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英語ができないくせに、LAで個展を開催出来たわけ

前回のnoteに記載した、バンクーバーでの自作のフライヤー配りに関連する話だが、ロサンゼルスのエコパークという地域にあるHANCHOLOというジュエリーブティックで1ヶ月間、個展を開催させてもらったことがある。

今でこそエコパークエリアはおしゃれエリアとして認知されていると聞くが、当時(10年程前)のエコパークは、地元のタトゥーだらけの奴ら(複数人)の情報だと、パーク内にある池が汚いので、年1回役場の人間が掃除をするそうなのだが、その際に死体が数体出てくるのだと聞かされ、思いのほかビクビクしながら過ごした記憶がある。

もしかしたらジョークをそのまま鵜呑みにしており、一人でビクビクしていただけかもしれないが・・・。

そんな事はさておき、なぜ英語もろくにしゃべれない僕がバンクーバーで自作のフライヤーを配っていたのに、ロサンゼルスで個展を開く運びになったのかを今回はシェアしたいと思う。

毎度のことで、もうなんども読んでいただいている方からすると「うるせぇよ」と言いたくなるだろうが、ポイントはやはり恥をかいたからだ。もっと言ってしまえば、恥さえも恐れなかったからだと思う。

きっかけは、ある日いつもと同じようにフライヤーを路上で配っていた。道行く人は興味を示すも、この日はなかなか手に取ってくれなかった。それでもめげずに配り続けていると、190cmくらいはある長身でタトゥーだらけのイカつい白人のにいちゃんがフライヤーを、半ばむしり取るように僕の手から奪っていった。もちろんtake freeだし、持っていってほしいから配っていたのだが、さすがにマナーがあるだろ(怒)とおもって睨んだが、振り向きもせずに歩き去っていった。

こういうことはたまにある。いちいち気にしていたらイライラが募るばかりで、配るのをやめて気晴らしにスケボーをしに行きたい衝動にかられるので、ここはグッとこらえ、自分のなかで「気にしなーい、気にしなーい」と唱え気持ちを沈静化させた。

事前と受け取ってくれる人も増え、

「誰が書いたの?」

「どんな時にこういうアイデアは閃くの?」

など、よくある質問を受けていると、向こうの方にさっきのムカつく男の姿を発見!コノヤロー!アジア人なめんなよ!とばかりに睨んでいると、どうやらこちらに向かってくる。内心(このガタイと闘ったら即やられるな、やべーぞ)思っていたが、顔はいつでもかかってこい顏で相手を凝視していた。

男は僕の方に寄ってくると

"Who drew this?" (これ、誰が描いたんだ?)

と聞いてきた。僕だよと答えると、他の絵を見せてほしいと言われたので、一人で臨戦態勢に入っていた僕は、なんだか拍子抜けしてしまい、余計に足がガクガクしながらやっとのことでリュックからスケッチブックを取り出し、手渡した。

やつは真剣に、描かれた原画を見ながら突然、

「俺はロブ。お前、これからロスに来れるか?」

と聞いてきたのだ。

内心(いけるかっ!)と思ったが、そこは冷静に理由を尋ねた。

すると、HANCHOLOという店が月に1度アーティストを選定し、壁全体をそのアーティストに貸し出し、ギャラリーを開催しているとのこと。僕の絵はやつ(ロブ)曰く、HANCHOLOのオーナーも気にいるだろうとのこと。ロブはこれからロサンゼルスに戻る予定だから、そのタイミングで一緒に来ないか?ということだった。

正直、疑った。昔から、うまい話には裏があるのもだ。怪しい。しかもあんなに礼儀のなっていない取り方をされて、こんなやつ信用していいのか?という葛藤があった。

しかし、一方で、こんなチャンス滅多にない。路上でフライヤーを配らなかったらこんな話もなかったし、人生一度きりだ、挑戦しないでどうする。という思いもあった。

とにかく、今の今で「はい、行きましょう!」と言えるほど資金面も含め準備不足だったため、ロブに1ヶ月待ってほしいと頼んだ。その一ヶ月で、資金を工面するからと。

連絡先を聞き、1ヶ月、とにかく働いた。朝から夕方まで毎日ペインターの仕事をして、工事現場をペンキまみれになりながら這いずり回った。

そして、給料をもらうとすぐにロブに連絡をし、グレイハウンドという高速バスで片道30時間かけてロサンゼルスに向かった。実はこの際、両替を忘れ悲惨な30時間だったのだが、その辺りは別途まとめることとする。

