なにわ男子「I know」―なにわ男子的セクシーへの挑戦
そうだ、私はなにわ担だった。
2022年3月。
テレビと言えば「ゴッドタン」「あちこちオードリー」しか見ない生活をしていた私は、スポット的にそのラインナップに加わった「黄金の定食」により、見事大橋担になっていた。
お決まりの、かわいいとパフォーマンス能力のギャップにやられたパターンだ。
その1年後、「だが、情熱はある」での衝撃の出会いにより、あっさり海人に熱量を持って行かれた。
今でも大橋担ではあると思ってる。
まぁ熱量の差はホットミルクとマグマぐらいは…うん…
しかし、2023.7.12リリースのなにわ男子2ndアルバム「POPMALL」により、自分は少なくとも「ミュージシャン・なにわ男子」が大好きだということを再確認した。
1stアルバム「1st Love」も名盤だと思ったし、「こんなに好きなアルバムのツアーは二度とないだろうに、逃してしまった…」と悲しんだ。
「POPMALL」は、それを軽々越えてきた。
今回は、「POPMALL」が名盤であるという盲目的主張と、その核だと私だけが言い張っている2曲「I know」「ねぇ」のうち、「I know」について書いていきたい。「ねぇ」については後日(書けたら)書きたい。
基本このnoteは海人担しか読んでないと思うので、なにわの記事となるといよいよ誰も読まないと思う。
普段は長いテキストかつ込み入った話になるときは、ちょいちょいふざけてギリ読んでもらえそうな体裁にするが、今回はマジで誰も読まなさそうなので、ふざけ無しでいく。
なにわ男子を拡張するための「POPMALL」
まず「1st Love」は、シングル「初心LOVE」の延長上にある、なにわ男子の名刺代わりのアルバムだったといえる。
ジャケット・タイトル・曲のラインナップ。
すべてがなにわ男子のキュートさを強調するものだった。
そしてリード曲かつ大トリがジュニア時代からの名曲「ダイヤモンドスマイル」。Disc2にはジュニア時代の全楽曲(これはジャニーズでは珍しくないことなのか?)。
「僕たちはこういうことをやってきて、今はこういうことをやっています」という、なにわ男子のポートフォリオだった。
しかし今回の「POPMALL」はあきらかに性質が違う。メンバーも、宣伝時に「ショッピングモールのようにいろいろな曲が詰まっている(意訳)」と語っていた通り、なにわ男子の幅を広げ、どういった方向性のことができるかを提示するものになっている。
また、制作側としてもなにわ男子の可能性を模索するためのアルバムとなったのではないかと思う。
「なにわ男子」という音楽的制約
誤解を恐れずに言う。
なにわ男子というグループは、音楽的にかなり制約が多いグループだと思う。
「大半のメンバーの声がかわいい」という、めちゃくちゃかわいい理由によるものだ。
メンバー7人それぞれの声質を一言で表すと、
西畑大吾(かなりかわいい)
大西流星(めちゃくちゃかわいい)
道枝駿佑(一番プレーン)
髙橋恭平(セクシーファニー)
長尾謙杜(かわいい)
藤原丈一郎(デロ甘い)
大橋和也(少年)
である。
正直、道枝駿佑と長尾謙杜以外は他グループであれば「飛び道具」的に使える声質だ。これはアイドルとしてかなりの武器なのでめちゃくちゃほめている。
飛び道具が7人中5人を占めるとなると、なかなか話は大変になってくる。
幸い「かわいい」という方向性が一致しているので、「1st Love」のコンセプトなら非常に作りやすかっただろう。
しかし、いつまでもかわいい一本槍では戦えない。
このタイミングで「POPMALL」のような、なにわ男子の武器を増やすためのアルバムが生まれたのは必然と言える。
挑戦曲、「I know」
その中で、最も今のなにわ男子にとって挑戦的だったのではないかと私が思うのが、5曲目「I know」だ。
激しいダンスナンバー「LAI-LA-LA」ではないのか、と言われそうだが、「LAI-LA-LA」はなにわ男子のキャリア上今やらなければいけないこと、であり、プラスアルファの挑戦曲とは少し意味合いが異なる。
※ここから先は音楽的な知識ゼロのオタクの主張として読んでほしい。
「I know」は、編曲にギミックなし、ストレートに大人っぽく仕上げなければならない曲だ。手元にアルバムがある人はざっと見返してほしいが、「I know」以外は王道アイドル曲か、シティポップだったりツイスト調だったり、そもそもの曲のコンセプトが強い曲がほとんどだと思う。
ストレートに大人っぽく。これはなにわ男子にとってはかなり難問だったはずだ。何しろ前述のとおり、素の声にセクシーさがある声質のメンバーは高橋恭平だけだ。
一応断っておくが、他のメンバーもセクシーな歌声を出せるのは知っている。ジャニーズ外も含めた全アーティストと比較したとき、セクシー寄りと言えるのは高橋恭平だ、ということが言いたい。
