プログ(リレー小説③)
「チンタラ...」
神様いらっしゃるならこんな私ですが応答願います。emergencyとなります。
「銀魂...」
私の今の現状とダンサーインザダークのビョーク、どちらの方が理不尽な目に合っているでしょうか。emergency ワンツー。
「金玉...」
嗚呼、ビョークですか。そうですか。
そうやって直ぐ人と人を比べる貴方は何様なのでしょうか?Hey!YO!聞こえてっかブラザー!
emergency!check it out Yo men!!!!
「新じゃがっ...」
理不尽な目に合うのはいつだって私です。
そうです。いつだって私なのです。
小学3年生の頃、長い休みに入る直前の日に
上履きを持ち帰るために各々のロッカーに入れておいた上履き袋を取り出し上履きを入れて持ち帰るのですが
その日の全校生徒の殆どが持ち帰ったであろう上履きを私は持ち帰る事はしませんでした。
上履き袋を失くしたのか。
否、上履き袋じゃ無くされたのかもしれませぬな。
私のロッカーにあったソレは何も入っていないはずなのに何故だかイースト菌よろしくパンパンに膨れ上がっていたのです。
外国人のオチンチンが大きくなった時のジーンズの股間回りかと言わんばかりに膨らんだ上履き袋。
宝箱を開けるような気持ちにこそ無論なれませんでしたが恐る恐るチャックを開けると、
自らの鼻腔から前頭洞にまで突き刺した
饐えた臭気に一瞬で脳がゆっくり揺れ出したのです。
そこに広がっていましたのを覚えている限りラインアップしますと
ロールキャベツ、ミートスパゲティ、酢豚のパイン、鮭の塩焼き、鯖の塩焼き、レーズンパン、ししゃもの塩焼き、豆ご飯、食べかけのメロンが無残な姿で発見されました。
姿形が解り辛くなっている物もあり、その殆どが胃液を認知する事なく配合された吐瀉物のような物になっていました。
私の一点の汚れ無き真白なキャンバスにグロテスクが描かれてしまった瞬間です。
この残虐性極まりない犯行に及んだのは同じクラスの女子の渡辺さんでした。
渡辺さんはお河童頭にふっくらとした体型で無口の少し知恵遅れの子でした。
先生からの事情聴取に渡辺容疑者は
「嫌いな...食べ物を残したかったの。隠し...隠したかったの。」と供述しました。
クラスの窓側の後ろの方に席があった渡辺さんの近くにたまたまあった私のロッカーにあった上履き袋が被害にあったのです。
己の胃袋にブツを入れずソレらを
親が買ってくれたお気に入りの激動戦士エメレンジャーがプリントされた私の上履き袋にブチ込んでいたのです。それを見つめ、
エメレンジャーのオープニングテーマが私の脳内で勝手にオルゴールバージョンにアレンジされゆっくり流れだしたのは言うまでもありません。
そして教室を飛び出しすぐに残骸を廊下の洗い場の横にあるゴミ箱という名の棺桶に葬り
洗い場で上履き袋を濡らし自らの手で洗いましたが
何故だかメロンの匂いだけはなかなか落ちないような気がしました。
水洗いフィーチャリングメロンフレイバーの渋とさにやられ、最初に鼻腔を突き抜けた臭いの記憶がメロンの匂いに段々と上書きされてしまい、そこからメロンを見るとその事を思い出すようになり
メロンが食べられない小生になってしまいました。
直接の被害者である上に、その事件の第一発見者となってしまった自分が喰らった理不尽は何事にも変えがたい一瞬の苦しみでありました。
そう、いつだって理不尽は一瞬をついて巡ってくるのです。
学生が吹き出していたちぢれゲロを一点に見つめ、
糞にもならないトラウマを思い出してしまいました。
今コンビニにいるだけの私の目の前に降りかかろうとしている不幸だって突然の事だし、当然私はその突然に応えなければならないのが運命である。
全知全能の神よ、不全である私にどうか力を。
emergency emergency emergency....
言葉通りの苦しい時の神頼みをした私は
ちぢれゲロを見つめたまま時が止まっているように感じました。
4文字の韻を踏む中年は私の目の前で白目を剥きだし「新じゃが」の
「あ」の口で止まっており橙色のような血飛沫が顔の額に飛び散っていたのです。
私は一瞬の事で訳がわかりませんでしたが身体の一部がドクドクと異様に熱くなっている事に気付きました。
おじさんに刃物か何かで腹部を刺されたのか?
突如の理不尽は人の想像から冷静さを奪います。
気を失うにはまだ早い、全てを見てから気を失おうと恐る恐るゆっくり下を見つめると、
なんと私の下半身のアレ、そうアレがです。あろう事かユニクロで3枚セット1000円で買ったボクサーパンツの股間部分を突き抜け、
ユニクロで2000円で買ったチノパンの股間部分を突き抜け、
中年の男の下腹部をも突き抜けていたのです。
何かに一点集中したかのように無になっていたが
「合宿免許WAO!で免許を取ろう!」という店内放送の音がフェードインしてくると共に後ろからようやく声が聞こえてきた。
「...いよーーー!!!!うぇいよー!!!!!だ...大丈夫ですか!?あの、大丈夫ですか!?」
「この声は....UZI?」
両手に持てるだけのオレンジ色のカラーボールを持ったコンビニの店員のお兄さんはそう、
フリースタイルダンジョンという冠のレギュラーを自らの不祥事で失ったラッパーのUZI
では勿論なく普通のお兄さんでした。