ロスに着くと、ロブがいかついアメ車のオープンカーに乗って空港に出迎えにきてくれた。バンクーバーで感じる空気感と、ロスで感じる空気感の違いが大きく、ワクワクしているのか、怖いのかわからない複雑な気持ちで車に乗り込んだ。

ロス自体は2回目だったが、クラシックなオープンカーで風を感じながら走るロスは、なんとも言えない格好良さがあり、自分に酔ってしまっている自分に気づいて、また不思議な気持ちになった。

車が民家の前で止まった。あたりはすっかり夕方だ。もうすぐ日が沈もうとしていた。庭先で3人のイカついにいちゃん達が、バーベキューをしながら酒を飲んでいた。(あれ?庭先だと酒はOKなんだっけ。)と考えていると、「ここだ、降りろ」とロブ。

車から降りると、酒を飲んでいる1人と目があった。すると突然"What do you want!!"と言いながら近づいて来て、拳銃を向けられた。

正直、頭の中は真っ白になり、母親、父親、姉と家族がゆっくり頭の中に出て来て、みんなそれぞれに「そんなことをさせるために送り出したんじゃない」と言っている光景がループした。

実際には10秒もなかったと思うが、僕の中では10分くらいに感じた。大袈裟ではなく、本当に。

突然、拳銃男は笑い出し、
"Sorry buddy it's just kidding." (ごめんね冗談だよ!)と言った。実際には、そう言ったと思うというのが正直なところだ。ビビりすぎてしっかりと聞き取れなかった。

拳銃男は、拳銃を持ちながらハグをして来て、バシバシ背中に拳銃を当ててきた。

(来なきゃよかった)

正直、そう思った。でも、同時に吹っ切れた部分もあった。拳銃男のお陰で、頭がパニックを起こし、この際どうにでもなれ!精神が発動した。

拳銃男はレオンといって、ロブの家の雑用をしながら暮らしていた。結果的に僕らは仲良くなり、よく2人で出かけるようになる。

さて、ロブに連れられてギャラリースペースを見ていると、HANCHOLOのオーナーが現れた。また何かドッキリがあるかもと身構えながら挨拶をしたが、拍子抜けするくらい物静かな人物で、ロブからフライヤーを見せてもらったとのことで感想を伝えてくれた。その中で、店の名前の由来も教えてもらった。

HANCHOLO(ハンチョロ)というのは、オーナーのあだ名で、スターウォーズに出てくるハンソーローが好きなメキシコ人(スラングでメキシコ人をチョロと言う)ハンソーロー好きのチョロ=ハンチョロとなったらしい。

ハンチョロは、「絵は気に入ったが、サイズが小さい。もっと大きなサイズを10点描くとしたはどれくらいかかる?」と言われ半年後にギャラリーを開催することに決まった。

実際にはギャラリーを開催したわけだが、ギャラリーの細かなレポートは別途まとめることとする。

長々書いたが、こうして書いている内容は一見すごい!と言ってくれる人もいるかもしれないが、実際は、恥ずかしいことばかりである。
片言の英語で、ロブと2人の車内、沈黙に耐えかねて話しかけるも意味が伝わらずまた沈黙になったり、発音が悪いところをみんなに真似されてからかわれたり。

それでも、目の前にある事柄や、目の前にいる人にまっすぐ向かっていったことで、チャンスが生まれたのは確かだと思う。

たまたま絵が上手かったからだと思うかもしれないが、当時の絵は今見ると見れたものではない。気合は入っているが決してうまいとは言えない。それでも、何かときっかけになればと、恥を忍んで路上で配ったし、ハンチョロやロブにも見てもらった。
英語が上手いか下手かではなく、説明をしないと絵の下手さが際立つから、フォローを入れる意味で必死に説明をした。

全て恥をかいていたに過ぎない。
ただ、当時の強みは、恥を恥とも感じないくらい前に進むことに集中していた。
間違えたらどうしようとか、文法云々を気にしている余裕なかったのだと思う。

でも、そこにヒントはある。
言い方は悪いが、バカでもコミュニケーションバカでも取れる。英語を勝手なくくりで縛らず、恥を恐れず相手に伝えるコミュニケーションを重視すれば、英語であれ、なんであれ、きっと伝わるのだ。

その頃に、それを学んだ気がする。

#VALU #英語 #ロサンゼルス #個展 #恥をかく

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