なにわ男子陣営はこの制約を、「夢オチ」と「歌割り」の2点で突破した。
振って振って振って夢オチ
夢オチであることを先にばらしてしまうのは非常に心苦しいが、もう言っちゃったものは仕方ない。
ストーリーとしてはボーイミーツガールもので、Bメロからサビにかけて口説き続け(もっと表現はなかったのか)、最後ぐっと引き寄せて瞼を閉じ…
たところで目が覚める。
基本この繰り返しである。口説く→目覚める→口説く→目覚める。
情緒のないまとめで申し訳ない。
編曲や、イントロのユニゾン、コーラスの入れ方、メンバーの声色、すべてが大人っぽさセクシーさを目指しているのはわかる。
しかし、いくつセクシーな表現を重ねても、最終的にこの歌の中で男(の子)はキスすら出来ていないのである。なんと初心な。
曲調大人っぽいのに結局初心、というバランスによって、「今のなにわ男子にできるセクシー大人っぽい曲」を成立させている。
上手い。
なおシングル「Special kiss」で(キスを重ねちゃうんだ!あのなにわちゃんが!!)と私はびっくりした。なにわ担も、最終的にキスできるボーイミーツガールなど端から期待していないのだ。たぶん。
少年・大橋和也とセクシー担当・高橋恭平
そして歌割り。
多人数グループアイドルの妙と言える歌割りが、この曲ではかなり効いている。
まず、歌詞全体を見るとわかるが、かなり散文的というか、短いフレーズの掛け合いが多い。そしてそれを曲に乗せると、短いフレーズをそれぞれ別のメンバーに振っているため、よりこまぎれな言葉たちで構成されている印象になる。
その中で、聴かせたい部分は一連の文章にし、1人のメンバーが通して歌う、という歌割りになっている。
Aメロ、西畑大吾パート
”思った以上に 引っ張り込まれている
キッカケが動機 初っ端 I’m going down”
や、2番の同じくAメロ藤原丈一郎パートも同じだ。
曲のストーリー上耳に入れる必要がある部分は細かく割らずに、というところか。
そして、「キラーフレーズ」と言える、ストーリー上も重要かつ「口説き文句」にあたる部分は、大橋和也と高橋恭平がかなり印象的に歌いこなしている。
”Understand?? 強引にでも帰さないよ”(1番Bメロ 大橋和也)
”Have a date どんなサインも逃さないよ”(2番Bメロ 高橋恭平)
ただし前述のとおり、この2人の声質は、少年的な大橋和也と、セクシー寄りな高橋恭平とで、グループ内では対極にある。
同じキラーフレーズを歌うにしても、曲中での配置にそれぞれの役割が見える。
1番Bメロ、曲があったまりかけたところで大橋和也がめちゃかっこいい口説き文句を歌う。大橋担としては「キャー!!(CVトム・ブラウン布川)」だが、冷静に聴くと「男のコが頑張って口説いててかわいいな…」になるのである。
もう26歳になるのに男のコとか言ってごめんね。でも声質もキャラクターも完全に少年なんだよな大橋君は…そこがいいんだけどね。
脱線したが、クールになりそうなところでギリ可愛さを出してなにわ男子のフィールドに戻す、というバランスを取っているのだ。
対して2番Bメロ高橋恭平パートは、しっかりセクシーである。
1番は出会いの衝撃という感じだったが、2番の方が女(の子)への想いや期待感、上品な欲情の描写が増えており、その世界に没入させるためかと。
落ちサビの「なにわ」感とラストの余韻
落ちサビは安定の大橋和也担当パートだが、これも単純に歌唱力で振り分けたというよりは、再度少年的な歌声を効かせ、あくまで「なにわ男子の」大人曲、という念押し的な意味もあるのではないかと思う。
いつもの歌割りであれば、おそらく落ちサビはもう1人いる。
そして最後、
”そっと瞼閉じたところで目が覚めた”
高橋恭平の歌声で終わる。一応その後ユニゾンはあるが、ストーリーとしてはここでおしまいだ。
「覚めた~」の音の引っ張り方が、絶妙にセクシーで、これもよく効いている。
かわいさとセクシーの絶妙なバランスで展開してきて、最後にグッとセクシーな余韻を残す。
高橋恭平はこういう役割が明確なパートを、しっかり打ち返すのが本当に上手いと思う。
以前SixTONESANNで恭平がゲスト出演した際、森本慎太郎と田中樹と3人で「初心LOVE」の「ねえ、今もだよ」誰が一番うまく言えるか選手権みたいな流れ(ざっくり)になったときの、恭平の「ねえ、今もだよ」はあっぱれだった。
一瞬で王子様になっていた。
本人は「気恥ずかしいので、いつもの高橋恭平とは別の高橋恭平を作って言っている」と語っていたし、実際そうしたのだろうが、そんな小手先では出来ないくらいうまかったあれは。
多分、めちゃくちゃ彼は勘がいい。
作り手からしたら、どんどんパートを振りたくなるタイプだと思う。
12曲目「ねぇ」でもやはり対極な声色の橋橋コンビが曲の要になっているが、それはまた後日。