【歌詞考察】渋滞にイラついているだけの歌だと思っていたらレトリックが隠されていた【YUI - Winding road】
渋滞に巻き込まれてライブに間に合いそうにないというエピソードで1曲作れちゃう感受性と文章力が欲しい。
YUIの曲を聞いてそう感じた木曜日の夜。
パンクロックが好きな夏でも革ジャンを着てるあいつのせいでバスに乗り遅れた話で1投稿書き上げようか、と筆を執った。
(ちなみに今回は『Jam』ではなく『winding road』の歌詞考察だ)
というわけで、投稿を作るにあたって、なにか『winding road』のオマージュを入れようと、歌詞を改めてじっくり眺める。
そしたらなんとびっくり。
これ、ただ渋滞に巻き込まれてイライラしているだけの歌ではなかった。
渋滞に巻き込まれた状況と恋人と上手くいかない状況が掛け合わされている。
目から鱗だった。
僕はYUIを馬鹿にしていたとかでは断じてないのだが、正直こんなレトリックが使える人物だとは思っていなかった。
大事なことなので2度言っておく。僕はYUIを馬鹿にしていたとかでは断じてない。僕はYUIの大ファンだ。
ただ、レトリックは気のせいの可能性もあるので、改めて皆さんにも歌詞を見てほしい。
これはもう完全にただの渋滞の歌ではない。
逆に、結構ストレートに織り交ぜられているのになんで今まで気づかなかったのだろう。
メインメッセージはおそらく、彼氏と一緒にこれから歩む道は曲がりくねっていて先が見えない。
そんな感じだろう。
彼氏の関係を先に進みたいけれど上手く進められない。
ゴールは見えているのにその道のりが長く険しすぎて到達困難。
そんな二人の関係性を渋滞に巻き込まれた状況と重ね合わせて表現している。
その感性に僕は驚いた。
YUIだってこんなレトリックが使えるんだ。
ただの渋滞にイラつく歌だと思っていた僕を許してほしい。
レトリックに驚いたという話は一旦終わり、ここからは歌詞を切り分けて味わっていこうと思う。
長くなるので読みたい方は読んでください。
(書いている途中でまた別の解釈ができることに気付いた。その過程は後述。)
1番の歌詞
ここですごいなと思ったのが、状況説明がめちゃくちゃ端的かつ的確な点だ。
渋谷に車で出かけたら渋滞に巻き込まれた情景がありありと目に浮かぶし、窓の向こうの自転車がすり抜けていく光景をわざわざ描写しているところからも、進みたくても進めない状況に不満を感じていることが読み取れる。
そして、スモークの窓ということは後部座席に乗っているので、同乗者として少なくとも運転手がいることも伝わる。
最初の2行で置かれている状況が過不足なく説明されているのだ。
そして、この場面で脳裏に浮かぶ色のイメージも面白い。
最初の1行では、夕方で薄暗くなっている中に車のブレーキランプが赤々と灯っているところが思い浮かぶ。
そして、「スモークの窓」という描写からも、薄暗さがさらに強調される。
イタリア映画は何か分からないが、僕にはまず「ローマの休日」が想起され白黒の世界が広がった後に、「ブルー」という言葉で白黒の世界に暗めの青が追加される。
ここまでは暗い空間に赤・青の色味が加わるものの総じて暗いどんよりとしたイメージが展開される。
しかし、サビではそれが一変し、「七色のあの虹」というように、急に明るく色鮮やかな光景が広がる。
このギャップを意図して作っていたら天才だと思うし、意図していなくても天才だ。
◆
2番の歌詞
ここは「つまらない話」と感じている対象はなんだろうか。
まず思いつくのは、同乗者の発言に対してつまらないと感じているパターン。
こちらの方が同乗者との関係性が読み取れて面白いと思う。
おそらく同乗者は渋滞に巻き込まれてイライラするYUIの機嫌を取ろうと話しかけているのだが、YUIはそれに対してつまらないと感じ「今何時?」と素っ気ない反応をしている、ということだ。
この場合、同乗者は彼氏だと思われる。
彼氏に対して冷めてしまっていて、来年の今頃には別れているだろうと思っている。
だから、話も面白くないし素っ気ない対応をしているのだ。
衝撃の新解釈
ここで、もう一つの解釈ができることに気付いた。
1番のサビの「七色のあの虹など~できるはずがない」とは昨日観たイタリア映画のセリフであり、それに対して「つまらない話」と言っているという解釈だ。
「できるはずがないって言うのよ」の「って言うのよ」はYUIの不満・反感が表出した表現と捉えると、「つまらない話よね」とのつながりもスムーズである。
この場合、YUIの未来に対する不安は、彼氏との関係のことではなく自身のアーティストとしての成功に対しての不安、ではないだろうか。
恋愛関連の話題は1番のサビだけなので、それが映画のセリフとなるとこういう解釈になる。
ちょうどこの頃のYUIは「CHE.R.RY」や「Good-bye days」がヒットした時期だ。
数曲ヒットし売れっ子への道を歩みだしたものの、この成功がいつまで続くか分からないという漠然とした不安。
同じような曲しか作れない、作らしてくれない閉塞した環境に対して不満。
結局売れるかどうかは事務所の売り出し次第だし、その時の運もあるので、未来のことなんて考えても無駄だという諦観。
そんなことが終わりの5行から読み取れる。
僕はそんなYUI個人としての内面が読み取れるこちらの解釈の方が好きである。
ラスサビ
ごめんなさい。
この投稿を書き始めた段階では完全に恋人との関係性を渋滞に例えた歌だと思っていたのだが、先ほどの自身の将来に対する不安という解釈に気付いた時点でそうとしか考えられなくなってしまった。
自身の1年後の姿が見えず、もがき苦しんでいる。
スランプのような状態かもしれない。
でもそんな未来のことを考えたところで、自分ではどうしようもない。なるようになるだけだ。
そんなことは分かっているけど、つい焦ってイライラしてしまう。
そんな状況が渋滞と掛け合わせて表現されている。
曲名でもある「winding road」は、渋滞している道と自身の人生の曲がりくねった困難の多い道のりというダブルミーニングであることも分かる。
思ったよりすごい歌詞だった。
どちらの解釈でも味わい深いし、渋滞と掛け合わせるセンスも好きだ。
やっぱりYUIはいいよ。最高。
昔は何も考えずに聴いていたけど、大人になって聴くとまた違う解釈ができる歌は他にもありそうなので、見つかったら考察してみようと思う。
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