対話と反響
俺は割と最近Twitterの趣味アカウントを作成した
趣味だなんて濁したところでしょうがないので具体的に言うと乃木坂46、それも早川聖来に絞ったアカウントだ
もともとリア垢しか持ち合わせていなかった俺は、乃木坂の事を多くつぶやくことは人目を気にしてできなかった
しかし、推しへの好きだという感情を発信するプラットフォームがどうしても欲しくなりアカウントを開設した
早川推しを見つけるとフォローをする、これを繰り返した
そうして出来上がったTLは予想とは異なり、異様なものであった
全員が全員同じ反応をするNPCやbotとよばれるものしかいない世界に迷い込んでしまったのでは、と錯覚するような奇妙な光景がそこには広がっていた
早川からのモバメ(メルマガのようなもの)に一斉に異口同音で反応する数十体のなにか
おなかが減ったと早川が言えば、僕もだよと全員が一斉に同意する
お仕事頑張りますと言えば、頑張ってと全員が一斉に励ます
日本人は集団行動が得意らしいがまさかこんなところでそれを目にするとは思わなかった
そして全員の返信の内容のなさが非常に気になる
だから?で?と言いたくなるようなリアクションばかりで情報量が何もないのだ、発展の余地が無いオウム返しのリアクションを行い会話をした気になっている人ばかりである、それは会話や返信ではなく反響でしかないのではないか
ヒトラーは大衆の多くは愚かで無知であると言ったそうだが、国も時代も異なるのにその言説になんら間違いはないと言えるだろう
仮説だが、そういう反応をする人たちは安心が欲しいのではないかと思われる
内容如何に関わらず他者と似たような反応をすることで、自分以外の○○ファンも同じことをしているからこれでいいんだというたぐいの安心だ
現実の孤独をネットが癒してくれるのであろう
これがもう少し過度なものになるとエコーチェンバー現象と言われるものになる
エコーチェンバー現象とは、ソーシャルメディアやネット上の掲示板を利用する際に、自分と似た価値観をもつユーザーの主張ばかり見るために、自分と似たような考えや価値観、趣味嗜好を持った人たちが集まる閉鎖的な空間でやり取りが繰り返され、自分の意見や思想が肯定されることで、自身の主張する意見や思想が、あたかも一般的にもそうである、世の中における正解であるかのごとく勘違いしてしまう現象。又は交流・共感し合うことにより、特定の偏った意見や思想が増幅されて、より偏った方向に行ってしまう現象。 Wikipediaより
自分と同意見の集団に属しているという事はさぞ気持ちのいいことであろう、生産性や意味なんてなくてもいいのだ
そこにいるだけで自分の意見が反響し、時には増強されたように錯覚できる
エコーチェンバー現象はネット上のものと定義されているがこれと同様のことが現実でも起こる
村八分と呼ばれるものだ、異質な分子を排除し、画一化された分子でのみ村という個体を形作る
あとは個体レベルでも起きている、これは免疫機能などである
生命活動において必須のため、悪ではないが臓器移植の際などにはデメリットとして働く
この一件で俺は、一つ腑に落ちたことがある
それは陰謀論信者がなぜあのように盲目的に陰謀論を唱えるようになってしまうのかという事である
エコーチェンバー現象やフィルターバブルによるものだという知識はあったのだがまさかオタクアカウントの開設により自分自身がこれを追体験するとは夢にも思っていなかった、まさに百聞は一見に如かずである
フィールターバブルとは、「インターネットの検索サイトが提供するアルゴリズムが、各ユーザーが見たくないような情報を遮断する機能」(フィルター)のせいで、まるで「泡」(バブル)の中に包まれたように、自分が見たい情報しか見えなくなること。
真偽や正確さを棚に上げ、居心地の良さを優先し、異分子を排除しようと昼夜問わずSNSやノーマスクデモなどで声を荒げる
人が盲目的になるのは恋だけならどれほど平和であったことか
インターネット上ではあらゆるものがパーソナライズ化され、意図せず思想や嗜好が偏ってしまう現代において、居心地の良さに甘んじて客観視を怠ることは非常に大きな危険性を孕んでいるように思える。時には自身を律し、異なる視座で物事を見つめることも大切なのかもしれない。
最後に
これは他者に投げた石のように受け取られるかもしれないが、そもそも俺がオタクアカウントを開設したことが事の発端なのである
つまり投げたのは石ではなくブーメランで、確実に俺の首を切り裂いていった
オタクアカウントの開設というエコーチェンバー現象の渦中に身を置くことへの肯定と、それの批判というダブルスタンダードでこれを書いているという事を断っておく
サンテグジュペリも矛盾は成長の土壌に他ならないと言っていたし、まあいいだろう
確証バイアスじゃんなどというツッコミは受け付けていない
not
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