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めぐる めぐる

のたりのたりのなまけもの 2021.11.1

家族でコスタリカに暮らし始めて、
今日でちょうど二ヶ月だ。

大学院が始まり、
日常というリズムを刻む毎日。

朝は目覚ましを五時半にセットするも、
眠たくてなかなか起きれずに、
いつも六時頃になってしまう。

まずは外の椅子に腰掛けて、
鳥の声を聴きながら、珈琲を飲む。
そして、
課題をやったり、ものを書いたり、
散歩をしたり、写真を撮ったりする。
私にとってとても大切な、
心を循環させる神聖な時間だ。

しばらくすると坊と夫が起きて朝ごはんを食べる。
私の朝ごはんは夫特製の命のスープ。
鳥の骨のお出汁と、野菜の旨味が体に染み込む。
一日の滋養を頂く命のスープ。

八時前になると、
坊がガッコウに持っていくオモチャを選んで、
小さなバックパックに入れる。

「のびたくんいってきまーす!」
(パンプキン、おばけ、おんなのこ、ピンクのいぬ、げどうしゅう、と呼び名は日替わり)
と、坊の方が先に出発。

小さな椅子に、わくわく顔の坊をのせて、坂を下る自転車。
どんどん小さくなっていく坊と夫二人の姿を見送ったら、
私も支度をして家を出る。
「モチート、いってきまーす」

八時十分のバスに乗って、
鈴生りの実にどんどん赤をのせていくコーヒーの木を眺めながら、
うねうね山道を登る。

八時半過ぎにキャンパスに到着。
カフェテリアで大きなマグカップにたっぷり入った珈琲を買って、
テラスにぶら下がっているバナナを一本もぎ取って、教室に向かう。

八時四十五分から授業が始まる。
この三週間はジェンダーのクラスだ。

足の横にちょこんと座っている犬のテディを、
たまになでなでしたりしながら、
濃厚な三時間を過ごす。

ランチはほぼ毎日カフェテリアで買う。
カフェテリアのごはんはどれも美味しくて、
サラダ、フルーツ、ご飯、お肉のおかず、お野菜のおかず、と、山盛りフルメニューで飲み物もついて、3000コロン。大体5ドルくらいだ。
日替わりメニューで、色々なラテン料理を試せるので、
毎日の楽しみの一つでもある。

午後は一時十五分から国連システムの授業が九十分。
本来なら一日一クラスしかないのだけど、
コロナで学期が始まるのが一ヶ月遅れたために、
イレギュラーなスケジュールになったそうだ。
一日二クラスは相当辛いけど、
今週でそれは終わりなのでなんとか乗り切るしかない。

帰りのバスは、三時か四時。
その日の気分で決める。

火曜日は授業外スペイン語のクラスをとっている。
語学習得の大変さと楽しさを久しぶりに思い出す、
ちょっとした息抜きになる楽しい二時間だ。

四時半に坊のお迎えに行って、
お家に帰ってきたら、
近所の小さなお店にジュースを買いに行ったり、
テレビでアニメを見たり、
おもちゃで遊んだり、
だらだらしたり、
やらなきゃいけないことや、やりたいことを、
頭の片隅に押しやる。

六時頃に夫が作ってくれる美味しい夕ご飯をいただき、
お腹いっぱいになったら、ゴロンとしたいのを我慢して、
のろのろと次の日のリーディングや課題に取り掛かる。
しかし、疲れ果てて出来ない時もかなり多い。

しばらくしたら、
シャワーを嫌がる坊をその気にさせるため、
ぬらりひょんがおるよ。鬼が外の椅子に座っとるよ。などと、
私と夫の小芝居が始まる。
やりすぎたら大泣きするし、ふざけすぎたら楽しんでシャワーに入らない。
演技の加減がなかなか難しい。
それにしても、オバケの力は偉大だ。いつまで通用するかわからないが、
まだしばらくはこれでいけそうだ。

シャワーが終わったら、歯磨きをして、電気を消して、九時ごろベッドへ。

ここでも、おばけが再登場することが多々ある。

そして私も九時半頃には一緒に寝落ちして、
そのまま日が昇るまで、ぐぅすかぴぃ。

こうして一日が終わり
そしてまた一日が始まる。

知らない土地に移り住み、
いつの間にか暮らしを作り上げ、
いつの間にか当たり前の日常を生きている。

この世界中のいろんなところで、
一人一人の暮らしがあって、
みんなそれぞれ
泣いたり笑ったり落ちんだりわくわくしながら、
一日一日が紡がれいく。

それは至って当たり前で、
ごく普通のことなんだけど、
みんなそうやって毎日を生きていて、
それがこの世界を作っているんだと思うと、
その儚さや、美しさや、力強さや、切なさで、
なんだか胸がいっぱいになる。

うろこ雲が広がる十一月の朝の空

近所の木々は実を落とし、初めて見る花をつけている

コスタリカの長い雨がもうすぐ終わるのだろうか

雨上がりの空が、茜色から群青色へ刻一刻と夜に向かっていく

日が巡る 季節が巡る

今日も私の一日が終わる

明日も私の一日が始まる


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