『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』をみた

みた。吹替版。字幕版の方が良さそうな映画ではあったけど、刻限が迫っている作業からのながら見(逃避)用だったのであえなし。


記憶を整理するためのあらすじ

主人公はコネ入社の銀行マン。コネの元は奥さんの、お父さん。シャチョサン。強い。
いつものように奥さんの運転で車に乗っていると、不運と前方不注意が重なって交通事故発生。奥さんだけが死んでしまった。

意識を取り戻した主人公は、しかし涙も流さず、悲しむ素振りすら見せず、そんなことよりと言わんばかりに、病院に置いてある自動販売機の不具合をメーカーに報告する始末。

ところがその報告の手紙には、どう考えても不必要な彼の半生が綴られていたのだった。

思いもよらぬ激重ファンメールに興味を持ったカスタマーサポート担当者は、次第に彼に惹かれていく。

妻の死をきっかけとした奇妙な関係は、妻の父からのアドバイス「困難は分割せよ」を曲解した主人公の手によって、破壊の限りを尽くすデストロイ・ロードへと変貌する……。

こんな感じ。


やっぱ違うかも。


総評

まぁまぁ面白かった。腰を据えてちゃんと見た方がいい映画だな、とは序盤の時点で気づいてはいたから、きちんと見ればもっと面白かったんだろうけど、あいにくそんな心理的余裕はなかった。

僕はこの作品の主人公はただの「ガチヤバ感情死に過ぎ人間」だと思ってたから途中まで予想と展開の齟齬がすごかったのだが、不器用なだけなのだと思い直せてからは純粋に楽しめた。

個人的な趣味としては、どうしようもない異常者がズンズン不幸になっていくというストーリーも割と好きだからそういう話かなぁと期待していた。邪推だった。常識的に考えてそうそういるわけないだろ、ナチュラルボーンキ○○イなんて。

というわけでネタバレすると、ハッピーエンドです。心は守られた。


細かいこと

タイトル(メモ)の意味

わかんねぇ〜。
サンバイザーの裏から出てきたメモの文言だけど、どうにも分からなかった。
いろいろネットを放浪した結果、『雨の日はこれを見ることはない、けど晴れていたら見つけられるよね』という意味らしいことがわかった。水漏れのメモとかを貼ってたのに無視してた主人公への皮肉ってことか。このメモは無視できんやろ、これ読んだときくらい私のこと思えよ、と。
そういえばどこかに金融屋の定型句「晴れた日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる」と掛けて、もう少し深い読みをしてた人がいたんだけど、今はリンクを見つけられない。
くっそーブックマークしとけばよかった、と後悔している。

マイマイガ

観終わって「よーしネットの評価でも見てみるか」と思ってタイトルを検索バーに入れてみると
「マイマイガ 心臓 食べる」
面白すぎる。バカがそのままの意味で受けて調べてやんの〜〜
と思っていたんだが、割と真剣に気になっている人が少なくない。
え、比喩表現ですよね。あれ夢ですよね。
え、マイマイガって心臓食べるんですか?
いやまさか、食べるわけないじゃないですか。やだなぁハハハ。
カタカタ……

防弾チョッキ耐久試験

ちょっとさすがに。
短期間で信頼を得るにはこれくらいしなきゃ、っていうのは分かる。主人公が内心で死を求めていたかもしれない、みたいな含みを持たせることもできる。
でも子供に罪を背負わせかねないのはよくない。あれは悪い大人。
いや、もしかすると単純に、主人公が美少年に撃ち抜かれたかっただけなのかもしれない。
禁断の恋が始まってしまう……

奥さんが可哀想すぎない?

主人公は一応「愛してました! 疎かにしてましたけど」ってなこと言ってたけど、それが奥さんに伝わってたかは別の話だ。
プレゼントは放置だし、家庭内にメモが頻出するし、そんなまま死んでしまった奥さんが不憫でならない。
と思ってたけど、奥さんもそれで良かったのかもな、と考え直した。あまりよろしくない想像を基に。
奥さんは支援学級の教師である。僕は覚えていなかったが、ダウン症の子とメリーゴーラウンドを楽しんでいたシーンもあったらしい。
主人公は感情の発露が苦手な男である。いつも上の空で、仕事しか目に入らないような人間だ。
奥さんはこの主人公を、介護の対象として求めていたのではないか。自分がついてなきゃいえない、守るべき弱者として愛していたのではないか。
だとしたら奥さんは主人公と一緒にいるだけで幸せだったろう。なんだ、Win-Winのハッピーエンドじゃないか。安心した。

邦題問題

ざっとレビューを見ても、この邦題に関しての意見はだいぶ分かれている。
僕としてはまぁまぁアリ。確かにちょっと的外れというか、核の一部だけをクローズアップしすぎている感じはある。
でも一目見て「ん?」ってなる引きはあるし、ベイマックスほど宣伝と内容が乖離してるわけでもない。
ただ僕は原題も同じくらい長いのかな、と思っていたから、原題が「Demolition」だと知ったときは少し面食らった。
破壊ってタイトルだけでは僕は見なかっただろう。でも「この原題が気になって見たんだよな」って言える人間になりたい。そんな欲望は常に抱えている。

当初の展望

この映画はちゃんと救いを用意していたけど、ないパターンも見たかった。
主人公はマジで人の心がないバケモンで、全員の顰蹙を買って孤独になっていく。自分はありのままで生きているだけなのに、どうしてみんな分かってくれないんだ。追い詰められた男は全てを破壊することを決意する―――。
そしてそんな男を全肯定してほしい。こういうストーリーだと痛み分けで終わりがちというか、でもやっぱり人の心は大事だよねみたいなオチに落ち着きそうだから、もう全面味方してほしい。賛辞を送って欲しい。そういう映画知りませんか?


ここはどこだ