【歌詞考察】木綿のハンカチーフ-保守派とリベラル派の政争の隠喩
恋人への呼びかけで始まるこの歌は、恋人同士の掛け合い、おそらくは文通をイメージして書かれている。
最初の一節は、上京する彼氏の目線で、向こうでプレゼントを買って贈るというメッセージが書かれている。
上京することに対しての不安は一切感じられず、都会に行くことの高揚感が強く感じられる。
それもそうだ。
この男性が上京する理由はおそらく仕事だ。就職なのか転勤なのかは分からないが、都会の方が仕事が溢れていて給与水準も高いことは間違いない。
都会でしかできない仕事もあるだろう。
田舎の生活を捨ててまで上京する以上、この男性は何かしらの夢・目標を持って上京しようとしている。
そんな彼氏の手紙に対しての返答がこちら。
いきなり否定から入った。
最初は、都会の膨大な情報に押しつぶされて自分を見失わないでね、という心配と応援の歌詞かと思ったが、どうもそうではなさそうだ。
これを僕なりに解釈すると、
「私のほしいものはあなただけなのよ。早く帰ってきて。」である。
せっかく男は夢を目指して上京しようとしているのに、女はそれを否定しているように見受けられる。
この女からすると都会は悪なのだ。だから男が都会に染まることを女は許さない。
おそらく旅立つ前にも散々揉めた結果、しぶしぶ男の状況を認めた、というか半ば強引に男は上京しようとしているのだろう。
それでもプレゼントを贈ろうとしている男に、女は半ギレでこの手紙を送っているのかもしれない。
とにかく、この時点で男と女の価値観の違いと、男の図太さがはっきり表れている。
男はどうやら半年も連絡をよこさなかったようだ。
女が寂しがって泣いているだろうというのは分かっているのにだ。
こいつもなかなかだな。
そして、都会で流行りの指輪を「君に似合うはずだ」と言って贈っている。
男は都会の絵の具に染まり始めていることが読み取れる。
贈り物は要らないと言われたのにそれでも流行りの指輪を女に贈るのは、喜んでほしいのはもちろん、君にも都会の良さを分かってほしい、という願望の現れでもあるだろう。
女はもちろんそれを認められるわけがない。
贈り物なんていらないから早く帰ってきて。その一点張りである。
もはや会話になっていない。
せっかく半年ぶりの手紙にこんなメンヘラな返信をするとは、相当精神にきているのが分かる。
男も変にキープせずに早く別れた方がお互いのためだと思う。
めっちゃ煽ってきた。
女を露骨に煽ってきたぞ、こいつ。
もう完全に都会に染まった男は、いまだに化粧もしない女を時代遅れ、田舎者だと下に見ているのだろう。
そんな女に当てつけのように写真を送っている。
そんなことしたら絶対怒らせるか冷められるのに。
おそらく悪気はないのだろうが、なかなかの図太さだ。
いや、もしかしたら、頑なに都会に染まった自分を認めようとしない彼女への最後通牒だったのかもしれない。
写真まで見せて、もう昔の自分には戻れないことを伝えている。
それでもまだ昔の男がいいというなら、その先に待っているのは別れしかない。
やはり、女はまだ都会に染まった男を認められない。
「好きだった」と過去形なので、都会に染まった男は好きではないとはっきり伝えている。
ただ、今の男は好きではないといいつつ、からだを気遣うほどには男のことをまだ愛していることも伝えている。
これは、男の更生をまだ期待しているということの現れだろうか。
果たして、最後通牒に対してのこの返答を、男はどう受け取ったのか。
やはり、だめだった。
遠回しにではあるが、女に対して別れを切り出している。
どうやら、男としては自分の変化を認めてくれない女のことは歯牙にもかけていなかったようだ。
女の願望など端から聞く耳を持たず、都会の楽しさを享受している。
そんな自分を認めてくれないなら、別にいいよ、別れよ。ということだろう。
男にとっては最初から女<自分であり、上京した時点で女のことは頭から消していたのだろう。
最初の手紙が上京から半年後というところからもそれは読み取れる。
あんなに贈り物を拒んでいた女が、最後に贈り物をねだった。
そのねだったものが涙を拭くための木綿のハンカチーフという、別に田舎でも手に入る製品というのが、自分の願望を聞かず都会に染まってしまった男への、嫌味のように聞こえてならない。
それに、同じ人も一定数いるのではと思うが、「木綿のハンカチーフ」と聞いて僕の頭に最初に浮かんできたハンカチの色は生成り色だった。
つまり、生成り色の木綿のハンカチを、何にも染まっていない昔の男に見立てて、昔のあなたを返してと言っているとも捉えることができる。
その解釈でもやはり嫌味だ。
◆
この歌を初めて聴いたとき、女の切ない恋心に心を打たれて泣いてしまったのだが、じっくり歌詞を聴いてみると印象が180度変わった。
好きといいつつ彼氏の挑戦や変化を受け入れられない頭の固いヒス女と、そんな女を一瞬で忘れて都会の価値観を押し付けるサイコパス男という構図なのだ。
これはまさに保守派とリベラル派の争いであり、世界で古来より繰り返されてきた因縁の構図なのである。
もしかしたらこの歌は、保守派vsリベラル派の政争の隠喩なのかもしれない。
そう思うと歌詞の捉え方も変わってくる。
リベラル派が政権を握るのも認めてね、賄賂あげるから。
的な意味合いに見える。
自分たちの賄賂が欲しいわけじゃない。と突っぱねる。
あくまで交渉に乗る気はないよ、ということだろうか。
無理矢理にでも賄賂を与えて懐柔しようとしている。
が、やはり突っぱねる。
リベラル派が結果で見せてきた。
ほら、明らかに経済成長してるでしょ、と。
もしくは海外の事例とか確かな論拠を持ち出してきた。
古き良き日本が良かったのだ!的な。
経済成長で失われた豊かな自然や伝統文化が好きだったのに!的な。
そんなこと言っても高度経済成長でしてますやん。
みんな潤って楽しそうですやん。
これでいいですやん。的な。
おっしゃる通りですわ。負けましたわ。
でも昔の自然豊かで文化的だった日本返して。
的な。
僕は昭和史に暗いので、この歌がリリースされた1975年の政治情勢とはあまり紐づけないようにしたが、詳しい方ならなにかピンとくるものがあるのかもしれない。