耳栓と耳栓を買った
導入
私は夜の騒音被害に苦しめられている。
といってもさほど深刻なわけではなく、毎晩ということもない。
しかし聞こえるものは聞こえるのだ。それも静寂の夜に。
そんな日常の些細な不愉快をなんとかしようと思い立ち、耳栓を買ってみたというわけである。
2品。厳密に言えば9種。
まずこれ。
これはモルデックスという、耳栓業界じゃ名を知らぬものがいない程の有名ブランドの、これまた知らぬものがいない程に有名なお試しセットである。
上の写真では分かりづらいが、モルデックス製の耳栓が8種入っている。
価格は550円。よって1種あたり約70円。
70円である。
この価格帯。もちろん思い浮かぶ競争相手といえば。
やはり百均の耳栓としのぎを削らせるべきだろう。
なお、この発想は幾度となく考え出され、記事等にされ、いわゆる手垢のついた(むしろ耳垢がついた、というべきか)新鮮味など欠片もないものである。ことに留意していただきたい。留意していただきたい。
開封―モルデックス
モルデックスはこんな感じ。1種が8つ、つまり8種。
申し訳程度に耳栓ケースがついている。ちなみに耳栓ケースは1つしかない。
それぞれ名前がついており、カラーリングが異なる。形状が異なるものもあるが、丸まった円錐を基本とすると、異種は2つのみになる。
またNRRという数値も微妙に異なる。これは“Noise Reduction Rating”の略で、数字が大きいほど遮音性能が高いということになる。
北米の規格である。
ちなみに最大は33dBだそうで、このお試しセットにはNRRが33dBの耳栓が5つ6つ入っている。
(写真を見直していたら“SPARKPLUGS”も33dBだったのに気づいた。ハブってゴメン)
最大レベルを出し惜しまれても困るが、これはこれで少し有り難みが薄れる気がする。
なお私は遮音性のみを求めて買ったため、33dB未満には興味がない。かといってそれらのレビューを特に疎かにするわけではないので安心してほしい。
レビューは遍く疎かである。
急に写真が明るくなったが、これは別日に撮ったことに起因している。
横着せずに全てこの日に撮り直すべきとは承知しているが、いかんせん面倒であった。
見てわかるように、明らか形状が違うものが2種存在している。
見る人が見れば卑猥な形状にも見えるこれは、“Meteor”と呼ばれるものである。なかなかの人気シリーズだ。それの大と小。
ほかは色(模様)が違うだけのコンパチに見えると思う。
私もそう思ったし、今でも思っている。
ということで各種のレビューに入る。
レビュー―モルデックス各種
1.カモ
いちばん落ち着いた色である。カモの名を冠しているが、どこにカモフラージュするつもりなのだろうか。カモフラージュが必要になるシチュエーションにおいて耳栓は必要なのか?
まあモルデックスは工場や軍にも卸しているらしいし、そういう理由なのだろう。
NRR値は最大の33。実際着けてみた感覚において、遮音性については、高い。
以上である。
ここまで着いてきてくれた読者がいるのならば、少し謝罪の念が首をもたげているが、これから先、厳密なレビューの文章を読むことはできない。
垣間見ることさえ不可能である。
不可能である。
なお、この耳栓、なんとごま油の匂いがした。
食欲をそそらないごま油とでも表せばいいのか、ごま油が持つ好と嫌の嫌を煮詰めたような匂いがした。
鼻に詰めるわけでもなし、匂いなど些事ではある。が、しかし眠っている時にふと、ほのかに香るごま油は斬新な体験になるだろう。
2.メテオ(大)
耳栓について少し調べると、きっとすぐに目につくブランドがこの「メテオ」だ。
その独特な形もあって、遮音性も高そうに見える。
NRR値は最大の33。実際の感覚としては、「カモ」とそう変わらない。
むしろデカいので、耳の圧迫感が強い。
遮音性が対して違わず、圧迫感が強い。
以上である。
3.ピュラフィット
NRR値33。遮音性は「カモ」と大差ない。
形・大きさもそう変わらないため、実質タダの色違いである。
4.ソフティーズ
NRR 33。大差なし。実質「カモ」の色違いである。
5.スパークプラグ
色違い。バズライトイヤーのグッズに良さそうな色違い。
なんとなく高音のカットが強い気がする。気のせいかもしれない。
もし目隠しをして聞き分けられるかと問われれば、私は首を縦か横に振らざるを得ないだろう。
6.ゴーイングリーン
NRR 33。色違い。
7.メローズ
やらかい。これも少し高音のカット率が高い気がするが、そもそもNRR値が33に達してないので対象外。私はカタログスペックしか信じない。
8.メテオ(小)
ちっちゃいメテオ。模様入り。
上手く着けられなかったのでよく分からん。小さい。
総評―モルデックス
よくわからん。
正直なところ、標準形状のカラバリ6つとメテオのサイズ違いが入っている、としか認識できなかった。
たしかに“Softies”はちょっと柔らかくて、“Mellows”はもっと柔らかい感じがしたけど、そもそもこのタイプの耳栓自体が柔らかいので誤差な気がする。
よほど耳周りにこだわりがない限り、標準形とメテオを試して、あとは気に入ったデザインのものを買えばいいと思う。
ちなみにこの製品は使い捨てらしいが、私は少し清掃しつつ数日使っている。
しかし最初の一度が最も遮音性能が高いことは確かだ。よって一回こっきりで使い捨てられるリッチマンでなければ、真価は発揮できないと言えるだろう。
こんなところか。
開封―百均の耳栓
百均の耳栓である。
よく見かける色の、よく見かける形状。もう一つ見かける形状といえばあの、三段傘のきのこっぽいやつだが、流石に土俵が違いすぎるだろうことが予想された為に選択しなかった。
レビュー―百均
うーん。
モルデックスに劣る。
総評―百均
モルデックスの勝ち。
あとがき
ちゃんとしたメーカー製って、ほんとに効果あるんすね。名前だけかと思っていた。
まあ耳栓に限ったことじゃないけど、百均は小分けにされてる分、単価が高いということは皆承知の上で使っていると思うので、別に耳栓をそこまで必要としない方には百均で十分だと思う。
モルデックス、通販ぐらいでしか買えないし。東京人ならすぐ届くだろうけど、地方の民は数日待たなきゃだし。
ちなみに私の騒音とは階下の鼾なんだけれども、さして変化はなかった。
そんなに薄くない床(天井?)を貫通してくる音っていうのは、もはや身を揺るがす振動になっている。
耳とかの領分じゃないんだね。もう。
でも遮音性の高い耳栓を耳に入れて、ゆっくり膨らんでいくと共に音が聞こえなくなっていくあの感覚は、一度くらいは体験してみてもいいと思う。
少しづつ世界が遠くなっていって、「キーン…」っていうあの無音のノイズが大きくなっていく。視界はそのままなのに。不思議。
ということで、最後に撮ったけど使わなかった2枚の写真を載せて終わる。
ここはどこだ