和かに談話をしながら帰路に着く呉羽一行。

「ね!上手くいったでしょ!」満足顔の花。
「確かに秦山さんの退学は免れたけど、ますます梁山華道部の風当たりが強くなった気がする。」青ざめる呉羽。
「まぁ、彼奴らとの犬猿の仲は昨日今日始まった事では、なかろうて。」と学究。
「ねぇ?アタイはどうすれば良いのだヨ?」
「ん?」
秦山明の言葉に全員が足を止める。
「明ちゃん?どうすればって、そりゃ梁山華道部に…。」栄宝が声をかけると「だって、今更どのツラ下げてアンタらと仲良くしろって言うんだヨ?そこのちびっ子達もアタイに目を合わせてくれないし…。」
「いや、それは単にアナタのお顔が怖いからでゴザって…。」
「あぁ?」燕の一言に明の顔が、より一層険しくなる。
一件落着と思っていた矢先の当事者からの問題提起に一同が沈黙すると「明サンは、霹靂火の真名をまだ思い出してないデスか?」と宋蘭が問いかけた。
「シンメイ?何だヨそれ?」
「え?霹靂火の本当の名前を知らないの?霹靂火ってのは綽名で本当の名前は、シ…!?」呉羽が真名を告げようとした途端、口が動かなくなった。
冷たい視線を感じ、その方向を向くと学究が者凄い形相で睨んでいた。
学究の霊力が呉羽の口を塞いでいるのは、明らかだった。
「韻を踏んでて本人が知った時に何の冗談だよって言いそうだね!」花が学究にウインクして促すと学究は鼻息を荒くして「醜女よ!梁山華道部に来い!さすれば、いずれ全てが分かる時が来る!誰もお前を嫌ってなどいない!千年の記憶が我らを導いたのだ!我らは集い、同じ道筋へと進む同志だ…オホン!そう新部長殿は申しておるのだ。そうであろう新部長!?」取り乱したように捲し立てた挙句、急に冷静になり説得に転ずる学究。
学究の促しに宋蘭はニコリと笑顔になり「軍師サマの言う通りデス。明サン梁山華道部に来てください。ワタシ達は千年の記憶の元に集いし同志デス。」と明の手を取った。
「アタイは此処に居ていいのかヨ。アンタ達はアタイを受け入れてくれるのかヨ…。」鬼の目にも涙。
強面の秦山明の眼に光るモノが流れた。

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