「ホンモノ」

僕は「ホンモノ」になったことがない。

僕は「ホンモノ」を手にしたことがない。

いつもどこかごまかして、それでも結果はなんだかうまくいって

なんだかできた気になってる

自信がないとかじゃない。

いつも自信たくさんに根拠のない虚言を垂れ流す。

でもいつもは虚言と気づかない。

「ホンモノ」であると思っているから。

僕はいつでも「ホンモノ」であろうとした。

「ニセモノ」なるものに反吐が出た。

錯覚資産、見栄っ張り、ナルシストなんてくそくらえ

言行一致、表裏一体、そんな言葉が好きだった。

ホンモノの努力、ホンモノの愛、ホンモノの実力

其れこそ至上の価値だった。

「ホンモノ」であろうと居続けた。手にしようとし続けた。

でも僕は、ホンモノ演者になっていた。

僕はニセモノを遠ざけた。

一緒にホンモノまでも遠ざけた。

ああホンモノよ、君はどこにいるのか。

ああ僕よ、何がホンモノなのか。

ああ僕よ、演者をやめる覚悟はあるか。





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